新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

HOME > Sun Ship通信 > 炎症性腸疾患における遺伝的因子の探求

Sun Ship通信

炎症性腸疾患における遺伝的因子の探求

杉村クリニック
杉村 一仁

はじめに

 炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease: IBD)の発症には、その家族集積性や、民族・地域による発症率の違いから、遺伝的因子と環境因子の双方が関与していると考えられてきた。このうち遺伝的因子の探求は、1970年代から研究が開始され、1980年代からの先行的な遺伝子研究を経て、2003年のヒトゲノム計画の終了後からは大規模で網羅的に行われるようになった。現在200以上のIBD疾患感受性遺伝子が報告されるようになっているが、これらの多数の疾患感受性遺伝子の存在を、どのように理解し今後役立てて行くのかは、現在もなお混沌としている。本稿ではIBDにおける遺伝的因子探求の歴史的経緯を振り返るとともに、現状を概観したい。

I IBDにおける遺伝的背景

 IBDはクローン病(CD)と潰瘍性大腸炎(UC)からなり、消化管に慢性の炎症を繰り返す疾患であるが、従来からその発症に遺伝的因子が関与していることが指摘されてきた。根拠として、① 民族と地域により一貫した発症率の差があること, ② IBDに家族集積性があること ③ 双生児研究により一卵性双生児で二卵性双生児よりも発症の一致率が高いこと(表1)等が挙げられている。この遺伝的因子について、これまでに多くの研究がなされてきた。

※全文はPDFファイルにてご欄いただけます。

同門会の皆様へ