新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野-旧内科学第三講座-

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Sun Ship通信

厚生連新潟村上総合病院 紹介

厚生連新潟村上総合病院 副院長 杉谷 想一
2020年9月10日

1)鮭・酒・人情さけ・さけ・なさけの村上市

 村上市は、新潟県最北・最東の市。面積は1,174.24km2で県内最大。人口は約6万人で燕市に次いで8位です。かつては村上藩の城下町で、現在も武家町、商人町の面影が残り、2008年度に「美しいまちなみ大賞」を受賞しています。村上と言えば、三面川の鮭や鮎、〆張鶴と大洋盛の二大銘酒、そして伝統ある町屋が残る風情ある城下町に住む人たちの人情が自慢です。(参考 Wikipedia)

 当院は、新潟市中心部から村上ICまで約63km、高速ICから2kmに立地しており、自家用車だと55分、電車では新潟駅から特急いなほで46分、村上駅から徒歩2分。どちらも1時間以内です。村上医療圏は、旧村上市、山北町、朝日村、神林村、荒川町が合併した現村上市に、粟島浦村と関川村をあわせた広大なエリアで、端から端まで60km、約7万人が対象です。下越二次医療圏(人口22万2300人、面積23197km2)のうち、新発田市、胎内市と聖籠町(834.1km2)を除くと、面積では全体の2/3、人口では1/3を担当しています。そのため、山北地区や朝日地区からは、受診に一時間以上かかることも珍しくなく、とくに冬の積雪期の救急搬送は大変です。独居の高齢者が多い当地区の医療事情は、わが国の地域医療の未来を先んじているともいえます。

 過疎化、高齢化の波は、当院の常勤医にも押し寄せており、当直は、院長や私を含め16名と少なめですが、地域の救急車の80-85%近くはなんとか当院で受け入れができています。決して、重症患者や救急の対応に忙殺されることはありませんが、少ないマンパワーで多くの患者を診るには個人負担はそれなりで、広い知識が必要です。もちろん高度医療を求められる場面も少なくなく、離島医療や地域の予防医療、保健、住民の啓発活動など忙しい反面、医療人としてはやりがいがあります。そして当院から瀬波温泉までは7分、粟島へは岩船港まで15分+高速船55分と観光地に抜群のアクセスで、当院での勤務は、美食、銘酒、景勝地に恵まれた生活が保証されています。

2)当院について

 当院は、昭和20年の県農業会村上診療所として始まり、昭和27年に新潟県厚生農業協同組合連合会村上病院と改称されました。昭和42年に、鉄筋6階建の病棟(一般163床・結核34床・伝染32床)となり、平成元年の大がかりな増改築後、人工透析や検診センター、訪問介護ステーションなどを増設しながら、現在に至っています。救急告示施設、災害拠点病院、へき地医療拠点病院などに指定され、地域医療の中核としての機能を担い、地域住民からは「むらびょう」の愛称で親しまれています。

 病床数は263床で、診療科は、内科、外科、小児科、脳外科、整形外科、泌尿器科、産婦人科、歯科、麻酔科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科です。常勤医は、内科8名(消化器3名、循環器2名、呼吸器2名、腎臓1名)、外科が5名、脳外科、整形外科、小児科、歯科、検診科が2名ずつ、泌尿器科と麻酔科が各1名の合計 25名ですが、退職された複数の先生に外来や検診をお願いしているため、一人体制の当直を16名で分担しています。耳鼻科、眼科、皮膚科さらに神経内科、血液内科、内分泌内科は常勤医がいないため、新潟大学からの出張医に外来をお願いしています。日常診療はcommon disease中心で、患者数は、外来、入院ともに多く、どの科もかなりの忙しさですが、自分の専門領域に限定せず広い分野を担当するため、科をまたいだまれな疾患に遭遇する機会もあり、勉強になります。

病院外観
病院外観

3)消化器内科

 当院への消化器内科医の派遣は、長らく2人体制でしたが、平成29年4月より増員となり、本年4月からは、杉谷想一(H2卒)、酒井規裕先生(H25卒)と佐藤千紘先生(H29卒)の3人です。診療の合間に症例検討会、内視鏡検討会、外科検討会などコミュニケーションを取るよう心がけています。

 当地は、いまだに胃がん死が10万人あたり78人と多く、全国平均の35.7人、新潟県の平均49.18人を大きく上回っています。胃がん検診の一次受診率は20%前後ですが、二次の内視鏡受診率が低く、ピロリ除菌数も極めて少ない地域です。また、ウイルス肝炎に対する治療導入は、B型、C型ともに年間4-5名程度と少なく、さらに、肝炎検査無料検査数も0の年が多く、ドックや検診でウイルス肝炎検査陽性を指摘されても受診率は50%以下で、ウイルス肝炎に対する意識も低い状況でした。

 そこで、平成30年より保健所、村上市と協力しながら、胃がん市民講座や肝炎教室、さらに無料のピロリ菌検査や肝炎検査を開始しました。平成30年10月には、肝疾患サポートチーム(LST)を立ち上げて、肝炎患者の拾い上げや、受診状況や脱落の監視を行い、スタッフ教育や他部署との連携を図るようにしました。

 その結果、ウイルス肝炎患者の受診件数は年々増え、核酸アナログやIFN、インターフェロンフリー治療の件数もあわせて年間10名以上になり、現在も少しずつ増えています。内視鏡件数も毎年コンスタントに増加し、除菌件数も年間800名を越え、少しずつ地域貢献が出来てきました。さらには、粟島浦村診療所とは回線をつなぐTV診療(遠隔診療)に参加し、春の全島検診、夏期には粟島への出張診療など離島医療にも協力しています。

消化器内科スタッフ
消化器内科スタッフ

4)新病院移転

 現在、村上駅の西側(緑町)にヘリポートを有する地上5階建ての新病院を建設中です。令和2年10月に完成、11月に移転、12月1日に開院の予定です。病床数は267床のままですが、急性期病床203床、緩和ケア病棟10床を含む地域包括ケア病床60床に再編予定です。患者さん一人あたりの空間に余裕ができ環境の改善が期待されます。手術室は5室に増え、粟島遠隔診療室も新たに増設されます。

 内視鏡室は5室のコンパートメントと洗浄ブース、前処置とリカバリーベッドを備えた広いスペースになります。上部内視鏡用に3室を、透視検査用に2室を充てる予定で、透視室のうち1室は陰圧室で気管支鏡との共同使用ですが、もう1室は当科専用です。設備の充実も図り、新技術の導入に対応してきました。内視鏡systemは、Fujifilm medicalのLaser光源1台とOlympus ELITE2台に、ルーチンfiberに加え、Fuji経鼻fiber、Olympus超音波内視鏡装置(EUS)など導入し、FNAも施行しています。

 当院はこれまでマッチングによる研修医の実績がありません。新病院になれば、建物や設備は充実しますが、研修医や若い専修医の先生に魅力ある病院になるためには、研修プログラムや学会活動や日々の勉強会などの充実が重要と考え、昨年よりソフト面の改善に取り組んでおり、病院見学に複数の学生が来てくれました。今後、若い人材が増えて活気のある病院になれるよう努力しています。

新病院外観
新病院外観(2020年12月 新築移転開院予定)

【学会施設認定】
日本内科学会教育関連施設
日本消化器病学会関連施設
日本消化器内視鏡学会指導施設
日本肝臓学会関連施設

【2019年度 検査治療件数】
 上部内視鏡検査
 上部ESD
 下部内視鏡検査
 下部ESD
 ERCP (膵胆管造影)
 内視鏡的ドレナージ, stent
 内視鏡的結石除去

4062件
63件
2207件
11件
56件
14件
24件

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御寄稿から掲載までお時間をいただきましたこと、深くお詫び申し上げます。(編集記)

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