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2026/09/02

妊娠したらリチウムは必ず中止?―2026年に変わった双極症治療の考え方

双極症の治療に用いられる炭酸リチウムについて、2026年6月に妊婦への「禁忌」が見直されました。何が変わり、妊娠を希望する方や治療中の方が知っておきたいことは何かを解説します。

双極症の治療に広く用いられている炭酸リチウムについて、2026年6月、日本で重要な添付文書改訂が行われました。これまで「妊婦または妊娠している可能性のある女性」は禁忌、つまり原則として使用しないこととされていましたが、この記載が禁忌から削除されました。[1][2]

この変更は、双極症の治療を受けながら妊娠を考える方にとって大きな意味を持ちます。ただし、「妊娠中でもリチウムを自由に使えるようになった」「胎児への影響がなくなった」という意味ではありません。

なぜ禁忌が見直されたのでしょうか

リチウムは双極症の躁状態やうつ状態の再発を防ぐための重要な治療薬です。一方、妊娠初期の使用と胎児の心血管奇形などとの関連が以前から知られており、日本では妊婦への使用が禁忌とされてきました。

しかし、治療を中断すると双極症が再発する可能性があります。特に妊娠や出産の前後は気分の変化が起こりやすい時期であり、重い再発は本人だけでなく妊娠・出産や育児にも影響する可能性があります。

厚生労働省は国内外の研究や使用実態などを検討した結果、胎児へのリスクだけでなく、治療を中止することによる母体側のリスクも考慮し、一律の禁忌ではなく、利益と危険性を個別に検討する考え方へ変更しました。[1]

「安全になった」という意味ではありません

今回の改訂後も、リチウムには妊娠中の使用に注意すべき点があります。

妊娠中は体内の水分量や腎機能が変化するため、血液中のリチウム濃度が変動することがあります。特に妊娠末期には血中濃度が上昇する場合があり、厚生労働省は頻回の血中濃度測定など慎重な管理を求めています。また、出生した赤ちゃんにリチウム中毒や新生児薬物離脱症候群がみられる可能性もあります。[1]

そのため、妊娠中に使用する場合には、双極症の治療経験を持つ医師と、妊娠・出産や新生児の管理が可能な産科・小児科などが連携することが重要です。

日本精神神経学会も2026年7月、禁忌解除を受けて適正使用を求める声明を公表しています。[3]

妊娠を考えたら自己判断で薬をやめないこと

今回の変更で特に知っていただきたいのは、「妊娠したから薬を直ちにやめる」という一律の対応ではなくなったという点です。

妊娠を希望している場合には、可能であれば妊娠前から主治医に相談し、現在の病状、これまでの再発回数、薬を中止したときの経過、他の治療薬の選択肢などを一緒に検討します。

すでに妊娠していることが分かった場合にも、自己判断で急に薬を中止したり量を変更したりせず、まず処方している医師に相談してください。

精神科の薬と妊娠は、「薬を飲むか、飲まないか」だけで決められる問題ではありません。病気を適切に治療することも、母体と赤ちゃん双方の健康を守るために重要です。今回の改訂は、一人ひとりの状況に応じて治療を考えることの重要性を改めて示したものといえるでしょう。

参考情報

※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療を代替するものではありません。

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