2026/10/08
精神科の病名も変わる?日本で始まるICD-11を知っておきましょう
医療機関の診断書や統計などで使われる病気の分類に、「ICD」という仕組みがあります。ICDは世界保健機関(WHO)が作成している国際疾病分類で、日本でも長くICD-10に準拠した分類が使われてきました。
日本では2026年1月19日にICD-11に準拠した新しい「疾病、傷害及び死因の統計分類」が告示され、2027年1月1日の施行が予定されています。[1] 精神科領域でも、病名の整理や分類方法が大きく変わります。
「精神障害」から「精神、行動、神経発達の疾患群」へ
ICD-11では、第6章の名称が「精神、行動又は神経発達の疾患群」となり、「神経発達」という考え方が明確に組み込まれました。[2]
例えば、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症(ADHD)、知的発達に関する疾患などが「神経発達症群」として整理されています。従来は発症する年齢を基準としてまとめられていた疾患も、ICD-11では症状や発達上の特徴を重視して再編されています。[2]
また、不眠症、睡眠時無呼吸、ナルコレプシーなどは、以前は精神疾患と神経疾患の異なる章に分かれていましたが、ICD-11では独立した「睡眠・覚醒障害群」にまとめられました。[2]
病名が変わっても、別の病気として扱われるわけではありません
分類が変更されると、「これまでの診断は間違っていたのか」と心配になる方もいるかもしれません。しかしICDの改訂は、医学研究の進歩に合わせて病気をより分かりやすく整理する作業です。
ある疾患の名称や分類される場所が変わったとしても、それだけで病状や必要な支援が突然変化するわけではありません。実際の診療では、症状の内容、経過、生活上の困りごとなどを総合的に評価することが引き続き重要です。
医療以外の制度にも影響します
ICDは診療だけでなく、国の疾病統計、医療行政、研究などにも使用されています。そのため分類変更の影響は広い範囲に及びます。
例えば厚生労働省では、精神障害の労災認定についてもICD-11への移行を踏まえた疾病名の整理を進めており、2026年8月27日にも検討会が開催されました。[3] 日本精神神経学会も2026年8月にICD-11関連情報を更新しています。[4]
分類は診療のための「地図」です
精神科診療では、診断名だけで人を理解することはできません。同じ診断名でも症状や生活上の問題、必要な治療は一人ひとり異なります。
ICDは世界中で病気について共通の言葉を使うための、いわば「地図」です。ICD-11への移行によって、その地図が現在の医学に合わせて描き直されます。
今後、診断書や医療機関で目にする病名が少しずつ変わる可能性がありますが、名称だけを過度に気にする必要はありません。病名について疑問がある場合には、その診断が何を意味するのか、治療や生活にどのような意味を持つのかを担当医に確認することが大切です。
参考情報
- [1] 厚生労働省「疾病、傷害及び死因の統計分類(ICD-11準拠)」(2026-01-19)
- [2] 厚生労働省「ICD-11(精神疾患関連)に関する主な変更点等」(2026-01-29)
- [3] 厚生労働省「ICD-11の適用に伴う精神障害の認定基準の対象疾病名に関する検討会」(2026-08-27)
- [4] 日本精神神経学会「見解・提言・声明・ガイドラインインデックス」(2026-08-26)
※本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたもので、個別の診断・治療を代替するものではありません。