前立腺がんとは
前立腺がんは、男性にのみ存在する前立腺に発生する悪性腫瘍です。前立腺は膀胱の下にあり、尿道を取り囲むように存在する臓器で、精液の一部を作る働きをしています。
前立腺がんは日本人男性で最も多いがんとなっており、高齢化やPSA検査(前立腺特異抗原検査)の普及に伴い、患者数は年々増加しています。
近年では健康診断や人間ドックでPSA高値を指摘され、症状がない段階で発見されることが多くなっています。

前立腺がんの症状
早期の前立腺がんでは症状がないことがほとんどです。
がんが進行すると、以下のような症状がみられることがあります。
・尿が出にくい
・尿の回数が多い
・夜間頻尿
・排尿時の痛み
・血尿
・血精液症(精液に血が混じる)
・骨の痛み(骨転移による)
・体重減少
ただし、排尿症状の多くは前立腺肥大症によるものであり、症状だけで前立腺がんかどうかを判断することはできません。
前立腺がんの危険因子
前立腺がんの発症には以下のような因子が関与すると考えられています。
・高齢
・家族歴(父親や兄弟に前立腺がん患者がいる)
・遺伝的要因
・肥満
・欧米型の食生活
特に年齢との関連が強く、60歳以降で発症頻度が高くなります。
前立腺がんの検査・診断方法
PSA検査
血液検査で測定する前立腺特異抗原(PSA)は、前立腺がん発見のきっかけとなる最も重要な検査です。

直腸診
医師が肛門から指を入れて前立腺の硬さやしこりの有無を確認します。
MRI検査
前立腺内の病変の位置や広がりを評価します。近年ではMRI画像を参考にした精密検査が行われています。
前立腺生検
前立腺がんの確定診断に必要な検査です。
超音波やMRI画像を参考にしながら前立腺から組織を採取し、顕微鏡で調べます。
CT検査・骨シンチグラフィ・PET検査
リンパ節転移や骨転移などの有無を評価します。
前立腺がんの病期(ステージ)と5年生存率
前立腺がんは、がんの広がりや転移の有無によって病期(ステージ)が決まります。
- 前立腺がんの進行イメージ
-
ステージ・Ⅱ 前立腺内に限局したがん
↓
ステージⅢ 前立腺の外へ広がったがん
↓
ステージⅣ リンパ節や骨などへ転移したがん
病期によって最適な治療法が異なります。
- ステージごとの5年生存率
- スクロールできます
ステージ 状態 5年生存率の目安 I・II 前立腺内に限局 95%以上 II 前立腺外へ進展 90%前後 IV 転移を有する 50~70%程度
*上記は目安であり、患者さんの年齢や全身状態、がんの悪性度によって異なります。前立腺がんは比較的進行がゆっくりであり、適切な治療によって長期生存が期待できるがんです。
前立腺がんの治療
1.手術療法
前立腺を摘出する前立腺全摘除術を行います。
当院では手術支援ロボット(ダヴィンチ)を用いたロボット支援前立腺全摘除術を積極的に行っています。
がんの根治を目指す標準的な治療法の一つです。
手術支援ロボット(ダヴィンチ)について
医師が操作して手術を行うロボット支援システムです。「ロボットが自動で手術をする」のではなく、医師が専用の操作装置(サージョンコンソール)を使ってロボットアームを動かし、患者さんの体内で精密な手術を行います。
高精細な3Dカメラと、人の手首以上に自由に動く器具を備えており、細かい操作を正確に行うことができます。

ダヴィンチ手術のメリット
・傷が小さい
・出血が少ない
・術後の痛みが少ない
・回復が早い
・体への負担が少ない
・尿失禁の予防や性機能温存に配慮した精密な手術が可能
当院ではda Vinci Surgical System(ダヴィンチ)を用いたロボット支援前立腺全摘除術を積極的に行っています。
2.放射線療法
手術と並ぶ根治的治療です。
・外照射療法
・強度変調放射線治療(IMRT)
・小線源治療
などがあります。
患者さんの年齢や病状に応じて適切な治療法を選択します。
3. 監視療法(アクティブサーベイランス)
悪性度の低い早期前立腺がんでは、すぐに治療を行わず定期的にPSA検査やMRI検査を行いながら経過観察する場合があります。治療による副作用を避けられる可能性があります。
4.薬物療法
ホルモン療法(内分泌療法)
前立腺がんは男性ホルモンによって増殖するため、男性ホルモンの働きを抑える治療を行います。さらに転移を有する前立腺がんやホルモン療法が効きにくくなった前立腺がんでは以下の薬物療法を併用します。
- 主な治療薬
-
・アンドロゲン受容体阻害薬
・抗がん剤(ドセタキセルなど)
・PARP阻害薬
・放射性医薬品治療
近年は新しい治療薬の開発により治療成績が大きく向上しています。
治療後の経過観察
前立腺がんは治療後も定期的な受診が必要です。
通常は、
・PSA検査
・血液検査
・CT検査やMRI検査
などを組み合わせて経過観察を行います。
PSAは再発を早期に発見するための重要な指標です。
治療後に再発することはありますか?
前立腺がんは手術や放射線治療で根治できた場合でも、一部の患者さんでは再発することがあります。
再発しやすい因子として、
・PSA値が高い
・がんの悪性度(グリソンスコア/ISUPグレード)が高い
・前立腺の外へ広がっている
・リンパ節転移を有する
などが知られています。
そのため、治療後も定期的なPSA検査による経過観察が重要です。
日常生活で気をつけること
・定期的なPSA検査を受けましょう
・適正体重を維持しましょう
・適度な運動を心がけましょう
・禁煙を心がけましょう
・バランスの良い食事を心がけましょう
・定期受診を継続しましょう
前立腺がんは治療後も長期間にわたり良好な生活を送ることができる患者さんが多い病気です。
最後に
前立腺がんは男性で最も多いがんですが、早期発見・早期治療によって高い治療成績が期待できます。また、進行した前立腺がんに対しても治療法は大きく進歩しています。
新潟大学泌尿器科では、患者さん一人ひとりの病状や生活背景に応じて最善と考えられる治療を提供します。治療方針を決める際は、患者さん自身やご家族のお考えを尊重しますので、不安なことや疑問点がありましたら、お気軽にご相談ください。

Making the Choice 早期前立腺がんに対してどのように対処するか
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