脳は遺伝子によって形作られるだけでなく、環境や経験の影響を受けながら変化していきます。胎児期から成長期、成体期に至るまでの脳の可塑性は、個人ごとの行動特性や機能の多様性の基盤となります。
発達神経科学分野では、脳の発達と可塑性に注目し、神経細胞やグリア細胞、神経回路、白質がどのように発達・成熟し、情動や行動に結びつくのかを研究しています。栄養や代謝、ストレス、性差、社会的経験などの要因が、脳とこころの発達に及ぼす影響を、分子から行動までを横断する多階層解析によって明らかにしています。
研究では、遺伝子発現解析、組織学的解析、マウス行動解析、脳画像解析などを組み合わせ、脳発達、社会性、情動、行動、および関連疾患に至るまで、幅広いテーマに取り組んでいます。主な研究プロジェクトは以下の通りです。
情動や行動は、発達の過程で形成される脳内回路の働きによって制御されています。本研究では、発達期から成体期に至る脳内回路の形成と機能に注目し、共感や不安、社会性や嗜好性などの情動や行動がどのような神経メカニズムによって支えられているのかを解析します。さらに、依存や嗜好性行動、不安障害やうつ病などの精神疾患にみられる情動・行動の変容との関連にも着目し、分子・細胞・回路・行動を横断する多階層解析を通じて、情動と行動の制御を担う神経基盤の理解を目指しています。
Berto†, Mendizabal†, Usui† et al., 2019, Proc Natl Acad Sci U S A
Ito†, Usui †* et al., 2025, Transl Psychiatry
脳の発生・発達は、遺伝要因だけでなく、社会的経験、ストレス、運動、栄養などの環境要因から強く影響を受けます。本研究では、胎児期から生後発達期にかけての環境や経験が、脳発達や行動にどのような影響を及ぼすのかを解析します。環境と脳発達の相互作用を、分子から行動までを横断する多階層解析によって理解することを目指しています。また、これらの環境要因は、発達期の脳の可塑性を介して精神疾患の発症リスクとも関連しており、その分子・神経基盤の解明が求められています。
Doi et al., 2021, J Neurochem
Nakama, Usui* et al., 2023, Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry
神経発達症や精神疾患の発症・病態メカニズムの解明にも取り組んでいます。なかでも自閉スペクトラム症は、社会的コミュニケーションの特性、ならびに反復的・限定的な興味や行動を中核症状とし、感覚過敏や感覚鈍麻などの感覚特性を伴う神経発達症の一つです。本研究では、原因遺伝子の機能、神経細胞やグリア細胞の発達、神経回路形成、白質形成に着目し、動物モデルおよびヒト検体を用いた解析を通じて、発症メカニズムや病態の理解を深めています。さらに、医工連携・産学連携の観点から、病態理解に基づいた新たな診断方法の開発にも取り組んでいます。
Usui et al., 2017, Genes Dev
Usui et al., 2017, Biol Psychiatry
Usui et al., 2020, EBioMedicine
Usui* et al., 2026, Sci Adv
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