研究案内

薬疹研究について


薬疹:症例写真

Stevens-Johnson症候群(Stevens-Johnson syndrome; SJS)および中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis; TEN)は重症な薬疹の一型です。
TENにおいては発症頻度が100万人あたり年間1~2人と稀ではあるものの、死亡率が25%と予後不良の疾患であり回復しても失明などの重度の後遺症をきたしうるため、有効な診断、治療法の確立が望まれています。病初期では、通常型薬疹(重篤な経過を取らず治癒する薬疹:播種状丘疹紅斑型など)と臨床症状の区別ができないことが多く、適切な治療が遅くなることも考えられます。そのため重症薬疹の早期診断や鑑別に有用な検査法も確立が望まれています。

 私たちは重症薬疹の早期予測マーカーとなり得る因子の同定を研究テーマとしています。これまで、細胞死誘導タンパクである可溶性Fasリガンドやグラニュライシンの血中濃度が、SJS/TEN発症初期に上昇することを報告してきました。さらに、この知見を応用し、血清グラニュライシンの上昇を定性的に評価できる迅速診断キットの開発に成功しました。しかし、グラニュライシンは他の病態でも上昇することが知られており、患者血清などを用いてプロテオーム解析を行うことで、今後さらに特異度の高いマーカーを同定することを目標としています。
 また重症薬疹の発症機序についてはいまだ十分に解明されていませんが、その理由は特に重症薬疹のモデル動物がなく、研究のほとんどが患者サンプルを用いてしか行えないためでした。私たちは世界で初めて患者サンプルを用いた重症薬疹モデルマウスの作成に成功し、このモデルマウスを用いて、同定した候補マーカーの発症機序における関与や、新規治療薬候補の効果を検討しています。

遺伝性皮膚疾患の研究

 新潟大学皮膚科では下村 裕先生(現 山口大学皮膚科教授)が遺伝性皮膚疾患の研究を精力的に行われておられました。(Shimomura Y, et al. Nature. 2010、Shigehara Y, et al. Hum Mol Genet. 2016)下村先生が山口大学に赴任された後も新熊 悟先生(現 奈良県立医科大学皮膚科准教授)を中心に表皮水疱症をはじめ、様々な遺伝性皮膚疾患の遺伝子解析を行い、その病態メカニズムを解明されています。(Shinkuma S, et al. Hum Mutat. 2010、Shinkuma S, et al. Acta Derm Venereol. 2013)さらにTALENsやCRISPR/Cas9といったgene-editing技術とiPS技術を応用し、遺伝性皮膚疾患モデルの作製や遺伝子治療法の開発も行われておられました。(Shinkuma S, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2016)
 現在も先天性乏毛症(Hayashi R, et al. J Dermatol Sci. 2015)、外胚葉形成不全症(Hayashi R, et al. J Dermatol Sci. 2015, Kawai T, et al. J Dermatol Sci. 2017)、掌蹠角化症(Hayashi R, et al. Eur J Dermatol. 2015)、表皮水疱症(Hayashi R, et al. J Invest Dermatol. 2016, Ansai O, et al. J Eur Acad Dermatol Venereol. in press)など様々な遺伝性皮膚疾患に対する遺伝子解析、機能解析を行っています。(Hayashi R, et al. J Invest Dermatol. 2016, Hayashi R, et al. J Dermatol Sci 2016, 2017, Kawai T, et al. J Dermatol Sci. 2018)


3Dスキャンモデルの作製

 また、患者の表皮細胞、線維芽細胞、iPS細胞を用いた3Dスキンモデルの作製も行っています(右図)。病気の治療効果は患者さんに投与するまで分かりませんが、多くの治療薬がある中で最適な治療を選択する必要があります。遺伝性皮膚疾患のみでなく様々な皮膚疾患患者の細胞を用いた3Dスキンモデルを作製することで患者さんに治療薬を投与する前に様々な治療薬を3Dスキンモデルに添加することが出来ます。そして、実際に患者さんに投与する前に最適な治療が選択できるシステムを構築したいと考えています。

接触アレルギーチーム

 個々の症例のアレルゲンを究明することで、社会の安全性を高めることや日常よく遭遇するが治療が難しいとされる疾患などの治療に重要なデータを集積し、すべての皮膚科医に役立つ情報を発信することを目的に活動しています。


パッチテストや化学分析を用いた化粧品や日用品、医薬品による皮膚障害の原因究明と疫学調査

例)
・塩化ビニル手袋中の酸化防止剤による接触皮膚炎。企業と協力して原因を究明し、製品改良につながった。
・化粧品メーカーの協力を得て、製品改良


掌蹠膿疱症、扁平苔癬など金属アレルギーや病巣感染が関連するとされる難治性の疾患に関して、歯科や耳鼻咽喉科との連携による診療  および疫学調査および遺伝的背景の解析

例)歯科治療有効例


社会的問題となる皮膚障害事例が生じたときの多施設疫学調査、全国疫学調査

例)
・消費者安全法第23条第1項の規定に基づく事故等原因調査「毛染めによる皮膚障害」
・ ロドデノール誘発性脱色素斑についての全国疫学調査など