教授より MESSAGE FROM THE PROFESSOR

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強く優しい整形外科医を目指そう

はじめに

皆さんは整形外科に受診したことはありますか。一般的には、関節、筋肉、骨に痛みがあったり、それぞれの動きに伴う不快感がある場合に、整形外科を受診しますね。
そうです。整形外科は骨、関節、靭帯、腱、筋肉といった筋骨格系や脊髄、末梢神経といった神経系などを含めた「運動器」疾患を治療対象としています。そして、これら運動器は日常の動きの中で非常に重要な役割を果たしているため、これらの部分に痛みが生じるのはよくあることです。実際に現代の日本人がかかえている健康問題で最も頻度の多いものはなんだか知っていますか?厚生労働省による「国民生活基礎調査」では、第1位が腰痛、第2位が肩こり、第3位が関節痛で、運動器の痛みや“こり”が上位を独占しています。さらに、日本人の約8割以上が生涯に一度は腰痛を経験するといわれています。
整形外科医は、これらの領域の治療を専門とする医師です。手術を行うことはもちろんのこと、薬物療法やリハビリテーションなどの他の技術を駆使した治療も行います。

整形外科医が治療するけがや外傷(急性疾患)とは、スポーツや事故、災害などによって生じる以下のような障害です。

  • ・靭帯や腱の断裂または損傷
  • ・骨折や関節脱臼
  • ・骨粗鬆症による脊椎または大腿骨などの骨折

また、以下のような長期的な病気(慢性疾患)による骨や軟部組織(靭帯や腱)の問題を治療するのも整形外科医の仕事です。

  • ・関節炎(リウマチを含む)
  • ・慢性の筋肉と関節の痛み
  • ・背骨の痛み
  • ・脊髄または末梢神経に由来する痛み
  • ・手足に発生する腫瘍とがん(肉腫)
  • ・他の場所から骨に広がるがん(がんの骨転移)

さらに、生まれつき持っている骨や関節の病気(先天性疾患)の治療も担当します。

このように、整形外科は広大な医療分野を担当するため、多くの整形外科医は特定の領域を専門としています。たとえば、整形外科で最も一般的な専門分野として、外傷、脊椎・脊髄疾患、関節疾患、骨粗鬆症やスポーツ医学などが挙げられます。整形外科医の仕事は、運動器に生じた病気、生涯、問題を診断し、治療を実行または薬を処方します。また、中・長期的な戦略としてリハビリテーションの支援も行います。外科医としては、全身の骨・関節や脊椎はもちろんのこと、胸壁や腹壁、後腹膜といった体幹部の手術治療も担当します。

整形外科医療の実際

整形外科医はまず患者さんに病歴と症状について尋ねます。体の状態を診断するために、一般的さらに専門的な身体の診察や試験を行います。症状に応じて、X線(レントゲン)、超音波(エコー)または磁気共鳴画像法(MRI)などの画像検査を行う場合があります。 診断を行った後に、患者さんと治療の選択肢について話し合い、それぞれの患者さんに最適な治療法を決定します。これは、手術のほか、注射を含めた薬物療法やギプス、または身体運動あるいは安静でさえあり得ます。

整形外科の専門医となるために教育と訓練

整形外科の専門医になるには、以下の少なくとも11年間9か月の教育を完了する必要があります。

  • ・医学部入学から卒業・医師国家試験合格までの6年間
  • ・主要な医療機関における初期臨床研修の2年間
  • ・整形外科専門研修の3年9か月

整形外科専門研修を終了後に、専門医試験を受け、合格すると専門医になります。
その後は、それぞれの専門分野(サブスペシャリティ領域)で研鑽を重ねていきます。大学院へ進学し博士号を取得することもできます。国内外へ留学して見識を広げることもできます。専門性を深めるのみならず、地域のプライマリケア医として働くという選択肢もあります。

おわりに

新潟は日本で一二を争う医師不足地域と言われていますが、これは紛れもない事実です。一方で高齢社会から超高齢社会へと進み、整形外科医に対する需要は高まる一方です。医療需要が高いにもかかわらず、医師数が不足しているため仕事はとても忙しいです。裏を返せば、期待される仕事は多く、とてもやりがいのある仕事だと言えます。忙しく働くためには身体的にも精神的にも健康と強さが必要です。そして、子供から大人まで、運動器の痛みや障害で困っている患者さんに寄り添って治療をするためには優しさが必要です。そして、期待された治療を成し遂げた暁には、やりがいと楽しさを実感できるはずです。強く優しい整形外科医として私たちと一緒に楽しく働きませんか。意欲のある皆さんが手を挙げてくれることを心待ちにしています。

教授 川島 寛之