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研究

関節症・関節炎

1 変形性膝関節症の原因と病態に関する研究

 整形外科領域で最も患者さんの多い疾患の1つである変形性膝関節症について様々な角度より研究を行っています。
疫学的研究:変形性膝関節症の自然経過を観察し、この病気の悪化因子を探る目的で20年以上にわたり、新潟県の1地域で長期観察を行っています。その結果、これまでに女性、肥満、膝内反が変形性膝関節症の悪化要因であることを報告しました。
分子生物学的研究:近年盛んに行われている分子生物学的な手法を用いて、関節軟骨における遺伝子発現の検討や、関節液の解析による変形性膝関節症の病態の把握に関しても研究を行っています。
生体力学的研究:バイオメカにクスの手法を用いて、変形性膝関節症の患者さんの膝関節運動や歩行分析を行い、膝関節の不安定性や横ぶれ運動が悪化に関係することを報告しています。

2 関節リウマチの病態解明に関する研究

 関節リウマチの病態を解明するために、同意の得られた患者さんから血液や滑膜を提供していただき、検討しています。またマウスやラットに関節炎や炎症を人為的に起こし研究しています。これらは、実験計画書を本大学の倫理委員会に提出し、承認を得られたあとに実験を行っています。
関節リウマチでは、リンパ球や顆粒球などの白血球が病態に大きく関与しています。当科では、CD57陽性T細胞といった特殊な型のリンパ球がリウマチで増えていること、特に関節内で増えていて、炎症を抑える役割をもっている可能性などを見いだし、報告してきました。マウスを用いた実験でも似たような結果が得られています。
また、関節リウマチでは、炎症に伴って体の中で作られるアミロイドという線維性物質が全身の臓器に沈着するアミロイド―シスといった病態が生じることがあります。当科では、マウスの実験で、フェノフィブラートという薬剤にアミロイドーシスを抑える作用があることを見いだしました。
関節リウマチの大きな問題に骨粗鬆症の合併があります。人工関節の手術を行い、動かれるようになっても、背骨の潰れ(圧迫骨折)が生じると、生活の質(QOL)に支障をきたします。当科では、ラットの関節炎を用いて、関節炎に伴う骨の変化について研究し報告してきました。
また、最近注目されている、遺伝子治療もマウスの関節炎を用いて行っています。
以上、いくつかご紹介しましたが、難病のひとつである関節リウマチの解明のために、研究を続けています。

3 人工股関節に関する研究

 新潟大学股関節グループでは人工股関節置換術後の合併症をゼロに近づけるため、日々手術を受けられる患者さん一人一人に対しての手術の適応・術前計画・手術操作の検討と術後管理を行い、そのデータを振り返ることを心がけております。そのためひと月に行える手術件数は限られます。新潟市内では済生会新潟第二病院・臨港病院と協力して、臨床研究を通じて得られた結果を日常診療にフィードバックしており、特に人工股関節の設置位置・角度についての研究に力を入れております。人工股関節にも3次元的手法が普及されつつありますが、未だにその定義や理論などは未解明のまま一部の技術だけが先行し、情報が独り歩きしていることが現状の問題点として指摘されています。例えば、脱臼の原因としてインピンジメント(もの同士がぶつかるという意味)という現象が注目されており、脱臼の主要因とされ、特にインプラント同士がぶつかるインプラントインピンジメントという現象が注目されるようになりました。コンピューターシミュレーション上はインピンジメントが起こらない範囲は非常に狭く、この限られた範囲内に設置しないと問題が生じることになっています。一方、以前からX線だけを用い、3次元的手法を用いなくても良好な手術成績を出している施設も世界中では圧倒的に多いことからもわかるように、人体における理想的設置位置に関してはいまだ決まっておりません。新潟大学股関節グループとしてはその定義や理論などのさらなる究明が急務であると考えております。脱臼は多因子性であり軟部組織のバランスから骨盤・下肢の代償機能なども含めて解析しなければなりません。当科で開発したソフトで実際の患者さんの例を解析していきますと、インプラントインピンジメントが生じる前に生理的な骨同士でぶつかる骨性インピンジメントが生じておりコンピューターシミュレーション上の現象だけでは説明がつかないことが分かってきました。現在はその基準となる指標について解析しており、今後は実際の患者さん一人一人に即した、オーダーメイドの術前計画と手術ができるようになるかもしれません。近年の傾向として手術件数が多いことだけに注目されることもありますが、基本として不要な手術は行わず、手術を施行する場合はその合併症を最小限におさえる努力を日々行うという姿勢を忘れず、日常診療及び臨床研究をこれからも行っていきたいと思います。

骨軟骨再生

ヒト骨髄由来の未分化間葉系細胞を用いて、骨や軟骨組織の形成を増強させる遺伝子を導入後、骨軟骨の再生に用いる研究を行っています。

腫 瘍

1 治療における研究

 進行した骨軟部悪性腫瘍に対する治療成績はいまだ満足できる段階からは程遠いと考えられる。私どもはこれまでに癌抑止遺伝子p53や血管新生抑制因子コンドロモジュリンを用いた遺伝子治療の可能性について基礎研究・検討を行い、一定の局所治療効果を証明してきた。現在は悪性腫瘍の微小転移巣を撲滅すべく癌抑制遺伝子の全身的な投与法の模索として、遺伝子の運び屋であるベクターの改良や、より正常細胞への影響の少ない遺伝子の導入などを検討し、将来的な臨床応用を目指した研究を続けている。さらに、近年開発され、臨床応用され始めた慢性骨髄性白血病の治療薬であるグリベックや、非小細胞性肺癌の治療薬であるイレッサなどの骨軟部悪性腫瘍への応用についても研究を進めている。これらの新規薬剤は悪性腫瘍細胞の異常増殖の原因となる成長因子やその受容体分子を特異的に阻害するため、分子標的治療薬と呼ばれており、個々の患者さんの腫瘍に特異的な標的を狙い撃ちする新しい治療法として期待されている。なお、これらの研究は、県内、県外のがんセンター、大学病院や、米国M.D. Anderson Cancer Centerとの共同研究として行っている。

2 診断面における研究

 骨軟部腫瘍は稀な疾患でありかつ多彩な組織像をしめすことから顕微鏡を使った組織診断のみでは十分客観的な診断ができない例もある。このため腫瘍細胞の染色体分析、転座遺伝子の検出、腫瘍特異的遺伝子変異の解析などを行い、より客観性をもった診断技術の開発を目指している。実際に組織学的に診断に迷う例がこれら手法をもちいて確定診断にいたることがしばしばある。また現在までにヒト肉腫細胞のヌードマウス移植モデルを用いて、腫瘍細胞と非腫瘍細胞をin situ hybridizationを用いて判別する系を開発し、骨肉腫における骨形成が腫瘍細胞と非腫瘍細胞の共同で起きる場合があることをはじめて証明した。さらに従来きわめて困難とされてきた肉腫細胞の末梢血液中における同定を転座遺伝子、腫瘍特異的遺伝子発現などをターゲットとしたPCR法を用いることにより可能であることを証明し、治療に結びつく診断法を確立中である。

3 人工骨の基礎

 骨腫瘍切除後にはしばしば巨大な骨欠損が生じる。この場合自家骨を用いた再建には限りがあり近年さまざまな人工骨が使用されている。人工骨が生体内でどのように自家骨に再生していくかについての基礎実験を、動物、臨牀材料の両面から解析している。

バイオメカニクス

膝関節の生体工学的研究

 膝関節の3次元運動や力学環境、歩行解析といった生体工学的な研究を新潟大学工学部や多くの企業との連携で行っています。その結果は、膝関節の様々な病気の原因解明や人工関節置換術や関節鏡をはじめとした各種手術のコンピュータナビゲーション化、手術後のリハビリテーションやスポーツ外傷・障害の予防といった多くの臨床の場に応用されています。

脊椎・脊髄

脊柱靭帯骨化症(OPLL)における3次元画像解析による骨化巣体積評価

OPLLの進展について、3DCTの3次元画像解析(Mimics®, Materialise社)により、従来のX線の画像解析より詳細で定量評価が可能な、骨化巣の形態と体積評価法を初めて確立した(図1,2)。(Izumi T, Watanabe K, et al. Eur Spine J, 2013), (Katsumi K, Izumi T, Watanabe K, et al. Eur Spine J, 2016)

頸椎OPLLの3次元画像解析 3次元画像解析による頚椎OPLL体積変化
図1:頸椎OPLLの3次元画像解析
(CTより骨化巣を抽出し解析できる)
図2 :3次元画像解析による頚椎OPLL体積変化
(X線では骨化巣増大の詳細な評価は困難である)

年齢、頚椎可動域がOPLL増加の危険因子であることを明らかにした他、頚椎固定術の併用は、除圧術単独に比べ骨化巣の年毎 増加率を有意に抑制し(固定群2.0%/年:除圧群7.5%/年)、OPLLへのメカニカルストレスの軽減がOPLLの成長を抑制する事を明らかにした。現在も骨化巣増加の危険因子を、画像および骨形成抑制蛋白などにも注目して、解析を進めている。

脊柱靭帯骨化症(OPLL)における3次元画像解析による骨化巣体積評価

われわれは、これまで生体内で不可能であった脊髄神経路の可視化に、脳研究所統合脳機能研究センターと共同で取り組んできた。これまでの研究成果から、MRI拡散強調画像法の一つである三次元不等法性コントラスト軸索強調画像を用い(1)、脊髄横断面で楔状束(fasciculus cuneatus)、薄束(fasciculusgracilis)、脊髄小脳路(spinocerebellar tract)の可視化が可能となった(詳細は参考文献2を参照)。

normal spinal cord

臨床応用として、頚椎症性脊髄症を対象とした上行性脊髄神経路変性の描出も行った。現在、より詳細な臨床症状と画像所見との対比を行うことで、手術後の神経機能の回復程度が予測可能となるよう研究を継続中である。

(1) Nakada T, Matsuzawa H, Kwee IL. Magnetic resonance axonography of the rat spinal cord. Neuroreport 1994 ; 5 : 2053-2056.
(2) Urakawa T, Matsuzawa H, Suzuki Y, et al. Analysis of ascending spinal tract degeneration in cervical spondylotic myelopathy using 3D anisotropy contrast single-shot echo planar imaging on a 3.0-T system. J neurosurg Spine 2011 ; 15 : 648-653.

パッチクランプ法による脊髄前角細胞の機能解析

脊髄損傷における脊髄保護療法の開発を目指した基礎研究を行っている。特に脊髄損傷の二次損傷に深く関与している活性酸素の脊髄前角に対する作用機序を、電気生理学的実験 (パッチクランプ法)を用いて検討している。これは、ラットの脊髄スライス標本を作成し、近赤外線微分干渉顕微鏡を用いて脊髄前角細胞をテレビモニターで観察しながら微小電極を誘導し、単一細胞から記録を行うものであり (図)、生きた細胞で、リアルタイムにシナプス伝達や細胞興奮性の解析が可能である。脊髄損傷後の神経回路網の再生 (神経可塑性)促進を目指し、脊髄前角におけるモノアミンの作用機序も同様の手法で検討している。さらに、電気生理学的実験によって得られた成果をもとに、各種薬剤の脊髄保護効果について、脊髄損傷モデルラットを用いた研究も開始している。

実際の記録

脊髄損傷後の軸索再生における神経成長タンパクGAP-43の機能解析

脳・脊髄など中枢神経は、一度損傷を受けると再生しにくく、現状では十分と言える治療法は確立されていません。その要因の一つに、中枢神経の軸索伸長能力が低いことが挙げられます。一方で、伸長している神経軸索の先端には、成長円錐という運動性に富んだ構造体があり、その機能を支える分子群、神経成長関連タンパク質 ( neuronal growth-associated proteins; nGAPS)が報告されています。
わたしたちは、この分子群のうちの、Growth associated protein 43-kDa (GAP-43) に着目し、その機能解析により、脊髄損傷の再生治療に活かすことを目指して研究を行っています。なおこの研究は、本学分子機能細胞学分野との共同研究として進行しています。

図: 培養細胞に GAP-43を過剰発現
図: 培養細胞に GAP-43を過剰発現

手の外科

(準備中)