疾患・治療情報

HOME疾患・治療情報 > 泌尿器がん > 前立腺がん

泌尿器がん
前立腺がん
はじめに

近年、血中腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)検査の普及で早期の前立腺がんが発見されるようになりました。

検査、診断および治療方法
前立腺生検

PSA値あるいは肛門からの触診(直腸指診)で前立腺癌が疑われる方には、前立腺生検を行うことを薦めています。できるだけ無駄な生検を行わなくてすむように、年齢、PSAの上昇の程度、前立腺の大きさなど様々な面からがんが疑われる場合に前立腺生検を行うようにしています。
当院では生検の前日に入院、生検後問題がなければ翌日の退院と2泊3日で行っています。検査は30分程度です。合併症としては、血尿(おしっこに血が混じる)、便に血が混じる等がありますが、ほとんどの場合3、4日で軽快します。最も問題となる合併症は生検によって急性前立腺炎を生じ高熱が出ることです。

病期診断
前立腺癌と診断された場合、MRI、骨シンチグラフィ、CT等で病変の広がりと転移の有無を調べます。


治療

75歳以上の日本人男性の平均余命は高血圧症・動脈硬化症・心筋梗塞・糖尿病などのために
約10年程度です。前立腺がんの進行が遅いことを考えると、75歳以上で早期がんであれば前立腺がんを根治しなくとも寿命を全うできるとも考えられます。
75歳以下で他の大きな病気がない患者さまは、転移のない段階でがん細胞を全て退治できれば再発や転移を避けることができます。
下記の治療法にはそれぞれ長所と短所がありますので、当院では医師から現在の病状(病期とがんの悪性度)と各治療法についてお話しし、患者さまご自身の考えで治療法を決めていただいております。

治療方法
抗男性ホルモン療法

前立腺がんは比較的進行が遅く、大半は増殖に男性ホルモンを必要とするがんです。この性質を利用して、
体内の男性ホルモンを減らし、がんを増殖させない抗男性ホルモン療法が80%以上の患者さまに有効です。
しかし、何年か経つとこの治療に抵抗して増殖するがん細胞が優勢になってくるため、抗男性ホルモン療法だけでは前立腺がんを完全に治すことはできません。体の中にある男性ホルモンを絶つことにより前立腺がん細胞の増殖を抑える治療で、最も有効で基本となる治療法です。
男性ホルモンは脳の一部である下垂体から出るホルモン(LH,ACTH)により刺激を受けて、精巣(睾丸)と副腎から分泌されます。この男性ホルモンを作らないようにするか、前立腺に作用しないようにする治療ですが、昔から精巣自体を手術で摘除する方法(去勢術)が行われていました。現在は下垂体に作用して男性ホルモンを去勢術と同じくらいに低下させる薬(LH-RHアナログ)を1ヶ月あるいは3ヶ月に1回注射する方法があります。
治療効果は去勢術も注射による方法も差がありません。
また、男性ホルモンを抑える飲み薬を併用する場合もあります。
抗男性ホルモン療法は比較的副作用の軽い治療法とはいえ、ほてり感、気分の変調、勃起不全、
筋力低下などが起こる場合があります。



前立腺全摘除術

前立腺周囲の臓器ごと、前立腺を全部摘出してしまう手術で、がん細胞が前立腺の中に限局していれば根治の可能性の高い治療法です。ただし、がん細胞が前立腺の外側まで浸潤している場合はがん細胞が残る可能性があります。
近年、傷が小さくてすむ体腔鏡を用いた手術が広まりつつあり、当院でも積極的に行っています。
勃起機能も残してほしいと望まれる患者様には、残せる勃起神経は残し、残せないものに関しては下肢にある神経を持ってきて移植する手術(神経移植併用前立腺全摘除術)を行うこともあります。


[起こりうる合併症]


・勃起不全:
勃起を調整する神経は前立腺の外側に接しています。がんの進行度によっては勃起神経を犠牲にしなければならない場合があります。 前立腺皮膜ぎりぎりで切除を行っても神経は多少の障害を受けます。 また、精子の通り道である精管は切断され、精液の成分を分泌する前立腺と精嚢が摘出されますので射精は全くできなくなります。
・ 尿失禁: 
尿道を閉じておく尿道括約筋は手術により多少の障害を受けます。手術直後は一時的に尿失禁の状態になりますが徐々によくなります。 しかし、1年以上経っても完全に回復しない場合が5%前後あります。出血、感染、全身麻酔による危険性は他の手術と同様にあります。 特に前立腺の前面には多数の静脈があり、1000ml以上出血する場合があるため、 輸血や自分の血液を採血・貯蔵しておいて手術時に戻す自己血貯血の準備が必要です。



放射線療法

がん細胞が放射線に弱いことを利用して、がん細胞を死滅させる方法です。近年、コンピュータを利用して照射領域を正確に狙うことができるようになり、治療効果は前立腺全摘除術に匹敵するようになってきました。
放射線療法は通院治療が可能ですが、1週間に5回のペースで7〜8週間かかります。
・利点: 
心臓や肺などの臓器に負担をかけないため、持病で手術が受けられない方でもできます。 勃起不全や尿失禁などの合併症が手術よりも少なくすみます。
・ 問題点: 
前立腺の隣の膀胱や直腸の正常細胞の血行が悪くなるため、炎症をおこし、出血や痛みが出ることがあります。 治療中または治療後しばらく経ってから起こることがあります。時に輸血が必要なほど出血することもあります。



密封小線源永久挿入療法

アメリカでは1990年頃から始まった治療法で、日本では2003年から一定の基準を満たした施設で行われるようになりました。 2008年1月には全国で約80の病院で行っています。当院では2007年8月から開始し、月1〜2例、2008年8月の時点で20例を超える患者さまがこの治療を受けられました。

[この治療に適するのは?]
がんが前立腺内にとどまっており、がんの悪性度がそれほど高くない患者さまが適しています。 前立腺がとても大きい方や、過去に経尿道的前立腺切除術を行った方は、十分な治療ができなかったり副作用が出てくる可能性があるため、行っておりません。

[どのような治療なのですか?]
非常に弱い放射線を出す小さな線源(金属カプセルに入った放射性同位元素=ヨード・シード)を前立腺内に埋め込むことによって集中的に照射する治療です。

[実際の方法は?]
事前に前立腺の大きさを測定し、小線源を何個、どの位置に埋め込むかを専用のコンピューターで
計算します。
入院後、全身麻酔をかけた上で、会陰部(陰嚢と肛門の間)から長い針を使って、コンピューターで計算したとおりの前立腺内の適切な位置に線源を挿入します。
治療時間は1〜3時間程で、その後はしばらくベッド上安静が必要ですが、翌日には歩行が可能となり、数日後に歩いて退院できます。

[この治療の優れた点は?]
・前立腺周囲にある膀胱や直腸への影響が少ない。
・治療は1日で済み、入院期間も短い
・治療後の勃起力は7割くらいの人で維持される

・副作用は?

1.急性症状(治療後6ヶ月以内)
・血尿: 
治療後24時間以内におこり、ほとんどの場合はごくわずかです。
・ 排尿困難: 
前立腺が浮腫をおこすことで、尿が出にくくなったり膀胱にたまった尿を出せなくなることがあります。ほとんどが治療後の早くにおきますが、多くの場合内服薬で改善します。尿が出せない場合は、尿道にカテーテルと呼ばれる管をいれることもあります。
・尿意切迫感: 
尿意を感じると我慢できなくなることが治療後早くにおこることがあります。尿道の炎症(刺激)によるものと考えられており、多くは内服薬による治療で対応できます。
・ 直腸炎: 
前立腺が直腸に接しているため、排尿中に便意を感じたり、腸の動きが通常より少し多くなります。通常数ヶ月で改善します。
・射精時痛/血精液症: 
治療後最初の射精ではよく見られます。精液に血液が混入したり射精時に痛みがあったりしても、
通常は自然と改善します。

2.晩期障害(6ヶ月以降)
・勃起不全: 
治療後1年以降に勃起力が低下することがあります(20〜30%)。
バイアグラ等の薬物療法が有効なことが多いです。
・ 直腸潰瘍: 
痛みがない直腸出血が出現することがありますが、極めて稀(1%)です。



[放射線被爆は?]
体の外に出る放射線はごく少量ですが、担当医の指示を必ず受けてください。
・小さなお子さんを長時間抱っこすることをひかえてください。
・妊婦等との長時間の接触等を控えてください。



[治療の効果判定は?]
治療後のPSAは多少の上下を繰り返しながら徐々に低下し、最終的に治療したかどうかの判定までに4〜5年はかかるとも言われています。この間に1回や2回PSAが上昇しても、この治療に関しては病期の再発とは定義されておりません。何年という単位で経過をみないと明らかなことは言えないことが多いことをご理解ください。



[線源が脱落した場合は?]
前立腺内に留置した線源が、尿とともに排出されることがあります。この場合、決して直接指で触らずに、箸やスプーンを用いて退院時にお渡しする容器に入れ、泌尿器科へ連絡してください。



[不慮の事故について]
不慮の事故等で治療後1年以内に患者さんがお亡くなりになられた場合、前立腺を含めて線源を取り出すことに同意していただくことがあります。

ページ上に戻る