新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野 後期研修リクルート

Special talk寺井 崇二教授 × 若手医師の特別対談

寺井 崇二教授 × 現役研修医

これからの時代を生きる内科医として
研修を通して身につけるべき力とは

寺井教授はどのような研究医時代を送ったのか、今に至るまでの道のりでどんなことがあったのか、これからの研修医に学んでほしいことは何か、寺井 崇二教授と当科 若手医師による対談をお届けします。


寺井 崇二 教授

寺井 崇二 教授

自己骨髄細胞を使った非代償性肝硬変症に対する再生療法を世界で初めて開発後、さまざまな消化器疾患の臨床・研究を行う。
他家脂肪組織由来間葉系幹細胞の肝硬変治療のPhaseI・Ⅱの治験、研究の実施を通じ、さらにCOVID-19を起因とする重症肺炎などに対する間葉系幹細胞の治験、研究に取り組む。
あらたにエクソソームを使った診断、治療法および3Dバイオプリンターを用いた研究を行っている。
総合消化器内科医、そしてClinical Scientistとして、取り組んできたことを継続しつつ、後進の医師の教育に力を入れる。

若手医師の2名

木村 莉菓 先生
木村 莉菓 先生

H29年卒
医師4年目

北條 雄暉 先生
北條 雄暉 先生

H30年卒
医師3年目

寺井教授と若手医師、消化器内科を選んだ理由は?

北條先生今日は寺井教授と消化器内科を専攻して1年目の木村先生、そして2年目の北條による対談の企画となります。木村先生や私から、普段聞けないようなことなど質問していきたいと思います。

北條先生それでは早速私から質問させてください。寺井教授はどうして消化器内科を選択されたのですか?

寺井教授消化器内科は消化・吸収・代謝を制御する多様な臓器が対象で、それらの破綻が疾病の原因となるという点に強く興味をもったのが最初です。また内視鏡、血管造影を用いた様々な治療技術にも興味がありました。二人が消化器内科を選択した理由はどうですか?

木村先生私は学生のころから内視鏡のような手技に興味があり、初期研修では消化器内科を強く意識するようになっていました。北條先生はなぜ消化器内科を選びましたか?

北條先生自分も手技に興味があり消化器内科の他に外科や泌尿器科と迷っていました。
最終的には研修で、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)の技術や急性閉塞性化膿性胆管炎の患者さんがERCPで救命されるのを見て、自分もやってみたいと思ったのが理由です。

治せない病気、診断のできない病気に対して1つでも新しい診断・治療法を開発を

寺井教授手技など体を動かすことが好きな先生が多いのはその通りだと思います。その一方で、悪性腫瘍のような難治性の疾患に取り組みたいという気持ちがある先生が多いのも特徴かもしれません。自分が研修医の時に担当した膵臓癌の患者さん。患者さんご自身の最期に向き合う姿とその人間性に触れ、自分の未熟さを痛感したのをよく覚えています。その気持ちがあるから今も教室のミッションとして「治せない病気、診断のできない病気に対して1つでも新しい診断・治療法を開発」するというのを掲げています。

北條先生1つの症例から感じること・学ぶことがあるということですね。他に先生に影響を与えた症例はありましたか?

寺井教授研修医時代に症例報告した原発性硬化性胆管炎と、翌年に経験したアメーバ腸炎の患者2例も印象に残っています。英文で症例報告する重要性について指導を受け、投稿まで頑張ったのは貴重な経験でした(Digestive Endoscopy 1992, 1993)。この経験があるから、教室の若手の先生には英文の症例報告をするよう指導しています。
他には3年目に担当した胃静脈瘤の患者さんで、当時としては新しい内視鏡的胃静脈瘤結紮術を行った症例も印象に残っています(Endoscopy 1994)。今ではBRTOなどが主流ですが新しい治療法を考えるという点ですごく参考になりました。

木村先生症例報告にも挑戦してみたいと思いますが、どのようにすればいいのかわからなくて不安な面もあります。

寺井教授そのためにも消化器内科はしっかりした指導体制を敷くことで、挑戦するチャンスを得られるように配慮しています。だから安心して頑張ってください。

北條先生木村先生、頑張ってください。

寺井教授北條先生もですよ。

北條先生はい、これは失礼しました。

医師は常に、真剣に、全力で、英知を結集し患者に向き合うしかない

北條先生ところで寺井教授がこれまで取り組んでいらした肝難治性疾患に対する新規治療に関わった患者さん方はたくさんいらしたと思うのですが。

寺井教授そうですね。2003年世界初めての自己骨髄細胞投与療法(ABMi療法)(Stem Cells 2006)に挑まれた患者さんや、肝がんに対する鉄キレート剤投与療法(NEJM 2011)を行う際の最初の患者さんは少しでも治したいという気持ちで、新しい治療を求めてらっしゃいました。一方で臨床研究、治験は開発中の医療であり、全ての患者さんが新規治療の対象になるわけではないことから、お断りするしかなくの悔しい思いをしたこともあります。そんな中、臨床研究に入れず亡くなったご家族から研究開発のためにとご寄付を頂いたことがあり、更なる次世代治療法開発への決意を新たにしたことをよく覚えています。

木村先生それはすごいお話ですね。ご家族の気持ちを思うと本当にお辛いでしょうが、それをこらえて寄付をいただくなんて。

寺井教授ええ、新潟赴任後も新しい治験、臨床研究を実施していますが、一番つらいし不安なのは患者さんなのだから、我々医師は常に、真剣に、全力で、英知を結集し患者に向き合うしかないと思っています。

消化器内科の今後と医師として目指すべき道は?

北條先生最後になりますが、消化器内科は今後どのように展開し、我々はどのような医師を目指していくといいのでしょうか?

寺井教授消化器内科学は今後、人間の基本の“食”に密接に関連する医療の分野へ広がりを見せ、先制医療、展開医療など様々なステージの医療を実践していくことになると思います。目指す医師像としてはまずは消化器内科全般を扱える優れた“総合消化器内科医”となり、新規治療開発や研究に取り組める“Clinician-Scientist”としての素養も身に着けてほしいと思います。そして全国、世界の同世代に友人や仲間を作り、切磋琢磨しながら治せない病気、診断のできない病気に対して1つでも新しい診断・治療法を開発できれば本当に素晴らしいことだと思います。そして当科としてはその実現に力を合わせていきたいと思います。

北條先生“総合消化器内科医”から“Clinician-Scientist”へ、私たちも未来に向けて日々頑張っていきます。今日は貴重なお話ありがとうございました。

木村先生ありがとうございました。

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