先輩たちより SENIOR RESIDENT

title_bg
トップページ 医学生・研修医の皆さんへ 先輩たちより 人生の扉は他人が開く

酒井 瑛平
人生の扉は他人が開く

入局6年目、平成27年卒の酒井瑛平です。神奈川県横浜市出身、1年間の人生の寄り道を経て、センター試験で国語と社会に失敗し「新潟ならいける!」と受験したら補欠合格であった、そんな自分です。みんなが意気揚々と入学準備をしている中、3月28日に追加合格の連絡が来た朝は、人生で5本指に入る嬉しかった日です。新潟の天気の悪さに「卒業したら横浜に帰るしかない!」と思っていた中、大学5年生で新潟出身の女性と付き合い(現妻)、「あなたと付き合えるなら新潟に残ります!」と宣言。関東の病院見学に行った1週間後には「新潟もいいよね」と言っていたそんな私です(結果として新潟に残ってよかったと思っています。心から思っていますよ。ホントに)。なぜこんなところに寄稿しているのか、こんな文を載せていいのかは分かりませんが、医学生・研修医の皆さんに最後まで楽しんで読んでもらえたら嬉しいです。

こんなその辺にいそうな私ですが、大変ありがたいことに運動器超音波(以下エコー)の分野では、色々とお仕事をいただけるようになりました。自分よりも上の先生にエコーを教えたり、エコーに関する教科書を書かせていただけるようになりました。運動器エコーにハマり、頂いた仕事に「はい!」と言い続け、吐きそうになりながらも走り続け、気がつけば先進整形外科エコー研究会という会の世話人になっていました。玉石混交のWebセミナーですが、当研究会主催で行うと1000人近くの人が集まります。大きな学会でも1000人集まるとめちゃくちゃ広い会場が埋まるレベルです。Webとはいえ、1000人という規模の前で話す機会を得られていることは、他の人には得られない経験をさせていただいていると感じています(毎回吐きそうになっていますが…)。

最近「人生の扉は他人が開く」という言葉を知り、非常に突き刺ささりました。自分の短い医師人生も思い返せば、人との出会いにより扉が開かれていったように思いますので、振り返らせていただければと思います(ちなみにこの言葉を検索すると整形外科レジェンドのお言葉としてすぐに詳細がHITします。医師としてのマナー、心構えなど人として学ぶべきことがたくさん書かれており、この原稿をほっぽりだしてついつい読みふけってしまいました。是非とも皆さんも御一読ください)。

最初は運動器超音波(エコー)との出会いでした。みなさんエコーって聞いてなにをイメージしますか?赤ちゃんをみるのに使いますね。心臓もエコーで動きを評価できます。え、運動器?どこをみるの?なにを診るの?なかなか実感が湧かないかもしれません。近年、超音波装置やプローブの改良が進み、組織の細かいところまで描出できるようになりました。痛みを引き起こす腱や神経の動きまで可視化できるようになりました。ここ10年での進歩は目覚ましく、ブラウン管から4K以上に高画質になっています。

ところで、みなさんは整形外科にかかったことがありますか?「腰が痛いです」「膝が痛いです」という痛みに対し、手術適応があればウキウキ、ない患者さんには「はい、痛み止めと湿布」という対応が多かったのではないでしょうか。ここにエコーが登場し、痛みの原因を可視化、注射によりピンポイントで介入し対応できるようになってきています。

一番大きな整形外科の学会で私は衝撃を受けました。痛みに対してエコーと注射で即診断、即治療。痛みをバッサバッサと改善させていく。そのセンセーショナルなプレゼンはカミナリとして私の体を貫きました。きっと私の天然パーマはそのせいです。これからの時代、エコーが絶対来る!これは学ぶしかない!と強く思いました。しかし「どう学べば良いか、自由に使えるエコーもないし…。」と迷う日々。そこに次の出会いが訪れます。

「エコー使えるようになりてー」と燻っていたある日、その出会いは医局での倉◯先生からの一言でした。

「SMAPっていうセミナーに行ってみない?先生声デカいしプレゼン頑張れば最新のエコー借りられるかもよ」

SMAPとは運動器超音波に興味を持つ若手医師グループによる研究会です(先進整形外科エコー研究会(Sonography for MSK Activating Project: SMAP)。そこでは奨学金ならぬ‘’奨学エコー“制度があり、「エコーを使ってやりたいこと」をプレゼンバトルし、勝った人は最新エコーを半年〜1年間無償で貸してもらえるという制度でした。「プレゼンテーションの勉強にもなるし、運動器エコーの勉強にもなるし、これは行くしかない!」と思い、ドキドキしながら研究会に参加しました。

そこで出会ったのは運動器エコーの最前線を駆け抜けるトップランカーの方々でした。エコーや注射の技術はもちろんですが、なによりプレゼンテーションが上手い!今までの自分のプレゼンはなんだったのかと思うほどの衝撃でした。

そこで出会ったトップランカーと懇親会で意気投合し一言、「次のプレゼンバトルにもちろん出るでしょ?」。数秒の沈黙の後、私は「はい!!」と頭を真っ白にしながらうなずきました。

そこからは怒濤の日々でした。「新潟にエコーを広めます!」と大きな声と早口でプレゼンすると、まさかのAwardに選ばれ貸与決定。「エコー使い倒さないと消される!」というプレッシャーに吐きそうになりながら、赴任先の新潟県立がんセンターで軟部腫瘍100例に当てました。その成果報告会でMVPをいただき、あれよあれよと気づけばエコーハンズオンの講師をするようになり、韓国に行って発表させていただいたり…。振っていただいた仕事に「はい!やります!」と言って走っていたら、世話人になっていました。

「人に教える」ということはそれ以上に自分が勉強しないといけない、ということを学びました。「教える」ということは最高の勉強の機会、アウトプットこそが最強の勉強であることを学びました。

最初に一歩を踏み出したあとは、人との出会いによって人生の扉を開けていただきました。無我夢中で走るうちに、医局を超えたつながりをつくることができました。「あれが人生の分岐点だったのか」と本原稿を書きながら思いました。会う度に原稿の催促をしつづけてくれたHP編集係の村山君、本当にありがとう!

自分一人の力には限界があり、いつも誰かに引き上げていただいたことに感謝しかありません。臨床も研究も、手術手技も診察スキルもまだまだの自分ですが、精一杯走り続けたいと思います。

自分が扉を開いていただき、チャンスをいただいたように、自分の回りにいる人や後輩に少しでもその恩恵を還元したい。誰かの扉を開くことができたら、と思い日々精進しています。

あなたも一緒に整形外科、運動器という広大なフィールドに飛び込んでみませんか?

のめり込めるなにかが、絶対に見つかるはずです。

(2022年10月 掲載)

酒井 瑛平

酒井 瑛平

役職
新潟中央病院 整形外科・医師
専門分野
膝・肩・スポーツ、運動器エコー
出身大学
新潟大学
卒業年
平成27年(2016年)

※役職・専門分野は掲載時のものです

一覧へ戻る