統合失調症研究とコミュニティ精神医療の最前線
演題①:統合失調症の前駆期から早期段階における脳構造変化の理解
講師:齋藤 慶人 先生(メルボルン大学 大学院生)
演題②:オーストラリアのcommunity-based careの精神科医療について
講師:北野 麻理恵 先生(メルボルン大学 モナッシュ病院 精神科専攻医)
座長:朴 秀賢 先生(新潟大学大学院医歯学総合研究科 精神医学分野 教授)


開催情報
※内容は予告なく変更になる場合があります。
概要
演題①:統合失調症の前駆期から早期段階における脳構造変化の理解(講師:齋藤 慶人)
統合失調症スペクトラム障害では広範な灰白質および白質の変化が報告されています。 本研究ではその関係性を明らかにするため、多変量解析を用いた灰白質と白質の統合的解析や、 灰白質直下に位置する浅層白質の変化をFixel-Based Analysisにより評価し、認知機能との関連を検討しました。
さらに、Psychosis発症のハイリスク群に対して同手法を適用し、早期の白質変化を探索しました。 皮質下構造物形態の特性解析や小児期統合失調型パーソナリティ障害の研究も進め、 Psychosisの発症機序解明と早期介入の可能性を議論します。
演題②:オーストラリアのcommunity-based careの精神科医療について(講師:北野 麻理恵)
日本の精神科医療では精神病床の平均在院日数が263.2日に達し、長期化が顕著です。 一方、オーストラリアの公立急性期病院での精神科入院は平均約15日と短く、 地域に根ざしたケアと医療提供がその背景にあります。
本講演では両国の状況を比較し、コミュニティベース医療の意義と限界を検討します。 社会復帰を支え、施設依存を回避しうる一方で、継続性や一貫性確保には課題が残されており、 専門チーム体制、専攻医の研修や働き方、患者層の特徴にも触れながら、 日本における精神科医療の将来像への示唆を提示します。