2024年8月~2025年7月 RSウイルス全国調査の結果
2024-25シーズンのRSウイルス全国調査では、2024年8月1日から2025年7月31日までの期間に、日本各地でのRSウイルス(RSV)の流行状況について調査を行いました。全国9道府県の外来医療機関にご協力いただき、RSウイルス感染症が疑われる患者から鼻腔拭い液や鼻汁などを採取しました。新潟大学に輸送後、RSウイルスの検出と型判定をリアルタイムPCR法を用いて行いました。さらに、全ゲノム解析については、次世代シーケンサーを用いて実施しました。
【検体採取状況】
2024年8月1日から2025年8月8日受付分までに、全国から131件の検体が収集されました。そのうち115件の初診時検体についてリアルタイムPCRを実施しました。サブタイピングの結果、A型は34件(29.6%)、B型は64件(55.7%)、陰性は17件(14.7%)でした(表1)。2024-25シーズンはB型が多く検出されました。
【地域別RSウイルス流行型】
サブタイピング結果に基づき、地域別の流行型を示す分布図を作成しました(図1)。A型が優勢な地域は北海道、B型が優勢な地域は滋賀県、山口県、愛媛県、沖縄県でした。新潟県では、A型とB型の両方が見られました。
【疫学曲線】
国立感染症研究所の5類定点発生動向調査に基づく定点報告数と、当教室で収集した検体のサブタイピング結果(A型・B型検出数)、およびサンプル数(A型・B型・PCR陰性を含む)を月別に集計し、疫学曲線を作成しました(図2・図3・図4)。
2024年
全国合算(図2): 3月頃から定点報告数が増加し、初夏(5〜7月)に高値を示し、約4か月の長期間にわたり流行が持続しました。その間、当教室のRSウイルス検出数も同様の傾向を示し、4月に最大(A型優勢)となり、7月に小ピークを認め、秋〜初冬は低水準で推移しました。
沖縄(図3): 定点報告数は春〜初夏にかけて上昇し、6月にピークを示した後、漸減しました。当教室のサンプルも5〜6月にA型・B型が混在し、最多となりました。
沖縄県以外[北海道〜九州](図4): 定点報告数は春先から増加し、初夏(6〜7月)に長期間のピークを示しました。同時期に当教室のサンプルも4月の山(A型優勢)を中心に春〜夏に継続的に検出され、その後年末にかけて減少しました。
2025年1〜6月
全国合算(図2): 定点報告数は冬季後半から上昇し、3月にピークを示した後、5〜7月にかけて減少しました。当教室のサンプル数も1月以降増加し、2〜4月に立ち上がり、5〜6月は高止まりし横ばいで推移しました。B型が優勢でした。
沖縄(図3): 定点報告数は2月以降明確に上昇し、5〜6月にかけてピークに達しました。当教室のサンプルも2月以降増加し、5〜6月に急増しました(B型優勢)。
沖縄県以外[北海道〜九州](図4): 定点報告数は3月にピークを示した後、5〜7月にかけて速やかに低下しました。当教室のサンプルも2〜4月にピーク(B型優勢)を示し、その後は減少しました。
総括
2025年は沖縄県以外でも冬季〜早春(2〜3月)に定点報告数の明瞭なピークが観測され、例年の夏季中心の流行パターンとは異なる推移を示しました。今後の秋季動向についても、定点報告数と当教室のサンプル双方で継続的に監視していく予定です。
【RSウイルスの全ゲノム解析】
2024年4月から2025年3月までに日本で検出されたRSウイルスについて、次世代シーケンサーを使った全ゲノム解析と系統樹解析を行いました。全ゲノム解析ができた株は、A型で41件、B型で27件でした。
A型株は、A.D.1、A.D.1.4、A.D.1.6、A.D.3、A.D.5.1、A.D.5.2の各クレードに分類されました。日本では、特にA.D.3の検出頻度が高いことが特徴的でした。特定のクレードに対する地域的・季節的な偏りは見られませんでした。(図3)。
B型株は、B.D.E.1およびB.D.E.1.2のクレードに分類されました。B.D.E.1.2のクレードは1例のみであり、その株以外は、すべてB.D.E.1のクレードに属していました(図4)。
連絡先:新潟大学医歯学総合研究科 国際保健学分野
lab-pub[a]med.niigata-u.ac.jp([a]を@に変えてください。)