あいさつ|Greeting
当教室では、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症、RSウイルスなどの呼吸器ウイルスの実験室的解析、感染症疫学、ミャンマーなど東南アジアの国の感染症、そして地理情報システムを用いた社会疫学研究という異なる分野の研究を一つの教室で行っています。近年、感染症はボーダーレス化し、遠い国の感染症も、数ヶ月後には日本に大きな脅威となり得ます。ましてや、日本に近い、アジアの国の感染症は決して対岸の火事とは言えません。私は、この教室で、感染症のラボと疫学が融合する分野を切り開きたいと考えています。
私は、新潟大学医学部を卒業し、福島県会津若松市の病院で内科研修を行いました。その後、新潟大学第一内科(循環器分野)に入局し、循環器の臨床を行っていましたが、自分の限界を感じ、循環器の疫学を研究しようと、新潟大学公衆衛生学教室に入局しました。そこで、前任の鈴木宏教授の指導により、長らくの夢であった、国際協力の現場に立つことができました。国際協力機構(JICA)のザンビア国感染症コントロールプロジェクト(第2期)に、派遣されることになったのです。1年間ザンビアの首都ルサカのウイルス研究所で過ごし、その1年は日本とのあまりの違いに驚きの連続でした。派遣を通じて、様々な先生方との出会いも大きく、今日の私の礎になっています。
帰国後は、公衆衛生学教室で、インフルエンザワクチンによる発症予防効果(主に高齢者)、当時認可になったばかりの抗インフルエンザ剤の薬剤耐性株の解析に没頭しました。現在は、ラボで、国内外のインフルエンザやRSウイルスを集めて臨床解析や遺伝子シークエンスを行っており、さらにバイオインフォマティクスを駆使した解析に着手しています。
2003~2005年にSARSや高病原性トリインフルエンザ(A/H5N1)が発生した際に、東北大学微生物学教室の押谷仁教授のお声がけで、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局(WPRO)の短期専門家として、マニラやハノイに派遣されました。マニラのWPRO事務局は、イギリス、オーストラリアの専門家が多く、留学経験のない私にとってはWHOや欧米のロジックを知る大きなチャンスとなりました。A/H5N1発生の際は、以前、インフルエンザラボの立ち上げを手伝ったハノイの国立衛生疫学研究所(NIHE)に派遣となり、WHOとベトナム政府との駆け引きを目の当たりにしました。
国際交流としては、マレーシア国民大学(UKM)のシャムスル・アズハー・シャー先生が2003年に公衆衛生学教室にGISの研修で来られたのかきっかけで、マレーシアとの交流が始まりました。マレーシア国民大学と新潟大学医学部は、2008年に最初の学部間協定(MOU)を結び、2013年に二期目の更新をしました。MOU締結以来、多くのマレーシアの大学院生や学部生が、新潟大を訪れています。ミャンマーは、第二病理の内藤眞教授の医学交流が縁で、インフルエンザの研究を2005年からヤンゴンで開始しました。そのインフルエンザ研究が10年におよび、ついに2015年にAMED感染症国際展開戦略プログラム(J-GRID)の仲間入りを果たしました。新潟大学初の海外研究拠点として、ヤンゴンの国立衛生研究所(NHL)に、新潟大学ミャンマー感染症研究拠点(IDRC)を開設するにいたりました。今後も、ミャンマーをはじめとする東南アジアの感染症研究を続けたいと思っています。
さて、当教室はもともと「公衆衛生学教室」という伝統ある教室を引き継いでおり、2011年の改組で「国際保健学分野」に名称を変えました。学部教育は以前と同じ4年生の「公衆衛生」を担当しています。公衆衛生は、さまざまな分野をカバーしています。学部生のみなさん、そして全国の医学部、理系、文系の学部出身者のかたにぜひ、当教室の研究に参加いただければと思っています。特に、女性はライフスタイルのなかで、男性と同じ土俵で戦えなくなる場面がでてくることがあります。そのなかで強力な武器は、博士号を取ることではないかと思います。女性のかた、大歓迎ですので、ぜひお声がけください!
現在、以下の分野に興味のあるかたの修士・博士課程入学を募集しています。
新型コロナウイルス関係
*ミャンマーで流行るインフルエンザや新型コロナウイルスは日本のウイルスとどんな関係があるの(遺伝子系統地理学的解析)