interview

診断医15年目(新潟県出身・新潟大学医学部卒業 放射線診断専門医、核医学専門医)

question 放射線科(放射線診断科)を選んだきっかけは何ですか?

answer せっかく体全体について学んだのに、ひとつの分野に絞るのはもったいないと思ったのが原点ですね。放射線科は、患者さんの年齢、病気やけがの部位に関わらず、すべての臓器がみられ、身に付けた知識を全部使える科だと思いました。また、大学の6年間を通して放射線科の先生にお話を聞く中で取り組んでみようと気持ちが定まりました。

question 放射線診断科では普段どのような仕事をしていますか?

answer CT、MRIの画像診断を中心に、核医学検査や一部の治療も行っています。
緊急時の血管内治療の補助も行っています。
新規導入の検査などの調整もさせていただくことがあります。
大学の教員としての学生講義・実習指導や研修医・専攻医の指導も行います。

question 放射線診断科のやりがいを感じるのはどのようなときですか?

answer 依頼科の先生は直接身体診察などによって得られた情報をもとに画像を見ているので、それによって気付くこともあるかと思いますが、「客観的な立場での画像のダブルチェック機構として診断医がいる」というのが、若手のころに先輩から学んだ診断医の基本スタンスでした。

診断業務をメインとしていると、直接患者さんから感謝されるのは、造影剤などの注射が非常に入りにくい方にうまく注射が出来たときがほとんどですが、専門的な画像診断学の知識を使って局所および全体を客観的にみることで、依頼科の先生が気付いていない部分に気付くことができ、それが患者さんの適切な治療につながったことが後々確認できたとき、「良かったなぁ」と思います。

question 放射線診断科のワークライフバランスについてどう思いますか?

answer 平日日勤帯は休む間もなく、CT/MRIなどの画像検査が行われ、それが年々増加しています。この検査を放射線技師や看護師などコメディカルスタッフと協力して円滑に進めながら、大量の診断報告書を作成し続けているので、日中業務は多忙です。
夜間・休日は拘束や各種業務による多少の残業を除き、日中のような多忙さはなく、仕事のメリハリがしっかりとしている科だと思います。

question 医学生・研修医にむけたメッセージをお願いします。

answer 「画像診断はAIにとってかわられ、診断医の仕事はなくなるのでは」と間違った認識がはびこっています。AIは元とするデータベースの質と量に左右されますが、この基盤が変わるだけで全く役に立たないものになることもあります。
AIが得意なのは単純作業です。年々増えていく多量の画像検査から単純な異常を検出するのは得意分野ですし、そこは人力では及ぶものではありません。しかし、病変を見つけた後の判断という段階で、ごく単純なものを除いて、AIでは正確な評価ができません。その判断にはやはり放射線診断医の力が必要となります。AI単独や放射線科単独よりAI+放射線診断医で成績が向上します。AIには単純作業をどんどんやって我々の負担を軽減してほしい。AIは我々の仕事を奪うものではなく、今後の診断医のパートナーとなる存在なのです。

診断医の仕事は、技術進歩に伴って画像量は増えていますし、疾病概念の変化に伴って診断基準も変わるので、知識のアップデートが欠かせず、忙しい毎日です。
画像技術の進歩に伴い、現在の診療では画像診断というものが欠かせないものとなってきています。幅広く診療科にまたがる知識や経験をもとに診療に貢献するやりがいのある科ですよ。

卒後5年以内(新潟県出身・県外大学医学科卒業 放射線科専攻医)

question 放射線科(放射線診断科)を選んだきっかけは何ですか?

answer 医学生の時の講義で興味を持ちました。手技に依存しない、考えることが主体の診療科という方向で考えており、放射線診断科もその1つだと思いました。初期研修でローテーションすると、画像診断のやりがいを感じました。全身に対して、超音波、X線、CT、MRI、核医学と様々なモダリティがあり、平たい表現ですが奥が深いと感じました。医学生・研修医の際に「AIにとってかわられる」とよく言われましたが、医師のみやAIのみではなく、医師とAIの組み合わせが望ましいと思っています。また放射線診断科に限りませんが、人間の力を過小評価してはいけないと思っています。医学生の頃から非常に興味があり、初期研修のローテーションを経て、放射線診断科にしました。

question 放射線診断科では普段どのような仕事をしていますか?

answer 放射線診断科の中心はCT・MRIの読影です。超音波・CT・MRI・核医学・IVRの検査当番を行い、読影します。検査当番・読影に関して、多くを指導医のチェックの下で行っています。業務という側面に加え、専攻研修という側面があるので、症例数や自分自身で重点的に研修したい分野も考慮したスケジュールになっています。

question 放射線診断科のやりがいを感じるのはどのようなときですか?

answer 専攻医として研修していること、経験を積んでいることにやりがいを感じます。放射線科専門医・放射線診断専門医に向かって少しずつ前進していると感じます。初期研修を修了した医師として、独立して行う業務にもやりがいを感じます。検査当番・読影の難しさと同時にやりがいを感じながら日々を過ごしています。

question 放射線診断科のワークライフバランスについてどう思いますか?

answer 病院にいる間といない間の差はあります。日本は検査機器の台数、検査件数が世界トップクラスであるにも関わらず、放射線科医が少ないため、病院にいる間は忙しいです。また、コメディカルスタッフの皆様に尽力していただいていますが、医師が行った方が良い業務、医師のみが行うことのできる業務があり、やりがいを感じながらも忙しくはあります。病院にいない間ですが、医師としての当番はあるものの比較的落ち着いて生活できていると思います。入院中の患者さん(IVR症例)に関しても、主治医制ではなくチーム制にしています。院内にいる医師が対応しているため、平日日中午後に市中病院での業務の場合はその市中病院から帰宅しています。

question 医学生・研修医にむけたメッセージをお願いします。

answer 1人でも多くの医学生・研修医が新潟県内で初期研修・専攻研修をしてくださることを切に願います。新潟県の医師不足を強く感じていて、1人1人が貴重な存在です。加えて放射線科の専攻医になっていただけると非常に嬉しいですし、大歓迎です。放射線科はやりがいのある科だと思っていて、独りよがりな考えではないかと思うこともありますが、JCR(日本放射線科専門医会・医会)の研修医・医学生のための放射線科セミナーを思い出すと、客観的にもやりがいのある科だと思います。若手としての悩みもありますが、放射線科研修読本(編著るな)を読み、皆が通る道だと思っています。放射線科自体の幅が広いですし、放射線科医の人生も様々ですから、とてもおすすめです。放射線科という枠組みで考えて、手技に関しては診断科のIVRがあり、外来に関しては治療科があります。放射線科を専攻し始めてから診断科、治療科を選ぶことができます。専攻開始前は診断志望だったが治療医になった先生、逆に治療志望だったが診断医になった先生は少なくないです。とにかく、皆さんに会える時を楽しみにしています。

平成5年卒・放射線治療専門医

question 放射線科(放射線治療科)を選んだきっかけは何ですか?

answer 手術では治療出来ない手術適応外のⅢ期の肺癌が放射線治療で完治した症例の経過を画像診断医だった頃に目の当たりにしたから。さらに当時診断医として勤務していた病院に新規で放射線治療装置を導入することが決まったため。

question 放射線治療科では普段どのような仕事をしていますか?

answer 放射線治療新患の説明と同意および診察
放射線治療計画業務
放射線治療終了後の定期経過観察外来
キャンサーボード検討会管理および出席と放射線治療医としての発言
学生講義・実習指導
研修医指導

question 放射線治療科のやりがいを感じるのはどのようなときですか?

answer 根治見込みが半数以下の癌患者さんの放射線治療後5~10年後に完治を見届けることが出来、その後長期間再発がない状態で外来通院を続けている患者さんの診療時。

question 放射線治療科のワークライフバランスについてどう思いますか?

answer 平日日勤帯においては多忙を極めており、仕事量の波の変動が激しいので、業務量の自己管理が求められる。時間外に業務がはみ出る(残業)ことも多々あるが、夜間や休日の拘束以外の時間は比較的確保できている。また、拘束時間帯にも呼び出しを受けることはほとんどない。

question 医学生・研修医にむけたメッセージをお願いします。

answer 悪性腫瘍は日本人の死亡原因の上位でありますが、現在の医療技術において薬物治療で完治出来る癌は限られています。根治治療の手段としての放射線治療は外科治療と同様に需要が大きいのですが、外科系医師数に比較して放射線治療専門医数は不足しており、十分な放射線医療を提供できていないのが我が国の現実です。対応する大部分の疾患は癌に限定されますが、放射線医療技術の進歩とともに長期間(定年以降も)癌の臨床診療に直接携わることができる数少ない診療科です。物理や数学が得意でなくてもスマホが扱える能力があり、画像診断の経験を積めば治療計画業務は出来るようになります。癌の根治治療に深く介入することを医師としてのライフワークとして考えたい場合はお勧めできる診療科です。

平成11年卒・放射線治療専門医

question 放射線科(放射線治療科)を選んだきっかけは何ですか?

answer もともと癌治療に興味があり、卒後は都立病院の一般外科の研修医になりました。しかし、研修の終わりころには、外科医の仕事と自分の人生両方を充実させるのは難しいと感じていました。そんな時、担当していた患者さんに付き添って放射線治療を見学したことがきっかけで、いきいきと働く放射線治療科の先生に出会いました。癌治療に携われて、やりがいもあり、ライフワークバランスもとれる、これしかない!と選びました。

question 放射線治療科では普段どのような仕事をしていますか?

answer 放射線治療の対象となる患者さんは、ほとんどが他科からの紹介です。主治医の先生とコミュニケーションをとりながら、治療の適応や適切な治療方針を考えます。初診時には患者さんに放射線治療の方法や起こりうる副作用を説明し、患者さんとともに治療方針を決定します。その後治療計画用のCTを撮影し、コンピューター上でCTに病変や正常臓器の輪郭を描いて、標的へ放射線を当てる範囲、角度を決め、放射線線量分布図を作成します。この治療計画が外科でいえば手術と同じでとても重要です。放射線治療の場合、病変の周辺の正常臓器にも放射線がかかると影響が出るので、いかに病変にしっかり高線量をあてて、周辺の臓器の線量は減らすか、日々格闘しています。
放射線治療中は副作用に対しての処方等を行い、患者さんが治療を完遂できるようサポートします。治療後は放射線治療による長期間経過後の副作用が出ていないか、経過観察します。

question 放射線治療科のやりがいを感じるのはどのようなときですか?

answer 根治的な治療が難しいかもしれないと思われる困難な症例の治療計画がうまく作成できた時。
スタッフ(放射線治療医、放射線技師、医学物理士、看護師)がチーム一丸となって一つのことに取り組めていると感じる時。
放射線治療によって腫瘍の縮小や症状の改善が見られ、患者さんが喜んでいたとき。

question 放射線治療科のワークライフバランスについてどう思いますか?

answer 施設によって違いますが、日勤帯で放射線治療業務は大体終了するので、夜間まで病院にいなければならないことはほとんどないと思います。日中忙しくて治療計画を立てる時間がないこともありますが、3児の母でもある私は夜に仕事を回すのは難しいので、翌日に仕事を回すか、土日の日中に時間を作ったりしていました。自分で時間をコントロールできるのが放射線治療科の良いところだと思います。子供が小さいうちはパートタイム放射線治療医として働き、子供が成長して手がかからなくなった現在は、一般病院で常勤医として働いています。体力的にも長く続けられる仕事だと思います。

question 医学生・研修医にむけたメッセージをお願いします。

answer 放射線治療はあらゆる臓器の癌が治療の対象となり、放射線物理学、放射線生物学の分野も日々進歩しています。臨床のみならず、基礎的研究についても間口が広く、自分の興味ある分野を見つけられると思います。癌の治療をしたい方はもちろん、いろいろな分野に興味があって行先に悩んでいる方、コンピューターいじりが好きな方、ライフワークバランスを求める方は是非放射線科も選択肢に加えていただき、見学に来てください。女性医師にもお勧めです。子育て中でも仕事の内容は変えず、量を調節することで、やりがいのある仕事を長く続けることができます。新潟県の放射線治療医不足は危機的状況です。あなたが、新潟県の医療を救うかけがえのない存在になってみませんか。

平成25年卒・放射線治療専門医

question 放射線科(放射線治療科)を選んだきっかけは何ですか?

answer 精密機械やITにも興味があり、患者と向き合う時間と放射線治療計画のようにじっくり考えて一人で作業する時間が自分に合うかなと思ったため。

question 放射線治療科では普段どのような仕事をしていますか?

answer 診療においては診察と放射線治療計画を主に。
半分は患者と向き合い、残りの半分はモニター越しに病変と対峙。
大学なので研究や教育も怠らず。

question 放射線治療科のやりがいを感じるのはどのようなときですか?

answer あらゆる年代・あらゆる臓器の疾患(9割以上が悪性腫瘍)に対して、他科や他職種と連携しながら根治治療に携わることができる。

question 放射線治療科のワークライフバランスについてどう思いますか?

answer 放射線治療計画を時間外にやることもあるが、入院もRI治療などに限られており、緊急で呼ばれることはほぼない。状況にもよるが柔軟に休みは取りやすい。

question 医学生・研修医にむけたメッセージをお願いします。

answer 幅広く長期的なビジョンをもって、よく学びよく遊べ。

平成25年卒・放射線治療専門医

question 放射線科(放射線治療科)を選んだきっかけは何ですか?

answer 最先端の技術を使って診療していくことに魅力を感じたからです。
昔から電子機器が好きで、コンピューターを扱うことに特に抵抗はありませんでした。
呼吸器内科、小児科、眼科あたりと迷いましたが、学生実習やローテートを行い、自分の性格や興味にあった雰囲気と感じましたので放射線科にしました。
治療計画などは自分のペースで仕事を行えるのも魅力です。
放射線科をローテートしたときに、当時の上の先生が言っていた「できる放射線科医がいるとその病院のレベルは確実に向上する」という言葉はとても印象に残っています。

question 放射線治療科では普段どのような仕事をしていますか?

answer さまざまな分野の外照射を担当するほか、大学院の研究テーマが「前立腺癌の高線量率組織内照射と強度変調放射線治療の比較」に関するものだったこともあり、前立腺や子宮頸癌の小線源治療も精力的に行っています。

question 放射線治療科のやりがいを感じるのはどのようなときですか?

answer 放射線治療により腫瘍が縮小したり、緩和照射により症状が改善したときなどに、放射線治療の力を実感するとともに、やりがいを感じます。他の科の先生が照射を行うことはできませんから、そこに放射線治療科のアイデンティティがあります。
また、子宮頸癌の小線源治療では手技を伴うことと、治療前から治療中、治療後まで病変がダイナミックに縮小していく経過をみることができるので、「自分の手で癌を治している」という実感を持ちやすく、とてもやりがいがあります。おすすめです。

question 放射線治療科のワークライフバランスについてどう思いますか?

answer 放射線治療科は日中は医師不足ということもあり忙しいですが、自分のプライベートの時間も確保できます。当院の場合、夜間・休日の日当直はなくオンコール番による拘束制ですし、深夜に電話がかかってくることや呼び出されるケースは稀です。自分の趣味や買い物、旅行など家族との時間ももつことができます。

question 医学生・研修医にむけたメッセージをお願いします。

answer 現在、新潟県の放射線治療科医は明らかに不足しており、今後の高齢化で体への負担が少なく治療できる放射線治療の需要はまだまだ見込まれます。患者さんにやさしく接しながら、最新技術を駆使し新潟県の放射線治療に貢献するとともに、自分の医師としてのスキルを放射線治療科で磨いてみませんか。