大橋 瑠子
新潟大学大学院 医歯学総合研究科
分子・診断病理学分野 分子・病態病理学分野
新潟大学医学部 臨床病理学分野 教授
2024年3月1日付けで新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理学分野、医学部病理学分野 教授、新潟大学医歯学総合病院病理部・病理診断科 病理部長・病理診断科長を拝命いたしました。また、4月1日より新潟大学医学部研究推進センター 病理組織標本部門 部門長を併任しております。
病理学教室は1911年4月6日に川村麟也先生を初代教授として開設され、100年以上の長い歴史を有しています。1976年4月から病理学第一教室と病理学第二教室に分かれ、さらに2015年に病理学講座の再編に伴い、病理学第二教室は基礎研究に特化した分子病理学分野、病理学第一教室を母体とし病理診断に特化した臨床病理学分野と名称変更するとともに明確な役割分担がなされました。
当教室はこれまで病理医に限らず多くの人材を新潟県のみならず全国に向けて輩出してきました。その伝統を継承し、新たな視点や病理診断に対する時代のニーズに柔軟に対応しながら、さらに教室を発展させるべく教室員一丸となって努力してまいります。
臨床に総合診療医general practitionerがあるように、病理にも一般病理医general pathologistの概念があります。様々解釈がありますが、私は、全科の臓器横断的な病理学的知識を有し、臨床経過や生活歴、遺伝子学的背景などを含め患者さんを総合的・全人的に診た病理診断ができる病理医を指すと考えています。一方で、臨床各科が臓器別に高度に専門化した現在では、病理医も臓器別に専門性の高い病理診断能力が求められています。がんゲノム医療が実装され、純粋に形態学的な病理診断のみならず分子病理学的診断手法の併用や薬剤投与適応決定のためのコンパニオン診断、遺伝子検査を実施する機会が増加し、病理医の役割と需要はますます高まっています。
当教室では、まずgeneral pathologistであること、その上で、最先端の病理診断を提供可能な1~数分野の専門領域を有することを目指し病理医育成を行っております。病理学教室同窓会・関連病院の先生方のご指導、ご支援のおかげで、さまざまなキャリアパスと、オール新潟で病理医を育成する体制が整っています。私が適切な病理診断のために重視してきたことが、臨床科と十分なコミュニケーションを取ることです。病理がチーム医療の一員として詳細な臨床情報を共有することにより、適切な病理診断と治療に至ることは時折経験され、そのような際に、病理医としてやりがいを感じます。教室の方針として、各臨床科との臨床・病理カンファレンスへの積極的参加を推進し、臨床と病理の連携を深め、臨床に即した円滑で的確な病理診断の実践と病理医の臨床知識強化を図ってまいります。そして各部門の生涯教育にも貢献し、診断精度向上に寄与していきたいと考えております。
当教室と病院病理部には、病理医だけでなく臨床検査技師、細胞検査士、事務職員と多職種が協力して業務に当たっています。出身大学、出身地、地域枠など様々なバックグラウンドの方が色々な働き方をして在籍しています。各職種・教室員それぞれの多様性と個性を活かしバランスの取れた業務分担を行い、働き方改革に対応した体制づくりを進めて参ります。また、全職種に専門技術向上・資格取得の支援、病理医には留学研修支援を行うことで人材育成を図り、質の高い病理診断と教育・研究の両立を目指します。
研究面では、腎癌、大腸癌など固形がんの臨床病理学的研究ならびにゲノム・オミクス研究をさらに発展させ、教室員一人一人の希望に応じて、また一人一人の個性を活かし伸ばす研究を進めていきたいと思います。一例一例の病理を丁寧に見ていくと、病理検体は実に沢山のことを教えてくれます。真摯に病理診断に取り組むことで、見えてくることがあります。病理、臨床、がんゲノムや分子生物学的観点から一例一例を丁寧にみる姿勢を大切にしながら、医学教育、病理診断と実臨床に直結する国際的な研究を展開し、新潟から世界へと発信し続けてまいりますとともに、病理組織標本部門における研究支援業務の充実を図り、本学の研究推進、研究力の向上に資することができるよう精一杯取り組んでまいりたいと考えております。
みんな違ってみんないい、の精神でこれからも人との縁を大切に、病理の観点から新潟の医療の質の向上と医学研究の発展に一層尽力して参ります。
今後ともご指導ご鞭撻の程、何卒宜しくお願い申し上げます。
そして、病理医に興味がある学生・研修医の皆さん、あるいは大学院生として病理の勉強や研究をしたいと思っている医師の皆さんは是非、当教室に気軽に声をおかけください。
一緒に楽しみながら新時代の病理学を創る仲間を当教室は歓迎いたします。