Youはどうして臨床病理へ?


『そういえば病理のことあまり知らないなあ・・・。』

『病理医もありかも・・・?』

『病理ってどんな感じなのかな?』

初期臨床研修中、いや、もしかしたら学生のときに、
ふと「病理」が頭をよぎったあなた、または現在進行形で検討中のあなたへ、
ベールに包まれている(?)「病理」について、
現在当教室に在籍している先生たちに、

「なぜここにいるのか?」
「病理学教室はどんなところなのか?」

などなど、生の声を聞きました。

【バックナンバー】

 第11回 中村真衣先生の場合
 第10回 佐藤 航先生の場合
 第9回 阿部達也先生の場合
 第8回 田口貴博先生の場合
 第7回 医学研究実習中の医学部3年生のKOさん、KAさんの場合(番外編)
 第6回 アレクセイ・アンネンコフ先生の場合
 第5回 加藤 卓先生の場合
 第4回 渡邉佳緒里先生の場合
 第3回 谷 優佑先生の場合
 第2回 福田 睦先生の場合
 第1回 近藤修平先生の場合

第12回 渡邉 沙緒里(わたなべ さおり)先生の場合


学生の頃は「この細胞は“悪い顔つき”をしているから癌ですね」と言われても理解できず、病理学は苦手でした

2018年新潟大学医学部卒業。上越市の新潟県立中央病院で2年間の初期研修の後、2020年4月から当教室に在籍中。出身は新潟県長岡市。

渡邉沙緒里先生


-病理医になろうと考え始めたのはいつ頃からですか?

初期研修2年目の9月に病理診断科を回ったときに、意外に面白く感じて自分の性格に合うかもと思ったのが最初です。


-その頃はどこに進もうと思っていたのですか?

そのときは麻酔科志望でした。病理学は苦手意識があり、進路としては考えてはいませんでした。けれども、初期研修中に病理診断に触れなければ、この先関わることはないだろうし、病理学がわかると面白いだろうと思いましたので、最後のチャンスと考え病理診断科での研修を決めました。


-学生の頃はどうして苦手だったのですか?

例えば、病理学の授業で「この細胞は“悪い顔つき“をしているから癌ですね」と先生がおっしゃることがありました。その“細胞の顔つき”が、そのとき勉強している知識と自分の中で結びつかなくて、病理学は難しくてよくわからないという印象でした。


-研修で「意外に面白くて自分の性格に合う」と思った点はどういうところですか?

研修では比較的診断しやすい胃のESD標本から診断を始めました。自分で診断する立場になってみると、学生のときによくわからないと感じた先生の言葉の意味が、感覚として理解できるようになりました。今まで分からなかったことが分かるようになっていく、見えなかったものが見えるようになっていくのが楽しく、病理を面白く感じるようになりました。

麻酔科は最悪を想定して綿密な準備を行い、現場では秒単位で迅速に対応することが求められます。初期研修で初心者だったせいもあるとは思いますが、緊急の場面では頭がフリーズしてしまうこともありました。

元々、じっくり考えることが好きなタイプで、机に座って勉強することは苦になりません。麻酔科の仕事もおもしろかったのですが、病理診断科で仕事をしていくうちに、病理診断科の方が自分の性格に合っていると感じました。


-そうなんですね。他にも病理を選択した理由はありますか?

初期研修中は夜間の呼び出しがとてもストレスでした。それで、病棟勤務がない、夜中に電話がかかってこない科を選ぼうと思いました。

病理診断科で働いているときは仕事のonとoffがはっきりしているのがとてもよくて、それも病理医を選んだ大きな理由の一つです。勤務時間においても、臨床医に比べるとかなりフレキシブルな働き方が可能なので、その点も魅力的でした。


-当教室に来てから1年経ちましたが、病理のお仕事はいかがですか?

地方病院と違い、大学に集まる症例は種類も多く難しいものが多いです。教室では(肉眼)所見会が毎週あり、自分が考えていたよりも肉眼所見から得られる情報が多く、先生方が多くのことを読み取っていることに最初は驚きました。

HE染色のガラス標本は色がとても綺麗ですよね。毎日こういう綺麗なものを見ることができるのはうれしいです。最近は消化管の標本を見ているときが一番落ち着きます。元々1人で黙々と作業するのが好きなので、検鏡は苦になりませんし、マッペの山が減ると快感です。

診断の数を重ねていくと、それまで見えていなかったものが少しずつ見えてきます。世界の解像度が上がるような感覚というか、とても面白いです。先輩の先生方がみえている世界は、私がみている景色と違うと思います。私もこれから経験を重ね、どんな世界が広がっていくのか楽しみです。


-どうもありがとうございました!

(インタビュー日 2021年5月14日)


インタビュー後記 聞き手 教室パート事務員 A子

渡邉先生は長岡市のご出身で、高校も長岡市の進学校です。インタビュアーのA子も長岡市出身です。渡邉先生のご実家は旧長岡市外ではありますが、私の認識では「そいが」(長岡市の方言)使用エリアに入っています。ところが、渡邉先生のお話では、高校生の時に周りで「がーがー」言っている人はいなかったし、親も自分も使わないという話に驚愕しました(まじかっ!!!って感じです)。関東の大学に進学し長岡に帰省したときに、駅で女子高生がガーガー言いながらおしゃべりしている姿を見たときに、方言いいわ~と思ったことを久しぶりに思い出しました。もう遠い昔の話です。


新潟大学医学部 臨床病理学分野は人材募集中です!見学を希望される医学部学生さんや研修医の先生は、総括医長の谷優佑までお気軽にご連絡ください。025-227-2096/メール tani@med.niigata-u.ac.jp

ページのトップへ戻る