Youはどうして臨床病理へ?


『そういえば病理のことあまり知らないなあ・・・。』

『病理医もありかも・・・?』

『病理ってどんな感じなのかな?』

初期臨床研修中、いや、もしかしたら学生のときに、
ふと「病理」が頭をよぎったあなた、または現在進行形で検討中のあなたへ、
ベールに包まれている(?)「病理」について、
現在当教室に在籍している先生たちに、

「なぜここにいるのか?」
「病理学教室はどんなところなのか?」

などなど、生の声を聞きました。

【バックナンバー】

 第4回 渡邉佳緒里先生の場合
 第3回 谷 優佑先生の場合
 第2回 福田 睦先生の場合
 第1回 近藤修平先生の場合

第5回 加藤 卓(かとう たかし)先生の場合


病理学を勉強するようになってから病気に対する理解が深まりました

卒業後は内科の研修医として4年間勤務する。その後、論文を書くために第一病理学教室に入局したことがきっかけとなり内科医から病理医に転向する。

加藤先生


-加藤先生は内科から転向されたとお聞きしました。その辺りの経緯を教えてください。

私が卒業したときは現在の初期研修制度が始まる少し前だったので、皆が卒業直後にどこかの医局に入局する形でした。私は第三内科(現消化器内科)に入局し、 研修医の1年目の前半は第三内科、後半は第一内科(当時)で研修をして、2年目と3年目は大学外の病院、4年目は大学病院でした。5年目になると当時は大学院生として病理学や生化学、ウイルス学などの基礎系の教室に入局し、そこで論文を書くことが一般的な流れになっていたので、同僚も皆それぞれ基礎の教室に入局しました。私は内視鏡をやりたいと考えていて、そのことを内科の先輩に相談したところ、それなら病理学の勉強をした方がよいとアドバイスされたので、第一病理学教室(当時)に入局したのが最初のきっかけです。

学生の時も内科医として病棟にいた時も、病理学には関心がなかったので、大学院生として当教室に来たとき当初も、そのままここに残るとは思ってもいませんでした。

ところが病理学教室に来てみると案外居心地がよくて、自分に向いていると感じました。椅子に一日中座っていても苦にならないし、人付き合いは臨床よりも少ないし、いつ呼び出されるかのストレスもありません。検体を顕微鏡でみることも、今まで見えなかったものが見えるという面白さを感じるようになりました。

もうずいぶん前の話なので、はっきりと覚えていない部分もありますが、こちらに来た2年目に、内科医から病理医に転向することを決めて第三内科の大学院生を辞めました。その後は当教室に籍を置いています。


-病理学を勉強するようになって何が変わりましたか?

私は内科医でしたので、内視鏡で細胞を取って、それを病理部に出して、良性か悪性かの診断結果を待つ立場でした。当時はその結果だけをみていたので、病理診断にはどのような作業工程があり、顕微鏡で組織をどのようにみて診断をしているのかをイメージしたことはありませんでした。臨床にいたときは病理医についてほとんど知りませんでした。

病理学教室に来てから、自分が生検したものがどのように扱われ、病理医は何を見て診断しているのかを知りました。病理学を勉強するようになってから、病気に対する理解は以前よりも深まりました。臨床医にとっても、自分が日常的に取り扱っているものが病理から見た場合どのような姿をしているのかを知ることはプラスになることだと今は考えています。


-自分が持っていた病理医のイメージと実際にやってみてどのような違いがありましたか?

漠然と臨床よりも基礎の方が楽なイメージを持っていましたが、そんなことは全然ありませんでした。診断はもちろんですが、大学職員としてやらなければならないことはたくさんあります。臨床とは異なり自宅でお風呂に入っているときも、寝るときも自分の身の周りからPHSを手放せない、いつ呼び出されるかわからないというストレスはありませんが、だからと言ってストレスがないわけではありません。科によってきつい部分が違うだけで、楽ということはないですね。


-臨床医から病理医に転向する人は珍しくありませんか?

私の知る範囲では当教室の先輩で2名います。お二人とも第三内科(当時)出身で、当教室に入局後そのまま病理医になり、現在は市内の病院で勤務されています。現在の教室員は学部生の時から病理を志望していた人と、臨床を目指していたものの初期研修中に当教室への入局を決めた人がほとんどで、臨床から大学院生として来られている先生はわずかです。私がこちらにきた頃は内科や外科から論文を書くために来ていた先生の方が多く、教室の雰囲気も少し今とは違っていました。

病理医を目指す若い人が増えたことはとてもうれしいことです。臨床を目指している学生や研修医の皆さんも、病理学の勉強をすることは病気の理解を深める貴重な経験になると思うので、ぜひ興味を持っていただきたいと思います。

(インタビュー日  2016年6月7日)


インタビュー後記 聞き手 教室パート事務員 A子

加藤先生は1日中椅子に座って顕微鏡を覗いていても苦にならないと言っていたけど、切り出しなど他の作業もあるので、座りっぱなしというわけではない。けれどもやはりメインは顕微鏡を覗くことだ。本ホームページにある病理標本ギャラリーをみても、私には何のことやらさっぱりわからない。病理医がみている世界は病理医にしか判読できない世界だ。目に見えない世界を顕微鏡の力を借りて見ている人達だ。ちょっとすごいかも。


新潟大学医学部 臨床病理学分野は人材募集中です!見学を希望される医学部学生さんや研修医の先生は、総括医長の高村佳緒里までお気軽にご連絡ください。025-227-2096/メール takamura@med.niigata-u.ac.jp)

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