放射線診断学

研究テーマ

  • 肺腫瘍の画像診断に関する研究
    肺癌を中心に、臨床・病理・画像所見の対比、経時変化、画像所見と治療法選択との関連、等につき幅広く研究を行っている。
  • 循環器疾患への新たな画像撮像法の応用に関する研究
  • 種々のCT、MRI撮影法の応用に関する研究
  • 画像診断手技を用いた種々の治療法に関する研究
  • 核医学検査による画像診断と定量法の研究
  • 中枢神経疾患の画像診断に関する研究
    高空間分解能MRIなどによって腫瘍その他の疾患の画像上の特徴を明らかにし、質的診断の向上を図る。

研究の成果

[研究テーマ] 肺腫瘍の画像診断に関する研究
血清CEA(癌胎児性抗原)高値は肺腺癌の予後不良因子と報告されている。しかしながらCEA高値に関連する腺癌のCT所見は十分検討されていない。そこで我々は、病理病期I期肺腺癌を対象として原発巣のCT所見と術前血清CEA値との関連を検討した。ロジスティック回帰分析より、腫瘍消失率(縦隔条件の腫瘍面積に対する肺野条件の腫瘍面積)の減少と、腫瘍周囲のブラや蜂窩肺の存在が術前CEA高値に有意に関連していた。これらのCT所見は年齢、性別、喫煙指数(Brinkman指数)で補正した後も統計学的に有意であった。これらの結果より、腫瘍消失率の減少と周囲のブラや蜂窩肺の存在は、早期肺腺癌における予後不良な指標であろうと推測された。このような腫瘍が術後に再発を来しやすいか否かについてさらに検討する必要がある(Clinical Radiology 2014; 69(6): 559-66)。

図1図1


[研究テーマ] 循環器疾患への新たな画像撮像法の応用に関する研究
肺塞栓症の診断において、最も推奨とされる画像検査は胸部造影CT。近年、Dual Energyの血流イメージングである、Lung Perfusion Blood Volume(以下Lung PBV)が活用されている。Dual Energy イメージングは、異なる2種類の管電圧で同時に撮影し、得られるCT値の差を利用してさまざまな物質(骨・造影剤など)を弁別する技術。Lung PBVは、Dual energy スキャンを行って肺内のヨード情報を抽出し、ヨード分布を表示した画像=ヨードmapを作成して、それを元のCT angiography(以下CTA)画像とfusionしたもの。非閉塞性の肺塞栓の場合にはLung PBVにおける血流低下(ヨードの潅流低下)が明らかでないことがある。当教室では区域枝または亜区域枝の肺塞栓病変をCTA所見から閉塞群と非閉塞群に分け、血流低下の違いについて視覚的かつ定量的に比較検討した。すると非閉塞病変では病変より末梢の血流が正常肺と同程度に保たれることが判明した。肺塞栓症の画像診断ではCTAで血栓を指摘することが本質的だが、肺血流の評価はLung PBVで行う必要がある。(European Journal of Radiology 83(12):2260-67, 2014)

図2図2


[研究テーマ] CT angiographyのReverse Attenuation Gradient SignはTypeIIエンドリークとその他のエンドリークとを鑑別する
近年大動脈瘤の治療でステントグラフト内挿術が行われるようになってきている。ステントグラフト内挿術の最大の問題はエンドリークであり、CTAでエンドリークのType分類を行うことが、追加治療には重要である。Reverse Attenuation Gradient Signは血管の遠位側のCT値が高く、中枢側のCT値が低い所見である。我々はこの所見はエンドリークに関与する分枝が逆流していることを示しているかもしれないと考え、エンドリークと連続する血管のCTAでのCT値の減衰と侵襲的血管造影での血流方向との相関を評価した。
CTAはCT値が中枢側>末梢側のものをAnterograde attenuation gradient(AAG-CTA)、中枢側≒末梢側をEquivocal gradient、中枢側<末梢側をReverse attenuation gradient(RAG-CTA)と評価した。また侵襲的血管造影は血流方向により2段階に評価。動脈瘤から離れる血流はAnterograde flow in invasive angiography(AF-IA)、動脈瘤に向かう血流はRetrograde flow in invasive angiography(RF-IA)と判断した。
CTAで疑われた全15エンドリークが侵襲的血管造影で確認できた。RAG-CTA signを示した血管は示さなかった血管より有意に血管造影で逆流を認めた(89% [8 of 9] vs 17% [1 of 6]; P=0.023)。RAG-CTA signはステントグラフト後のTypeⅡエンドリークとその他のエンドリークとを鑑別するのに有用となる可能性がある。

図3図3