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感染症学会:ゾフルーザの臨床効果と変異株の出現について発表(2019年4月4日 名古屋)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4月4日、ミャンマーから名古屋に直行し、感染症学会の教育講演(英語)でインフルエンザについて発表しました。

内容としては、今シーズンに国内の先生方にご協力をいただいて調査した、抗インフルエンザ剤の効果と、薬剤耐性インフルエンザウイルスの出現頻度についてです。

 

以下が主な結果です。

●バロキサビルとオセルタミビルの解熱効果についての比較

20歳以下のインフルエンザ症例132例について、

89名にバロキサビル(ゾフルーザ)(A/H1pdm感染37名,A/H3N2感染52名)

43名にオセルタミビル(タミフル)(A/H1pdmが18名,A/H3が25名)

を投与したところ、バロキサビル群とオセルタミビル群で、解熱時間に差は無かった。

 

●バロキサビル投与後6症例にPA蛋白38位に変異がみられた。

初診と、バロキサビルの投与後の3~6日後に再受診し、合計2回検体をとっています。その2回目の検体に38位変異を生じている症例がいました。

38位の変異は、バロキサビルに対して感受性低下(耐性)になることが報告されている変異です。

内訳は

I38T変異4名(A/H1pdmの2名とA/H3N2の2名)

I38M変異1名(A/ H3N2)

I38S変異1名(A/H1pdm)

でした。これらの症例については、すべてバロキサビル投与から48時間以内に解熱していました。

 

●変異株の出現頻度

バロキサビルを投与された症例を分母にすると38位変異の出現頻度は以下になります。

A/H1N1pdm 3/37=8.1%

A/H3N2  3/33=9.1%

 

 

しかし、同じ耐性株の数でも、2回目の再診時でウイルスが検出された人を分母にすると変異株の出現頻度は

A/H1N1pdm  3/8=37.5%

A/H3N2  3/9=33.3%

となります。

分母が少ない理由は、2回目の検体では、自然経過と薬の効果でウイルスが少なくなっており、ウイルスが検出できない症例が7~8割いるためです。

その他、E23Kという新しい変異株もバロキサビル投与後のA/H1N1pdm 1例にみつかっていますが、まだ耐性かどうか確認が済んでおりません。

 

以上が、4月初めに感染症学会で発表した内容になります。

 

なお、検査をすすめた結果、新たに38位変異株も数例確認されています。

まだ確認をしている部分があるため詳細については、今後発表いたします。

 

ゾフルーザについては、ウイルス学的に38位変異株が耐性であるのは確かですが、臨床的に経過が延びるのかどうか(臨床的に耐性)、それを確認するのが重要なことだと思います。

 

by 齋藤玲子、長田秀和

 

 

2019-04-25 | Posted in What’s New, ブログ|BlogComments Closed