新潟大学大学院医歯学総合研究科

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ヒト腎臓病の病因や病態を解明し、新たな治療法を開発し、
次世代の研究者と医療人を育成に取り組みます

腎・膠原病内科学分野
Division of Clinical Nephrology and Rheumatology

生活習慣病から
稀少難治性腎障害の克服を目指した研究と人材育成

成田一衛教授

腎・膠原病内科学分野 教授


成田 一衛

 腎・膠原病内科学の前身、内科学第二教室は、新潟大学医学部(官立医学専門学校)の創立(1910(明治43)年)と同時に開講されました。以来、沢田敬義、柴田経一郎、桂重鴻、木下康民、荒川正昭、下條文武の6名の歴代教授のもと、教室で学んだ多くの人材が全国の医育機関・医療現場で活躍しています。2009年5月から私が教授を務め、2015年2月からは呼吸器・感染症内科とともに腎・膠原病内科学教室として新たなスタートを切りました。さらに2016年4月、新設された国内唯一の腎研究センターの臨床研究部門を併任担当し現在に至ります。

 腎・膠原病内科学教室は、一貫して“臨床を第一にする”基本理念とともに、革新的な挑戦により“医学の進歩に貢献する”という伝統を受け継いできました。1954年、本邦初のヒト腎生検を行い、腎組織病理分類に基づく治療を可能にしました。現在まで65余年で蓄積された1万8千件を超える病理組織所見を有する詳細な臨床データは、国内最大規模であり、近年のゲノミクス,プロテオミクス解析などに活用され、新たな成果を挙げています。腎不全医療において、1965年国内でいち早く血液透析治療を開始し、全国への普及に貢献しました。1985年、透析アミロイド−シスの原因蛋白を同定し、治療法の開発をリードし、現在も新たな血液浄化療法の開発に取り組んでいます。このように、その時々の最先端医学・医療において、世界をリードする業績を挙げてきました。しかも、それら学術的業績が、単なる学問としての医学ではなく、臨床に根づき臨床に還元できるものであり、さらにそれらの成果として人材育成をも果たしてきた点は特筆すべきことです。私達はこの伝統を守りたいと思います。現在も世界をリードする基礎的研究とともに、臨床研究においても難治性疾患政策研究事業等の国内の代表施設の一つとして腎臓病の克服に向けて努力を続けています。

 大学・大学病院に対する社会からの要請は、多様化し高度化しています。私達自身も、時代や環境に合わせた変革と成長を遂げることで、自らの重要な使命である社会貢献、人材育成、研究開発の機能をさらに充実させることが可能となります。これからも腎研究センター基礎研究部門、トランスレーショナルリサーチ部門との連携を強化し、腎・膠原病領域の新たな歴史を作る挑戦を続けていきます。

成田 一衛 教授 プロフィール
1983年3月 新潟大学医学部医学科 卒業
1985年5月 新潟大学医学部 第二内科 医員
1991年7月 アメリカ合衆国ユタ大学 腎臓病部門 研究員
1995年5月 新潟大学医学部 第二内科 助手
2002年11月 新潟大学大学院医歯学総合研究科 第二内科 助教授※
(※2007年から「准教授」に改称)
2009年5月 新潟大学医学部 腎・膠原病内科学(第二内科) 教授
主な学会活動
日本内科学会(評議員、信越支部長)、日本腎臓学会(理事、学会誌編集委員長)、日本高血圧学会(評議員)、日本透析医学会(評議員)、日本糖尿病学会、日本人類遺伝学会、日本急性血液浄化学会、日本リウマチ学会、日本心身医学会(代議員)日本老年医学会、日本高血圧協会、国際腎臓学会、アメリカ腎臓学会 など

腎・膠原病内科学分野

1. IgA腎症の発症における扁桃細菌叢と粘膜免疫応答

 IgA腎症は腎糸球体にIgA分子の沈着と補体活性化を伴うメサンギウム増殖性糸球体腎炎で、原因は遺伝背景と環境因子による複合的な要因が想定されています。IgA腎症は上気道感染に伴い尿所見が増悪することから、環境要因として上気道粘膜細菌叢の関与が強く疑われています。なかでも口蓋扁桃が注目され、近年はIgA腎症の治療として口蓋扁桃摘出が有効であることが臨床研究で示されました。病態生理として扁桃深部陰窩に存在する細菌叢にIgA腎症特異的な細菌群集が存在するか、細菌ゲノムの解析を進めているとともに、細菌に対するIgA免疫反応の解析を行っています。

IgA腎症患者の扁桃細菌叢は嫌気性細菌で特徴付けられる

2. 家族性IgA腎症の原因遺伝子探索

 IgA腎症には5-10%の頻度で家族内発症が認められ、IgA腎症の発症には遺伝背景が関与していると考えられます。腎・膠原病内科では国内の施設と共同でIgA腎症家系の収集を進めており、現在までに30家系以上の網羅的ゲノム解析が行われました。IgA腎症の発症機序に影響する遺伝子変異・バリアントを見出し、データベース化を進めています。家族性IgA腎症の原因としてこれらの遺伝背景と環境要因(細菌叢)の相互作用の解明を目指しています。

3. 抗リボゾームP蛋白抗体による臓器障害

 抗リボゾームP蛋白抗体は全身性エリテマトーデス患者の一部に認められる自己抗体の一種であり、ループス精神病やループス腎炎、自己免疫性肝炎との関連が報告されています。マウス抗リボゾームP蛋白モノクローナル抗体をマウスに投与することで、自発性の低下や不安症状などの精神障害が引き起こされることを明らかにしました。抗リボゾームP抗体はマウス脳内には沈着せず、末梢での免疫活性化による血中および脳内のトリプトファン濃度の低下によって精神障害が引き起こされ、トリプトファンの補充により精神障害の改善を認めることが明らかになりました。この免疫活性化機序は免疫グロブリンIgGに対する受容体であるFcγ受容体を介し、炎症性サイトカインであるTNF-αおよびIL-6の存在が必須であることを見出し、さらに抗TNF-α抗体、ステロイド、あるいは大量免疫グロブリンによって、抗リボゾームP抗体による精神障害に対する治療効果を示しました。ヒトにおいても抗リボゾームP抗体陽性患者および神経精神症状を認める全身性エリテマトーデス患者では、血中トリプトファン濃度が低下していることを明らかにしました(図)。

全身性エリテマトーデス患者の血中トリプトファン濃度は、抗リボゾームP抗体陽性患者(Anti-P(+))および神経精神症状を認める患者(NPSLE(+))で低下している。抗dsDNA抗体の有無には関係しない。
*P < 0.05, **P < 0.01, NS, not significant.

4. 尿毒症病態研究

 腎機能の低下に伴って出現する様々な病態を「尿毒症」といいます。その病態は腎臓病で体内に蓄積する分子群(ウレミックトキシン)が組織に作用することで心血管病、骨関節疾患などが増悪します。

(1) 蛋白結合ウレミックトキシン

 血中でアルブミンなどの蛋白質に結合しやすい分子群は血液透析で除去されにくく、組織への毒性が強いです。私たちはそれらが生命予後、心血管イベントや感染症など種々の全身疾患に与える影響や蛋白質の結合に影響する生態環境について検討しています。

(2) 透析アミロイドーシス

 透析アミロドーシスはβ₂-ミクログロブリンを前駆蛋白質とするアミロイド線維が沈着することで種々の骨関節障害を来します。現在、病理組織と試験管内アミロイド線維形成反応を組み合わせて発症機序の解明を目指しています(図)。

(3) 骨ミネラル代謝異常

 腎臓病患者では骨ミネラル代謝異常が起こり、骨折や心血管病の頻度が増加します。私たちはその病態に影響するレニン-アンギオテンシン系やリン酸の形態について検討しています。

(4) 血液浄化療法

 血液透析で使用する透析膜やβ₂-ミクログロブリン吸着カラムの機器性能評価を行っています(図)。

アミロイド組織と血液浄化器が吸着する蛋白質の相同性

5. CKDの疫学研究:
保存期から透析期まで、臨床視点から公衆衛生学的視点まで

 高齢化が進む我が国において、慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)対策は喫緊の課題です。加齢とともにCKD患者は増加し、CKDは心血管病などの様々な合併症と関連し、死亡のリスクを高めるからです。そのため、CKDの発症や重症化、さらには合併症に関連する要因の研究、ならびに、それらの発症率や死亡率の記述疫学研究など、臨床に還元できる研究や政策立案に役立てる研究を行っています。CKDの発症予防から、保存期CKD、そして、透析期CKDと、CKDの全ステージを研究対象とし、研究の視点も臨床的なものから公衆衛生学的なものまで幅広く行っています。日頃、診療で疑問に思ったこと、知りたいと思うことなどが、研究の発端になっているため、他の人があまりやらない(世間ではあまり流行ってはいない)テーマもありますが、常に意識していることは、臨床現場や政策への還元です。疫学や生物統計学の手法を用いることで、目の前にある数字から、そこにある事実を「見える化」することにより、臨床現場あるいは政策に役立つ情報を発信することを意識して、CKDの疫学研究を幅広く、広い視点で、行っています。

6. 新潟県魚沼圏域住民/健診ベースの前向きコホート研究

 高血圧、慢性腎臓病をはじめとした生活習慣病は、身体活動や食習慣などの環境要因と、個人の持つ遺伝的要因が関与していることが知られています。私たちは魚沼地域での慢性腎臓病や脳血管疾患、さらにサルコペニア、フレイル などの発症に関連する生体特性を探るため、魚沼市、南魚沼市の地域住民を対象としたコホート調査を行っています。2012年〜2014年にベースライン調査として、40歳以上の住民に対し、生活習慣に関するアンケート調査と血液、尿の検体収集を行いました。使用した質問票は食品、嗜好品の摂取状況や運動習慣、生活環境、健康状態などの詳細な情報を得ることができます。現在、研究同意者40,764人の疾病発生、死亡の追跡を行っており、ベースラインから5年経過した時点での生活習慣に関する再調査も行いました。本研究にて得られたエビデンスを魚沼地域から発信し、健康寿命延伸への寄与を目指しています。

Study Design and Baseline Profiles of Participants in the Uonuma CKD Cohort Study in Niigata, Japan. Keiko Kabasawa, Junta Tanaka, Kazutoshi Nakamura, Yumi Ito, Kinya Yoshida, Ribeka Takachi, Norie Sawada, Shoichiro Tsugane, Ichiei Narita: J Epidemiol 2020;30(4):170-176

調査方法のシェーマ

7. 膠原病に関する研究

 リウマチ膠原病グループは、関節リウマチや膠原病に関する臨床研究を行っています。関節リウマチに伴う反応性アミロイドーシスに生物学的製剤が有効であり(黒田毅ら. J Rheumatol, 2012)、関節リウマチ患者に伴うAAアミロイドーシスは、原発性のALアミロイドーシスに比して、アミロイド沈着領域量が腎機能と相関し、腎糸球体のメサンギウム領域、基底膜、血管への沈着パターンが異なることを報告しました(黒田毅ら. Amyloid, 2017. 図)。また、全身性エリテマトーデスに伴う特発性大腿骨頭壊死症では、高中性脂肪血症がリスク因子であることを明らかにしました(黒田毅ら. Clin Rheumatol, 2015)。

 長期に副腎皮質ステロイドとビスホスホネートを内服している膠原病患者では非定型大腿骨折のリスクが高いことを報告しています。(佐藤弘恵ら. Osteoporosis Int, 2016, 2017, 2020)。

 他にもループス腎炎やANCA関連血管炎の尿中白血球の解析、ANCA関連血管炎性中耳炎の臨床像、膠原病治療におけるサイトメガロウイルス血症のリスク因子の解析なども行っています。

スタッフ

臨床部門集合写真
後藤 眞腎研究センター 准教授 病院教授 小林 大介医歯学総合病院 助教
金子 佳賢腎研究センター 講師 医学部准教授 忰田 亮平医歯学総合病院 助教
中枝 武司腎研究センター 講師 佐藤 弘恵保健管理センター 講師
黒田 毅保健管理センター 教授 蒲澤 佳子健康増進医学講座 特任助教
若杉 三奈子臓器連関学 特任准教授 甲田 亮地域医療教育センター 特任助教
井口 清太郎新潟地域医療学講座 特任教授 大塚 忠司医歯学総合病院 助教(病院専任)
飯野 則昭地域医療教育センター 特任教授 後藤 慧医歯学総合病院 特任助教
伊藤 由美健康増進医学講座 特任准教授 若松 彩子医歯学総合病院 助教(病院専任)
山本 卓血液浄化療法部 准教授 長谷川 絵理子医歯学総合病院 助教(病院専任)
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