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孫宇陽さんを筆頭著者とする論文が、2025年6月17日に国際学術誌 Viruses に掲載されました。

2023年のミャンマーにおける迅速診断検査陰性ARI患者の呼吸器病原体サーベイランス
― ライノウイルス/エンテロウイルスの遺伝子型解析に焦点を当てて ―

本文
当教室の孫宇陽さんを筆頭著者とする論文
“Surveillance of Respiratory Pathogens Among Rapid Diagnostic Test-Negative Acute Respiratory Infection Patients in Myanmar in 2023, with a Focus on Rhinovirus and Enterovirus Genotyping”
が、2025年6月17日に国際学術誌 Viruses に掲載されました。

本研究では、2023年6月から12月にミャンマー・ヤンゴン市内の2医療機関を受診した急性呼吸器感染症(ARI)患者を対象に、インフルエンザ、RSV、SARS-CoV-2 の迅速診断検査で陰性であった267例について、BioFire® FilmArray® Respiratory Panel 2.1 を用いて呼吸器病原体を解析しました。さらに、最も多く検出されたrhinovirus/enterovirus(RV/EV)について、VP4/VP2領域のシーケンス解析により遺伝子型を検討しました。

その結果、267例中226例(84.6%)で少なくとも1つの病原体が検出され、単独感染は160例、重複感染は66例でした。検出された病原体は延べ299件で、最も多かったのはRV/EV 113件(37.8%)、次いでRSV 67件(22.4%)human metapneumovirus(hMPV)30件(10.0%)でした

月別の検出動向では、病原体の検出数は6月から増加し、8月にピークを迎え、その後徐々に減少しました。RV/EVは全期間を通じて最も多く検出され、RSVも同様に雨季に多くみられました。これらの結果から、ヤンゴンでは7月から9月の雨季に複数の呼吸器病原体が同時に流行していたことが示されました。

また、RV/EV陽性例113例のうち、67例(59.3%)は単独感染、46例(40.7%)は他病原体との多重感染でした。多重感染相手としてはRSV 22例が最も多く、次いでadenovirus 9例、hMPV 6例でした。RV/EVは単独感染でも共感染でも重要な役割を果たしていることが示されました。

さらに、RV/EV陽性113例のうち102例(90.26%)でVP4/VP2領域の塩基配列が得られ、系統解析の結果、5 species・28種類の遺伝子型が同定されました。内訳は、RV-A 54例(52.9%)、RV-C 45例(44.1%)、RV-B 1例、Coxsackievirus B5 1例、Enterovirus D68 1例でした。特にRV-AとRV-Cが大半を占め、外来ARI患者におけるRV/EVの高い遺伝的多様性が明らかとなりました。

本研究では、重症化との関連が知られるEV-D68も1例検出されました。EV-D68は小児の重症呼吸器感染や急性弛緩性脊髄炎との関連が報告されており、その検出は、今後の流行監視や重症例への備えの重要性を示しています。

本研究は、COVID-19流行後のミャンマーにおける外来ARI患者で、迅速診断検査では捉えきれない多様な呼吸器病原体の実態を明らかにしました。特に、インフルエンザやRSVに加えて、RV/EVが高頻度かつ多様な遺伝子型で循環していたことは、今後の呼吸器感染症対策において、RV/EVを含めた継続的な分子疫学サーベイランスの重要性を示すものです。

論文情報
Sun Y, Tamura T, Kyaw Y, Setk S, Aye MM, Tin HH, Win SMK, Li J, Purnama TB, Chon I, et al.
Surveillance of Respiratory Pathogens Among Rapid Diagnostic Test-Negative Acute Respiratory Infection Patients in Myanmar in 2023, with a Focus on Rhinovirus and Enterovirus Genotyping.
Viruses. 2025;17:860. Published June 17, 2025.
DOI: 10.3390/v17060860

2026-04-23 | Posted in What’s New, ブログ|BlogComments Closed