主な対象疾患
呼吸器外科では「原発性肺がん」「転移性肺腫瘍」「縦隔腫瘍」「気胸」「小児呼吸器疾患」など幅広い分野の疾患に4人の専門医が対応しています。手術件数は2023年度211件と県内でもトップクラスを誇っています。迅速かつ正確な診断に基づいて、診断、治療の専門家(呼吸器内科・腫瘍内科・放射線診断科・放射線治療科・病理部)によるカンファランス(キャンサーボード)を踏まえ、常に最新・最適かつ安全な治療を提供するよう努めています。


主な取り組み
原発性肺がん
日本において肺がんは米国と同様に男性のがん死亡原因の第1位となり、しかも増加傾向にあります。またCT検診の普及に伴いX線では発見困難であった早期肺がんの発見も増加しています。このような主に早期の肺がん(腫瘍径20㎜以下:ステージIA期)患者様を対象に縮小手術(従来より小さな範囲の切除)を積極的に行っており、根治性を損なわずに肺機能を温存する手術に努めています。特にCTでしか分からないようなごく早期の肺がんに対し、京都大学呼吸器外科との他施設共同臨床研究である気管支鏡を用いた色素マッピング(VAL-MAP)を導入し、良好な成績を収めています。また、近年では胸腔鏡という内視鏡を用いた傷の小さな低侵襲手術(VATS:Video-assisted Thoracoscopic Surgery)を積極的に導入し、負担軽減に努めています。2021年度から県内唯一となるダビンチサージカルシステムを用いたロボット支援下悪性腫瘍手術(RATS:Robot-assisted Thoracoscopic Surgery)を行っています。2023年度においてはVATS・RATSが肺がん手術の約88%を占めています。
心臓病や腎臓病などの合併症を有し、他施設では手術困難とされる患者さんに対しても関係各科と綿密な協力のもと安全に手術を成功させています。
肺気腫、間質性肺炎等、低肺機能の患者さんに対しては呼吸器内科、総合リハビリテーションセンターと連携し詳細な呼吸機能評価に基づく周術期呼吸リハビリテーションを行い、順調に回復しています。
原発性肺がん年間切除件数

転移性肺腫瘍
当科では結腸直腸がんなどの消化器がん、骨肉腫などの骨・軟部腫瘍、婦人科腫瘍、頭頸部領域の腫瘍などの転移性肺腫瘍に対し、胸腔鏡を用いた手術を積極的に行っています。手術により完治される患者さんも多くいらっしゃいます。
縦隔腫瘍・重症筋無力症
縦隔腫瘍摘出術や重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術では胸腔鏡を用いた低侵襲手術を行っております(5mm~10mm程度の創部、3か所)。縦隔悪性腫瘍に対しては人工血管等を用いた拡大手術や化学療法、放射線治療も取り入れた集学的治療を行っています。
気胸
気胸手術の多くを(約9割)胸腔鏡手術で行っており、手術から退院までは3日程度と短期間で治癒可能な場合がほとんどです。
気道ステント
気道狭窄や手術不能気道病変に対して気管支鏡あるいは硬性鏡下に気道ステントを挿入し症状の改善を得ています。
診療実績(疾患別手術件数推移)

肺移植
終末期呼吸不全の患者さんの中には肺移植で改善することが可能な方もいらっしゃいます。
新潟県内でも肺移植適応検討会を定期的に開催し、希望される方への説明や実施施設への紹介を行っています。これまで国内では東京大学、京都大学、岡山大学、東北大学へ、海外ではセントルイスのワシントン大学へ患者さんを紹介し肺移植が行われています。
肺移植の適応の有無や、実施施設への紹介などの相談も受け付けており、海外で肺移植のトレーニングを受けたスタッフが対応いたします。
新潟県呼吸器外科研究グループ
新潟県内の呼吸器外科医が臨床・基礎の共同研究を目的として設立したグループです。
新潟県内肺がん手術の統計や治療成績の確認・術後化学療法の研究、縮小手術の研究など多くの共同研究を行っています。この会を通じてより安全でより良い医療を提供できるよう定期的な相談会を開催しています。