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第62回日本臨床ウイルス学会で抗インフルエンザ剤について発表(齋藤玲子先生)

2021年6月13日オンラインで開催された第62回日本臨床ウイルス学会シンポジウム3-1「抗ウイルス薬の現状と未来」で、齋藤玲子が「抗インフルエンザ薬の効果と耐性」という演題で発表しました。

以下抄録です。

「日本では5剤の抗インフルエンザ薬の処方が可能である。ノイラミニダーゼ阻害剤としてオセルタミビルザナミビルラニナミビルペラミビルが使われてきたが、2018年から新しい作用機序のキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害剤であるバロキサビルが承認された。バロキサビルの承認以前は、内服薬のオセルタミビルと一回吸入のラニナミビルの処方が多かったバロキサビルが本格的に使用可能となった2018/2019年シーズンは、1回の内服で治療が終わるという簡便さから、推定500万人以上に同薬剤が処方された。バロキサビルは優れた抗ウイルス作用を持ちオセルタミビルに比してウイルス消失が早い。臨床効果はA型インフルエンザに関してはオセルタミビルとほぼ同等であるが、B型インフルエンザに関しては、オセルタミビルより解熱や症状消失が早い可能性がある。多くの患者が治療を受けることで問題になってきたのが感受性低下株の出現である。治験段階でPA蛋白に一塩基置換が起こった変異株が成人ではA型の10%未満に、小児においてはA/H3N2の約20%に出現し、さらに症状改善までの時間が1日程度長いことが報告された。我々は201819年シーズンに小児に対して観察研究を行い、バロキサビル投与群全体で見た場合、A/H1N1pdm12.5%、A/H3N2では14.1に感受性低下株が出現していた。しかしながら、PA変異群における解熱と症状消失までの臨床効果は、PA変異無群と差なかった。PA変異株人から人へ伝播していることを示唆する、初診時でのPA変異頻度は2018-2019年はA/H3N212%程度にとどまり、A/H1N1pdm09B型では見られなかった。さらに感染状況をしらべると家族や学校など密になりやすい環境あった2020年は新型コロナの流行により、インフルエンザが激減したため、十分な調査ができなかったが、今後のインフルエンザのリバイバルに向けて調査の再開が必要である。」

オンライン講演には慣れていたつもりだったのですが、直前にパソコンがフリーズしてしまったり、講演スライドの準備が間に合わなそうだったりして、かなり緊張してしまい、自分の発表のときに何を話したのかよく覚えていません。

オンライン発表は、移動がなくて時間が節約できていいのですが、話しやすさということでは、発表はオフラインの方が楽かもしれません。

by 齋藤玲子

 

2021-06-29 | Posted in What’s New, ブログ|BlogComments Closed