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2023年8月1日~2024年7月25日 RSウイルス全国調査の結果

2023-24シーズンのRSウイルス(RSV)全国調査について、2024年7月25日時点での結果は以下の通りであった。

[検体採取状況]

2023年8月1日から2024年7月25日までに、日本全国から111件の検体を受領した(表1)。103件の迅速キットRSウイルス陽性の初診時検体に対し、リアルタイムPCRを実施したところ、74件(71.8%)が陽性であった。内訳はA型33件(32.0%)、B型41件(39.8%)、陰性29件(28.2%)であった。

 

[地域別RSV流行型]

サブタイピングの結果をもとに、地域別RSV流行型を示した分布図を作成した(図1)。B型優勢の地域は北海道、新潟、山口、沖縄で、A型優勢は滋賀、熊本であった。

 

[疫学曲線]

国立感染症研究所による5類定点発生動向調査の定点報告数と、サブタイピングの結果をもとに、月ごとの疫学曲線を作成した(図2)。2023年8月~12月はB型が主流であった。2024年3月以降はほぼコンスタントに検体を受領し、型別の結果では、A型が過半数を占める。感染症発生動向調査の定点当たりの報告数は4月から増加したが、その後の報告数は横ばいでRSウイルスの流行が継続している。昨年は6月末に流行ピークが見られたのに対し、2024年は患者数が昨年の半分以下である。このまま小さな流行で終わるのか、秋以降に患者数が増えるのか予測がつかない。

 

[G蛋白遺伝子系統樹解析]

ウイルスG蛋白エクトドメイン領域の遺伝子配列について、2022年と2023年の採取株に対し系統樹解析を行った。

A型の株はすべて遺伝子型ON1に属し、ON1(1.1)、ON1(1.2)及びON1(1.3)の3つのクレードに細分化された(図3)。しかしながら、特定のクレードに対する地域的な集族は見られず、全国的に似たような株が流行していると推察された。

B型の株はすべて遺伝子型BA9に属したが、2023年前半に見られたG蛋白のK256N変異を持つ株から、2023年後半にはH128R変異を持つ株に流行株が変化していた(図4)。

 

 

 

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2024-09-02 | Posted in What’s New, ブログ|BlogComments Closed