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2025年4月~2026年3月 RSウイルス全国調査の結果

2025年4月から2026年3月までの期間に、日本各地でのRSウイルス(RSV)の流行状況について調査を行いました。全国9道府県の外来医療機関にご協力いただき、RSウイルス感染症が疑われる患者から鼻腔拭い液や鼻汁などを採取しました。新潟大学に輸送後、RSウイルスの検出と型判定をリアルタイムPCR法を用いて行いました。さらに、全ゲノム解析については、次世代シーケンサーを用いて実施いたしました。

【検体採取状況】

2025年4月から2026年4月10日までに、全国から167件の検体が収集されました。そのうち145件の初診時検体についてリアルタイムPCRを実施しました。サブタイピングの結果、A型は35件(24.1%)、B型は89件(61.4%)、A型・B型の共感染は1例(0.7%)、陰性は20件(13.8%)でした(表1)。

 

【地域別RSウイルス流行型】

サブタイピング結果に基づき、地域別の流行型を示す分布図を作成しました(図1)。
2025年4月から2026年3月は、全国でB型が優勢でした。A型が優勢な地域は三重県、B型が優勢な地域は北海道、新潟県、滋賀県、山口県、愛媛県、熊本県、沖縄県でした。

 

【疫学曲線】

国立感染症研究所の5類定点発生動向調査に基づく定点当たり報告数と、当教室で収集した検体のサブタイピング結果(A型・B型検出数)、およびサンプル数(A型・B型・PCR陰性を含む)を月別に集計し、疫学曲線を作成しました(図2・図3・図4)。

〇全国(図2)
定点報告数は9月にピークを示しました。一方、当教室におけるRSウイルスの検出数は、5月から7月(沖縄県での流行)および9月(沖縄県以外での流行)の2回のピークを示しており、今シーズンはB型が優勢でした。

〇沖縄(図3)
定点報告数は4月から上昇し、6月にピークを示した後、漸減しました。当教室の検体においても、5月から7月にかけてB型が優勢に検出されました。11月から3月までA型及びB型が散発的に検出されました。また、7月にはA型とB型の共感染例が1例確認されました。

〇沖縄県以外(北海道〜九州)(図4)
定点報告数は4月以降に減少した後、夏から初秋にかけて再び増加し、9月にピークを示しました。当教室で収集した検体においても定点報告とほぼ同じ推移を示し、9月に最もRSV検出数が多くなりました。その後、秋から初冬にかけては低水準で推移しました。シーズンを通じて、B型が優勢でした。

【まとめ】

2025–26年シーズンでは、沖縄県では5月から7月に、沖縄県以外では9月に、定点報告数および当教室のRSV検出数がピークを示しました。なお、新型コロナウイルス流行以降、RSウイルスは夏季に流行する傾向がみられており、2024-25年シーズンには、4-6月にピークが見られました。沖縄以外の地域では、2025-26年シーズンのピークは前年度より2,3ヶ月遅くなっており、コロナ前の流行時期に近くなっていました。

今後の動向についても、定点報告数と当教室の検体の双方を用いて、継続的に監視していく予定です。

 

【RSウイルスの全ゲノム解析】

次世代シーケンサーを使った遺伝子解析を実施し、A型は14件、B型は23件の全長シークエンスを得ることができました。RSウイルスのクレード分類は、Goyaら(2024)が提唱した全ゲノム配列に基づく分類法に従いました[https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/30/8/24-0209_article]。

A型では、A.D.1(A.D.1.4、A.D.1.6、A.D.1.9)、A.D.3(A.D.3、A.D.3.1)、A.D.5(A.D.5.1、A.D.5.2)などの多様なクレードが検出され、クレードの分布に明確な季節性や地域性は見られませんでした(図5)。また、世界的な系統樹においても、複数のクレードが同時期に検出されており、単一クレードへの急速な置き換わりや明確な優占化は認められませんでした(図6)。
一方、我々が検出したB型では、すべてB.D.E.1クレードに属していました(図7)。A型では複数のクレードが並行して検出されたのに対し、B型では世界的にもB.D.E.1クレードに属する株が近年の主流となっており、国内検出株もこの系統に含まれていると考えられました。

Nextstrain 系統樹

RSV-A:https://nextstrain.org/rsv/a/genome/6y
RSV-B:https://nextstrain.org/rsv/b/genome/6y

2026-05-08 | Posted in What’s New, ブログ|BlogComments Closed