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ごあいさつ
新潟大学泌尿器科のホームページにようこそ!
泌尿器科、と言いますと、一般のかたには少しなじみが薄いかもしれませんが、後腹膜という体の背中側にある臓器、つまり、副腎、腎臓、尿管、そして尿路と呼ばれる尿の通り道、膀胱、尿道、また、男性特有の臓器、精巣、精管、前立腺などの病気を専門に扱う科になります。
「守備範囲」はとても広く、おしっこが近くて困る原因の膀胱機能障害「過活動膀胱」を飲み薬で上手く治療することもあれば、前立腺にできたがんを手術支援ロボットを使った精密な手術で摘除もします。また、尿管に結石がつまると、ひどい痛みに襲われますが、その結石を非常に細い内視鏡を使い、レーザーで壊して、痛みの原因を取り去ることもしますし、腎臓にできたがんが転移を起こした場合、免疫チェックポイント治療薬という新しい注射の薬で治療することもします。また、先天的な、尿路等の異常を修正する手術をするのも泌尿器科です。さらに、腎臓の機能がなくなってしまった場合、腎臓を移植するのも泌尿器科の大切な仕事です。
新潟大学医学部泌尿器科は教室紹介にありますように102年前、大正5年2月に高橋明教授が皮膚泌尿器科教室を開かれたことから始まりますが、昭和25年1月、皮膚泌尿器科教室から分離独立する形で、初代、楠隆光教授が教室を主催されたのが実質的な教室の創立になります。以来、70年近くの古い歴史があり、日本初の腎移植、世界初の腹腔鏡下副腎摘除術をはじめ、数々の業績をあげてきています。この歴史のなかで、新潟大学附属病院や関連病院でキャリアを積み、泌尿器科専門医となったOBは新潟県のみならず全国各地で活躍されてきました。
新潟県は本州の真ん中、日本海に面し、日本列島をヒトの体に例えると、背骨の真ん中に位置し、その中心都市新潟市は政令指定として栄えております。新潟県には医学部(医科大学)が一つしかありませんから、複数の医学部で泌尿器科領域を機能分担する、というわけにはいきません。前に述べた幅広い泌尿器科の疾患をまんべんなく網羅してそれぞれのスペシャリストを育成する必要があります。新潟県内ほとんどすべての総合病院の泌尿器科で新潟大学の同窓の先生達が活躍していますが、病院、医院、クリニックでご活躍の100名を超える同窓の先生方との緊密な関係により、泌尿器科医療を提供するのみならず、若手中堅医師の育成、キャリアアップを図っています。
現在、新潟大学医歯学総合病院泌尿器科では、年間の手術件数が550件ほどで、主にロボット補助下手術(前立腺癌、腎細胞癌)、腹腔鏡下手術、生体および献腎移植、小児泌尿器科疾患手術を行っています。また、2015年1月の冨田の着任以来、国際共同開発治験を含み、すでに20件以上の新薬開発治験を行っており、承認に先駆けた癌薬物治療を施行しています。その成果は、冨田を共著者としたトップジャーナルに掲載されており、(N Engl J Med. 2015 Nov 5;373(19):1803-13. N Eng J Med, 2018 Apr 5;378(14):1277-1290. Lancet Oncol. 2018 Apr;19(4):451-460.)新たな標準治療となったものも少なくありません。
新専門医制度が開始されましたが、私は、良い泌尿器科医になる過程は、これまでと何も変わらない、と考えています。ひとつひとつの症例をしっかりと検討し、きちんと診断治療を行うことの積み重ねが、また、その症例を通して学ぶ姿勢を崩さないことが医師としての実力につながるのだと思います。医学部の学生さん、若手の先生に常に申し上げていることですが「質を保証する数は必要であるが、数は質を保証しない」ということです。困難な症例であればあるほど、学ぶことは多いものです。さらに、勉強する機会を逃さず、積極的に参加することも肝要です。
新潟大学医学部泌尿器科とその同窓は非常にユニークな「伝統」があります、それは若手の先生にトライさせる、というものです。臨床手技、研究会や学会での発表など、ステップアップする機会をどんどん提供しています。新しく仲間になられた(専攻医となった)先生には、国際学会に参加してもらい、世界を意識した仕事を進めていただくようにしています。専門医の取得はもちろんですが、医学博士の学位の取得も奨励しています。社会人大学院制度を用いれば、専攻医の業務を行いながら、大学院に在籍し、学位を取得することも可能です。
また、国際交流も盛んです。2015年から現在まで、新潟大学医学部泌尿器科に研修、交流事業で多くのDoctorが訪れています(マレーシア、ドイツ、オランダ、ロシア、アメリカ)。また、主に学位取得後の海外留学も奨励しています。
チーム医療という言葉がありますが、いうまでもなく、医療そのものがチームの意識なくしては成り立たないものです。医師、看護師のみならず、薬剤師、検査技師、クラーク、医療事務などなど、スタッフの誰が欠けても、病院全体として良い医療サービスは提供できません。そして、何よりも主役は患者さんです。患者さんと医療チームとの緊密な連携プレーこそが良い結果を生むのだと思います。新潟大学医学部泌尿器科はそのような医療を目指しています。
教室紹介
泌尿器科学教室の歴史
泌尿器科の歴史は、明治45年5月第二外科学を担当された杉村七太郎教授が 泌尿器科学および皮膚科学の講義を始められたことより発します。
大正5年22月から昭和2年7月迄の11年間高橋明教授が皮膚泌尿器科学教室を主宰し、 昭和3年4月から昭和24年4月迄橋本喬教授に引き継がれました。
昭和24年学長に就任された橋本教授は、両科の分離独立の必要性を強調され、 昭和25年1月東京大学の楠 隆光助教授を初代教授として迎え、第三解剖学講座を拝借し、 単科としての泌尿器科学教室を創設しました。楠教授は日本泌尿器科外科の草分けとして 「腎移植」、「腎部分切除術」、「腸管による代用膀胱」など多くの手術を開拓され、 昭和31年12月大阪大学の講座新設とともに転出されました。
その後、東京大学泌尿器科の高安久雄助教授が2代目教授として昭和32年2月に就任されました。 高安教授は「急性腎不全」、「前立腺癌を中心とした内分泌学的および電子顕微鏡的研究」など数多くの業績を残され、 昭和38年5月東京大学へ転出されました。
昭和38年7月助教授の佐藤昭太郎先生が3代目教授に就任し、医局員も増え、学会発表及び論文作成等でますます活躍されました。 昭和41年日本泌尿器科学会総会のシンポジウムで「慢性腎不全の泌尿器科的療法」の講演をし、 昭和47年10月には、第37回日本泌尿器科学会東部地方会(現在は、東部総会と名称変更)を開催し、 昭和63年5月には「第75回日本泌尿器科学会総会」の会長となり、会長講演で「尿路形成術」の講演をされました。 平成6年3月迄の31年間泌尿器科学教室を主宰され退官されました。
平成7年1月東京女子医科大学助教授の高橋公太先生が第4代教授として就任されました。 高橋先生の専門分野は腎移植で腎移植を中心に活躍され、数々の業績を挙げられました。また平成13年4月から新潟大学医学部の名称が変わり、 新潟大学大学院医歯学総合研究科 生体機能調節医学専攻 機能再建医学講座 腎泌尿器病態学分野となり、 腫瘍関係では、分子腫瘍学分野となりました。
平成27年1月に山形大学医学部泌尿器科教授の冨田善彦先生が第5代教授として着任しました。冨田先生の専門は泌尿器科腫瘍ですが、ロボット補助下手術、腹腔鏡下手術、また、排尿障害、排泄ケア、腎移植等泌尿器科一般についても業績を上げてこられました。着任以降、手術数は年間500件以上に増加し、腎移植術も年間20例以上を実施するとともに、ロボット補助下前立腺摘除術は200件を超えております。また、腎細胞癌、膀胱癌、前立腺癌に対する新薬開発のための治験の実施数も3年間で20以上の試験を実施しています。