研究について

膠原病・リウマチ研究グループ

グループ紹介

 2023年3月現在、大学在籍中のリウマチ・膠原病グループメンバーは、保健管理センター 黒田毅教授、腎・膠原病内科 中枝武司講師、小林大介助教、保健管理センター 佐藤弘恵准教授、腎・膠原病内科 若松彩子助教(病院専任)、長谷川絵理子助教(病院専任)、黒澤陽一医員(病院助教)、渡井友也大学院生の8名です。菊地珠美が上越総合病院、野澤由貴子が済生会新潟病院、山﨑美穂子が木戸病院、坂井俊介が長岡赤十字病院、髙村紗由里、須藤真則が県立リウマチセンターでの出張を継続しています。渡井友也が大学院生として免疫・医動物学分野に出向し、基礎研究に励んでいます。

 当グループOBの伊藤聡先生は、新潟県立リウマチセンター副院長として日々の診療と若手の指導は元より、広い人脈と多くの功績を生かされ、国内外でリウマチ診療の最前線について精力的に講演を行っておられます。長岡赤十字病院の佐伯敬子先生は、IgG4関連腎疾患の第1人者として国内外で大活躍されているのは皆様もご存知の通りです。日本リウマチ学会総会のIgG4関連疾患のシンポジウムでも講演されました。他にも多くのOBの先生方がご活躍されていることを、グループ員一同大変誇りに思っております。

第61回日本リウマチ学会総会 シンポジウムで講演される佐伯先生

 当グループでは臨床主体での研究活動を行っており、その成果は日本リウマチ学会、日本腎臓学会、中部リウマチ学会、東部腎臓学会、ヨーロッパリウマチ学会、アメリカ腎臓学会、アメリカリウマチ学会などで発表し、論文作成を行っております。

第18回国際血管炎、ANCA会議に参加した長谷川医師と和田医師

 黒田毅教授は保健管理センターで新型コロナウイルスワクチン接種の業務に忙殺されながらも、関節リウマチに伴う反応性アミロイドーシス、全身性エリテマトーデスにおける特発性大腿骨頭壊死の研究を継続しています。

 中枝武司講師は総括医長の任を終え、耳鼻咽喉科と協力してANCA関連血管炎性中耳炎の臨床研究を行っています。

      

 小林大介助教は多忙な病棟長を務めながら様々な臨床研究を行い、日本リウマチ学会では演題「抗CCP抗体の有無による高齢発症関節リウマチの特徴」が秀逸ポスターに選ばれました。

 佐藤弘恵准教授は非定型大腿骨骨折の臨床研究を継続し、非定型大腿骨骨折の前兆である限局性大腿骨外側骨皮質肥厚がある女性のリウマチ膠原病患者では海綿骨スコアが低いことをJ Bone Miner Metab誌に報告しました。また、腎分子生物学的研究グループ張高正先生、金子佳賢先生との協力の下、抗リボソームP抗体による全身性エリテマトーデスの気分障害は血清ならびに脳のトリプトファンの減少と関連するという論文がJ Immunol誌に掲載されました。

 若松彩子助教は働く意欲のある育児中の医師を病院が支援し、育児後のキャリアアップにつなげるために新設されたダイバーシティ枠の助教(病院専任)として採用され、全身性エリテマトーデス患者の抗リボソームP抗体と抗dsDNA抗体の共存について、その腎組織、腎予後との関連をLupus誌に報告しました。

      

 長谷川絵理子助教は膠原病グループの病棟チーフとしてチームをまとめつつ、臨床研究を行っています。中部リウマチ学会では指導した研修医の発表「胸鎖関節周囲膿瘍を呈した多発血管炎性肉芽腫症の一例」が奨励賞候補演題となるなど研修医の指導も熱心です。

      

 黒澤陽一医員は新設されたエデュケーショナルメンターとして研修医の指導、勧誘に当たりながら、基礎研究、臨床研究を立ち上げつつあります。

 当グループは女性医師の比率が高いことが特徴ですが、その理由として、パートの女性医師に積極的に病棟業務に関わって頂く方針を、いち早く打ち出したことが挙げられます。平日9時〜16時の限られた時間であっても、自分なりのスタイルで継続することで、時間はかかっても徐々に経験値をあげることができます。彼女達の活躍をうけ、腎臓グループ全体でも同様の形態で、第一線の臨床業務に携わる女性医師が増えつつあります。今後も多くの後輩達が活躍されることを期待しております。
 当グループは若手の学会発表を積極的に後押ししており、スーパーローテート中の研修医や新入局員を中心に、日本内科学会地方会、中部リウマチ学会、東部腎臓学会などでの症例報告などで積極的に指導を行い、発表をバックアップし、症例報告の作成も指導しています。学生教育においても、当グループは医学部6年生のクリニカル・クラークシップでの人気が高く、より多くの学生さんにリウマチ膠原病診療の面白さを知ってもらおうと、積極的に学生さんの指導に力を入れています。

第28回中部リウマチ学会恒例グループ親睦会

 外来診療は月曜 佐藤、火曜 黒田、水曜 若松/長谷川、木曜 中枝、金曜 小林/黒澤で行っており、多数の患者さんを診療しています。魚沼基幹病院には中枝、長谷川が毎週火曜日に外来助勤に行っておりますが、近隣の先生方からの紹介を受けて患者数が凄い勢いで増加しており、リウマチ膠原病内科医のニーズの高さを今さらながら痛感しております。大学病院、基幹病院ともに、事前に病診連携を通した予約が可能ですので、是非ご利用頂ければと存じます。

 大学病院臨床研究推進センターでは現在、多発性筋炎/皮膚筋炎、ループス腎炎、高安動脈炎の治験を行っています。関連病院の先生方には、症例のご紹介を頂き大変ありがとうございます。今後も新規治験で先生方の患者様のお役に立てるようなものがありましたら積極的に受ける予定でおりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

 大学病院の入院患者数は常に15人前後で、ありとあらゆる膠原病、自己炎症性疾患の診療に日々取り組んでおります。チームスタッフの仲の良さと意思疎通の良さ、信頼関係の強いことは我々のグループの売りであり、自慢でもあります。関連病院の先生方からの入院、転院依頼につきましては、しばしばベッドの空き具合でご迷惑をおかけしておりますが、いつでも可能な限り対応させて頂きたいと存じます。

 昨今のリウマチ膠原病診療はますます多様化、専門化しており、リウマチ膠原病専門医のニーズはますます高まっています。当グループでは幸い毎年1−2名の入局者がおりますが、まだまだ追いついていない状況です。今後もリウマチ膠原病診療を志す若手の勧誘を続けたいと思いますので、皆様方におかれましてどうか今後とも、ご指導、ご鞭撻の程何卒、よろしくお願い申し上げます。

リウマチ膠原病病棟診療チーム新人歓迎会

研究紹介

関節リウマチに伴う反応性アミロイドーシス

 疾患活動性の高いコントロール不良の関節リウマチ患者に合併する反応性アミロイドーシスは、ひとたび症候性となると極めて予後不良であることが知られている。我々はこうした患者に対する生物学的製剤の積極的な導入によって、胃粘膜のアミロイド沈着が減少〜消失すること、さらには生命予後を改善させることを明らかにした。

Amyloid deposition was markedly decreased after the initiation of infliximab in a patient with RA amyloidosis. (Congo-red stain x200)
Kuroda T et al. Rheumatol Int 2008

Changes in percentage amyloid-positive area in gastric biopsy specimens after introduction of anti-TNF therapy. Amyloid-positive area was decreased in all 10 patients, and was completely disappeared in 3 patients after the initiation of anti-TNF therapy.Kuroda T et al. J Rheumatol 2009

In our study, survival rate was significantly higher in RA patients with reactive amyloidosis who were treated with biologic reagents (biologic group, n=53), compared with those without biologic reagents (non-biologic group, n=80). Kuroda T et al. J Rheumatol 2012

ビスフォスフォネート製剤使用膠原病患者における大腿骨非定型不全骨折

 ステロイド使用患者における骨粗鬆症の予防薬として、日本骨粗鬆症学会ではビスフォスフォネート製剤(BP)が第1選択薬として推奨されており、当科でも多くの患者に使用されている。当院整形外科との共同研究で、当科通院中の膠原病患者におけるBPの効果及び副作用について前向きに調査を行ったところ、従来稀とされて来た大腿骨非定型不全骨折の頻度が、約10%と極めて高率であることが明らかになった。

X-ray of the hip joints showing “beaking”, defined as localized periosteal thickening of the lateral cortex (white arrow).
Sato H, Kondo N, et al. Osteoporos Int 2015.

Risk factors for beaking in patients with autoimmune diseases taking BPs. We revealed that younger age (40 to 60 years) and diabetes were significant positive risk factors for beaking. Sato H, Kondo N, et al. Osteoporos Int 2015.

全身性エリテマトーデスの長期予後調査

 SLEの5年生存率は大幅に改善しており、近年では10年生存率も90%近く、それに伴い患者の長期予後を左右する合併症を防ぐことが重要視されている。我々はSLE患者458名について50年以上にわたる長期予後を後ろ向きに検討し、2000年以降に診断された患者では欧米諸国と同様に極めて良好な生命予後であること、また高血圧や骨粗鬆症などの長期合併症対策の重要性を報告した。

For patients diagnosed as having SLE before 1970, between 1970 and 1979, between 1980 and 1989, between 1990 and 1999, and after 2000, the 5-year survival rates were 71.4%, 83.1%, 94.5%, 93.4%, and 96.4%, respectively. Wada Y, et al. Clin Exp Nephrol 2018.

In our examination, SDI (Systemic Lupus International Collaborating Clinics (SLICC)/American College of Rheumatology (ACR) Damage Index) was positively correlated with age, hypertension, and APS, whereas negatively correlated with administration of bisphosphonate. Wada Y, et al. Clin Exp Nephrol 2018.