新潟大学医学部麻酔科学教室
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脊髄電気刺激法による鎮痛法

脊髄硬膜外通電法(spinal cord stimulation)

脊髄電気刺激法による鎮痛法当科では、神経ブロック治療に対して抵抗性の難治性慢性疼痛に対し、積極的に脊髄通電法を行っています。
1960年代より電気刺激による鎮痛法が試みられましたが、当教室前教授である下地恒毅(現・同名誉教授)が、 世界に先駆け硬膜外腔より脊髄を通電刺激する"経皮的硬膜外脊髄通電法"を開発しました。現在では、刺激電極と植え込み型の神経刺激装置一式が開発され、日常生活に支障なく脊髄刺激が行えるようになっています。 1992年より健康保険も適応されており、実際に施行された多くの患者さんの満足を得ています。

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  1. 刺激装置について
    完全植え込み型のバッテリー内蔵型神経刺激パルス発生器(刺激 装置)、4極の硬膜外脊髄刺激電極、刺激装置の患者用コントローラー一式が市販されています。刺激装置は電極の位置、患者さんの 体格や希望に応じて、前胸部や脇腹部、下腹部などに植え込みます。刺激の強さや早さは、外部からコントローラーによって変更でき るようになっています。刺激装置には電池が内蔵されており、刺激 の使用頻度にもよりますが、約10年もつといわれています。
  2. 適応となる疾患
    ・末梢血管障害(バージャー病など):脊髄刺激により疼痛の緩和とともに血液の循環を改善する効果があります。
    ・帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹罹患後、皮疹が治癒しても強い痛みが残ることがあります。鎮痛薬や神経ブロック治療でも改善が難し い場合に、劇的な効果が得られることもあります。
    その他
    ・複合性局所疼痛症候群(反射性交感神経性萎縮症、カウサルギー)
    ・糖尿病性神経障害などの末梢神経障害
    ・四肢切断後の幻肢痛や断端痛、神経根引き抜き損傷
    ・脊髄損傷、多発性硬化症などの脊髄病変
    ・椎間板ヘルニアなどに対する腰椎手術後の下肢痛
    また、欧米では狭心症による胸痛(狭心痛)にも応用されています。
  3. 刺激装置植え込みの実際
    具体的な刺激装置植え込みの流れは
    @ 硬膜外腔への刺激電極留置
    A 1〜2週間の体外試験刺激による有効性の確認
    B 有効例では刺激システムの永久植え込み となります。
    実際には、入院して行われます。入院期間は約3週間前後です。
    @ 硬膜外腔への刺激電極留置
     手術室で、局所麻酔下に行います。レントゲンで、刺激電極の位置を確認しながら刺入します。最適な場所に挿 入されたら、実際に刺激を行い、疼痛部位に刺激が入るかどうかを患者さん本人に確認します。十分な刺激が得 られることを確認した後、体外に試験刺激のための導出線を出し、終了となります。所要時間は約1〜2時間です。
    A 体外試験刺激による有効性の確認
     刺激電極挿入後、体外の導出線に一時刺激用の脊髄刺激装置を接続し、通電刺激により実際除痛が得られる かどうか、また刺激の位置が変わらないかを確認します。一般的には、50%以上の除痛効果が認められた場合を 有効とし、かつ患者さんの満足が得られた場合に刺激システムの皮下永久植え込み術を行っています。
    B 刺激システムの永久植え込み
    硬膜外通電法有効例では、再度手術室で局所麻酔下に刺激装置の永久植え込み術を行います。植え込み前に、 患者さんが日常生活上不便を感じない場所であるかどうか確認します(通常は鎖骨下、脇腹部、下腹部など)。試 験刺激のための体外導出線を切断し、刺激装置を植え込むための皮下ポケットを作成します。その後、刺激電極 と刺激装置(ジェネレータ)を、皮下を通して延長ケーブルで結合します。終了後、体外から刺激の強さ、早さなどを 微調整します。ただし大まかな刺激の強さ、早さは患者さんご自身がコントローラで調節することができます。 刺激システム一式にはそれぞれ登録書が添付されており、また患者さんには患者さんが神経刺激装置を使用して いることをお知らせするカードや手帳をお渡ししています。また、外来で刺激システムに問題がないかどうかを定期 的にフォローアップしています。
    注意点
  4. 過激な運動をしないかぎり、脊髄刺激装置を植え込みしても日常生活上に支障をきたすことはありませんが、以 下の点に注意する必要があります。
    ・磁気共鳴画像(MRI):MRIを使用すると電極のずれや加熱を起こす可能性があり、施行不可となります。
    ・高出力超音波:尿管結石破砕器などの高出力超音波装置は、装置に損傷を与える可能性があります。
    ・電気メス:他の外科的手術の際に電気メスを使用する場合、装置の出力が 低下したり、プログラムを勝手に変更してしまうことがあります。
    (安宅豊史)
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