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2022-2023年シーズンの日本におけるインフルエンザサーベイランスの概要

  • 2022-2023年のインフルエンザシーズン中、我々は初診時260検体を収集し、2回目の再診検体は86件であった。
  • 主な流行亜型はA(H3N2)で231例(93%)検出され、A(H1N1)pdm09は7例(3%)検出、亜型が判定できないA型が9例(4%)検出された(図1)。
  • 2023年1月にインフルエンザ流行のピークがあった(図2)。
  • RT-PCRにより、A(H3N2) PA/I38Tのバロキサビル投与後症例が3例検出された。NGSにより、臨床検体からバロキサビルに感受性低下を示すPA蛋白のI38T変異が3例、分離検体からI38Mが1例検出された。なお、この分離株から検出されたI38M変異については、臨床サンプルからは確認できなかったため、感受性低下変異株であったかどうか確定できていない。
  • 治療前の患者から2例のA(H3N2) PA/I38T変異が検出され(8%)、いずれもNGSで確認された(表1)。1症例は臨床情報や密接な接触情報がなく、もう1症例はBA治療を受けた兄からの家庭内感染が示唆された。
  • 今シーズンのバロキサビル投与後のA(H3N2) PA/I38T変異体の頻度は、RT-PCRの結果で6% (3/53) 、NGSの結果で9.5% (4/42)であった。
  • PA/I38T/M変異を有する患者はいずれも小児であり、48時間以内に37.5℃以下に解熱した。
  • ノイラミニダーゼ阻害剤耐性をしめす変異株は検出されなかった。
  • 流行したインフルエンザA(H3N2)は多くのサブクレードに分かれ多様であったが、12月~2月の株は3aクレードに属し、3月~7月に収集されたウイルスの大部分は2bクレードに属しており、流行時期によってサブクレードに違いが見られた(図3)。
  • 2023年7月に沖縄で検出されたインフルエンザA(H1N1)pdm09は、2aに属し、中東、南アジア、中国、ヨーロッパ株に近かった。その一方、2023年7月にミャンマーからの輸入症例として検出された株は同じく5a.2aに属したが(図4)、東南アジアや中国の株と近かった。2023-2024年のワクチン株の属する5a.2a.1株はまだ検出されていない。