腫瘍研究グループ
胸部悪性腫瘍、特に肺癌は、進行期での発見が多くいまだ予後不良の疾患であり、新たな治療法が望まれています。我々腫瘍研究グループは、胸部悪性腫瘍診療における新たな治療法の発見、エビデンスの確立を目指して研究を行っています。
メンバー
常勤スタッフとして渡部聡、近藤利恵、市川紘将、野嵜幸一郎、庄子聡、大坪亜矢、髙橋美帆の他、大学院生・内科専攻医が在籍しています。
基礎研究について
PD-1阻害剤を代表とする免疫チェックポイント阻害剤の登場により、近年の肺癌診療は大きく進歩いたしました。一方で、免疫チェックポイント阻害剤の奏効割合は高くなく、長期間奏効する症例を増やす治療アプローチが求められています。基礎研究の分野においてはこれまで蓄積してきた研究成果を生かし、ヒト検体を用いた免疫チェックポイント阻害剤の効果予測因子の開発、マウスモデルによる分子標的治療薬との併用療法の開発を行っています。
臨床研究について
臨床研究では、北東日本研究機構(NEJ)、西日本がん研究機構(WJOG)、胸部腫瘍臨床研究機構(TORG)などの臨床研究グループに所属し、多施設共同研究に参加しています。NEJでは「既治療EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用療法の第II相臨床試験」を立案し事務局として前向き介入研究を開始しました。
新潟肺癌治療研究会を組織し、新潟から新たなエビデンスを発信し続けています。2019年の論文発表では、庄子聡がシスプラチン腎症と尿中メガリンの関連をBMC Cancer誌、扁平上皮肺癌に対するオシメルチニブの効果をLung Cancer誌、佐藤美由紀がEGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するニボルマブの効果と腫瘍局所の免疫状態の関連をPLoS One誌、才田優がNLCTGで行った脳転移を有するEGFR遺伝子変異陽性肺癌の放射線治療とEGFR-TKIのシークエンスの検討をThoracic Cancer誌、渡部聡が扁平上皮肺癌に対するネシツムマブ+シスプラチン+ゲムシタビン併用療法の第II相試験の結果をLung Cancer誌に発表いたしました。また、臨床試験の企画、立案、施行を通じて将来大規模臨床研究を行える人材の育成を目指し、プロトコール立案委員会、検討委員会を組織しています。プロトコール立案・検討委員会の成果は少しずつ実を結んでおり、2019年はASCO、呼吸器学会、臨床腫瘍学会、肺癌学会、世界肺癌会議で研究成果を発表いたしました。



人材育成について
新潟県立がんセンター新潟病院と連携して、胸部悪性腫瘍診療のスペシャリストを育成しています。静岡がんセンター、金沢大学がん進展制御研究所などへの国内留学も行っており、今後も新潟県内に留まらず広い視点をもった人材の育成を進めていきます。最近の新たな試みとして、留学から帰局したスタッフを中心に、新潟肺癌治療研究会プロトコール立案委員会、プロトコール検討委員会を立ち上げました。
新潟から新しい治療を発信すること、臨床研究の立案、推進を通じて次世代研究者を育成することを目指しています。