新潟大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器・感染症内科学分野 - 生体機能調節医学専攻 内部環境医学講座/地域疾病制御医学専攻 国際感染医学講座

診療科目一般内科、呼吸器疾患、感染症、腫瘍、アレルギー、心身症
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腫瘍研究グループ

胸部悪性腫瘍、特に肺癌は進行期での発見が多く、いまだ予後不良の疾患であり、新たな治療法の開発が望まれています。我々腫瘍研究グループは、胸部悪性腫瘍診療における新たな治療法の発見、エビデンスの確立を目指して研究を行っています。

メンバー

スタッフとして渡部聡、才田優、野嵜幸一郎、田中知宏、佐藤美由紀、柳村尚寛、久代航平、鈴木遼、渡邉広樹の他、大学院生・内科専攻医が在籍しています。

基礎研究について

PD-1阻害剤を代表とする免疫チェックポイント阻害剤の登場により、近年の肺癌診療は大きく進歩しました。一方で、免疫チェックポイント阻害剤の奏効割合は高くなく、長期間奏効する症例を増やす治療アプローチが求められています。腫瘍班ではこれまで、T細胞による抗腫瘍免疫応答の解析、増強を中心に基礎的な検討を行ってきました。抑制性T細胞は細胞傷害性治療に抵抗性を示し、抗腫瘍免疫応答を抑制すること(Blood, 2012 Sep 20;120(12):2417-27)、一方でCD8陽性T細胞は細胞傷害性治療に感受性がありドナーからの移入が抗腫瘍免疫の増強に有効であること(J Immunol. 2015 Jul 15;195(2):726-35)、PD-1阻害薬はT細胞療法の効果を増強すること(Cancer Immunol Immunother. 2022 Jun;71(6):1357-1369)などを報告しています。基礎研究で蓄積してきた研究成果を生かし、ヒト検体を用いた免疫チェックポイント阻害剤の効果予測因子の開発(ASCO annual meeting 2022で発表)、マウスモデルによる分子標的治療薬との併用療法の開発(AACR annual meeting 2021-2025で発表)を行いました。また、サルコペニアを引き起こし、かつ免疫チェックポイント阻害薬の効果を抑制するタンパクを新規に発見し、機序も含めて公表しました(AACR annual meeting 2024-2025)。

臨床研究について

臨床研究では、北東日本研究機構(NEJSG)、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)、西日本がん研究機構(WJOG)などの臨床研究グループに所属し、多施設共同研究に参加しています。NEJSGでは「既治療EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブ併用療法の第II相臨床試験(NEJ043)」を行い、同療法の有効性を発表しました(Eur J Cancer. 2024 Jan:197:113469)。また、「PS不良 (PS 2-3) の進展型小細胞肺がん患者に対するカルボプラチン+エトポシド+デュルバルマブ療法の第II相試験(NEJ045A)」の事務局、研究代表を務め、2024年のASCO年次集会で発表しました。同研究は世界的な注目を集め、カナダのガイドラインで取り上げられています。

新潟肺癌治療研究会を組織し、新潟から新たなエビデンスを発信し続けています。2024年以降の論文発表では、後藤優佳が高感度次世代シーケンサーによる細胞診陰性検体でのドライバー遺伝子変異検索をLung Cancer誌、渡部聡が扁平上皮肺癌に対するネシツムマブ+シスプラチン+ゲムシタビン併用療法の統合解析結果をESMO Open誌、PET-CTによる背景肺の炎症と免疫チェックポイント阻害薬による肺障害との相関をAcademic Radiology誌、局所療法後再発の非小細胞肺癌に対するイピリムマブ+ニボルマブ併用療法をCancers誌に発表いたしました。Editorial、Review、共同研究結果を含めると、2024年以降に計24本の論文を発表しています。また、臨床試験の企画、立案、施行を通じて将来大規模臨床研究を行える人材の育成を目指し、プロトコール立案委員会、検討委員会を組織しています。プロトコール立案・検討委員会の成果は少しずつ実を結んでおり、ASCO、呼吸器学会、臨床腫瘍学会、肺癌学会、世界肺癌会議で研究成果を発表しています。

シカゴで行われたアメリカ癌学会2025年次集会での菖野邦浩先生のポスター発表
シカゴで行われたアメリカ癌学会2025年次集会、菖野邦浩先生のポスター発表の様子
シカゴで行われたアメリカ癌学会2025年次集会での若林知哉先生、山﨑凌先生の参加の様子
シカゴで行われたアメリカ癌学会2025年次集会、若林知哉先生、山﨑凌先生の参加の様子。

人材育成について

他施設と連携して、胸部悪性腫瘍診療のスペシャリストを育成しています。新潟県内に留まらず、国立がん研究センター中央病院、静岡がんセンターなどへの国内留学も行っており、今後も新潟県内に留まらず広い視点をもった人材の育成を進めています。また留学から帰局したスタッフを中心に、新潟肺癌治療研究会プロトコール立案委員会、プロトコール検討委員会を開催し、新潟から新しい治療を発信すること、臨床研究の立案、推進を通じて次世代研究者の育成を目指しています。

研究・グループ紹介

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