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下部消化管班

「下部消化管グループ」は、大腸癌に対する集学的治療(手術、抗癌剤、免疫療法、放射線療法)、炎症性腸疾患に対する外科治療など、下部消化管疾患を中心に教育・診療・研究を行っています。さらに、直腸癌の手術で得た解剖学的知見や手術手技を基にして、卵巣癌などの高度に進行した骨盤内悪性腫瘍に対して、他の診療科と連携して手術を行っています。また近年では、新潟大学医歯学総合病院がんゲノム医療センターと連動して、臓器横断的ながんゲノム医療に取り組んでおり、固形癌全般に対するがんゲノム医療、遺伝性大腸癌に対する外科治療およびサーベイランス(積極的な経過観察)を行っています。

診療

大腸癌に対する集学的治療(手術、抗癌剤、免疫療法、放射線療法)

 「大腸」は、解剖学的に結腸と直腸とに分けられます。直腸癌では、肛門を合併切除して永久人工肛門が必要となる場合があります。当グループでは、術前に抗癌剤や放射線療法を組み合わせて実施することによって、癌の根治性を損なわずにできるだけ肛門を温存する取り組みを行っております。直腸癌の手術では、ロボット支援下手術、腹腔鏡手術、開腹手術の中から、患者さんの状態に合わせて最適な手術アプローチ方法を選択いたします。術前放射線療法の著効した患者さんに対しては、手術を行わず積極的に経過観察を行う治療方針(Watch and Wait)にも対応しております。

 大腸癌の治療方針は、遠隔転移がないStage I~IIIと、遠隔転移があるStage IVで異なります。個々の患者さんの治療方針は、「下部消化管グループ検討会」で十分に検討いたします。Stage I~IIIの大腸癌では、手術治療が中心となり、Stage IVの大腸癌では、抗癌剤治療と手術が中心になります。Stage I~IIIの大腸癌では、合併症のない手術を目指し、患者さんが円滑に社会復帰できるように心がけています。Stage IVの大腸癌では、個々の患者さんの遺伝子変異の特徴に応じて最適な抗癌剤を選択し、さらに手術を加えて癌をコントロールし、根治や生存期間の延長を目指します。

炎症性腸疾患に対する外科治療

 潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患に対して、消化器内科と連携して治療にあたっております。特に、潰瘍性大腸炎に対する外科治療の経験が豊富であり、全国有数の施設となっています。近年では、炎症性腸疾患に対する内科治療が進歩してきたことから、外科治療が必要となる患者さんは減少傾向であり、大変喜ばしいことだと思います。しかし、潰瘍性大腸炎の炎症性発癌は増加傾向にあり、炎症が長く持続する患者さんでは炎症性発癌に注意していく必要があります。当グループでは、炎症性腸疾患における炎症性発癌に対する手術に加えて、炎症性発癌における遺伝子変異に基づく新規治療およびサーベイランス方法の開発に関する研究も行っています。

卵巣癌などの高度に進行した骨盤内悪性腫瘍の手術

 当グループでは、直腸癌の手術で得た解剖学的知見や手術手技を基にして、高度に進行した骨盤内悪性腫瘍の手術を行っています。高度に進行した骨盤内悪性腫瘍では、婦人科や泌尿器科などの診療科とともに術前検討を行い、共同で手術を実施していきます。特に、卵巣癌は、直腸などの消化管に浸潤をきたすことの多い癌腫であり、消化管を含めた腫瘍減量手術が予後改善に寄与することが分かっています。当グループでは、骨盤内悪性腫瘍の手術においても、合併症の少ない手術を実施し、患者さんが次の抗癌剤治療に円滑に移行できるように心がけています。

がんゲノム医療

 がんの原因は、遺伝子の異常であることが分かっています。2019年から、がん遺伝子パネル検査が保険収載されたことによって、個々の患者さんのがんの遺伝子変異を基にして治療方針を決めていく「がんゲノム医療」が開始されました。大腸癌は、遺伝子変異の解析と研究が最も進んだ癌種の一つであり、「がんゲノム医療」のモデルとなる癌腫です。当グループは、新潟大学医歯学総合病院がんゲノム医療センターと連動して、大腸癌を含む固形癌全般のがんゲノム医療を推進し、新潟県内におけるがんゲノム医療のエキスパートの人材育成を行っています。

遺伝性大腸癌に対する外科治療およびサーベイランス(積極的な経過観察)

 全ての大腸癌の中で、おおよそ3割の患者さんでは、何らかの遺伝的な要因が関与していると考えられています。「家族性大腸腺腫症」や「リンチ症候群」は、遺伝性大腸癌の代表格であり、大腸癌をはじめとした関連腫瘍を発生しやすいことが知られています。「家族性大腸腺腫症」や「リンチ症候群」では、親から子へ遺伝子の特徴が引き継がれ(常染色体優性遺伝形式といいます)、家族性に大腸癌などの関連腫瘍を発生する場合があります。当グループでは、遺伝性大腸癌に対する外科治療およびサーベイランスを行っています。さらに、新潟大学医歯学総合病院遺伝医療センターと連携して遺伝カウンセリングを行い、血縁者に対する情報提供やサーベイランスにも対応しております。

研究

 当グループでは、実臨床における臨床的課題を解決すべく、直腸癌の術前化学放射線療法の治療効果予測に関する研究、炎症性発癌における遺伝子変異に基づく新規治療およびサーベイランス方法の開発に関する研究、大腸癌における腸内細菌叢の意義に関する研究、大腸癌の遺伝子変異を予測する人工知能に関する研究、などを実施しています。

 さらに、当グループでは、新潟県内、国内、国外の施設と共同研究を実施しております。新潟県内の施設との共同研究では、大腸癌を含む悪性腫瘍を対象として、「悪性腫瘍におけるゲノム解析データベース構築に関する研究」を行い、がんゲノム医療に資する先進的な研究を行っています。国内の施設との共同研究では、大腸癌研究会において実施されている複数のプロジェクト研究に参画し、日本国内から世界に向けた情報発信に努めております。国外の施設との共同研究においては、米国Memorial Sloan Kettering Cancer Centerなどとの共同研究において、結腸癌術後の予後を予測するノモグラム(J Clin Oncol. 2021. doi: 10.1200/JCO.20.02553.)などの研究成果を発表しております。