女性医師のみなさんへ

医学生・研修医の皆さんへ

平成16年(2004年)卒 中野 麻恵

大学スタッフの立場から

これからどのような専門を選ぼうか進路に迷われている女性医師の皆さん、またこれから医師になろうとしている女子学生の皆さん、少しでも外科に興味がある方に参考になれば幸いです。

私は、平成16年卒で初期研修が始まった最初の世代です。2年間の臨床研修を経た後に消化器・一般外科を専攻いたしました。私が入局した当時の外科は、バリバリの体育系のノリで、医局にいる少数の女性医師も男性医師と同様に朝から晩まで働き続ける先生が多かったです。

現在では、女性医学生の増加とともに消化器・一般外科の女性の入局者が徐々に増えてきています。それでもまだまだ女性医師の占める割合が少ない科のうちの一つだと思います。現在当科医局員に属している女性外科医15名のうち、半数を超える8名が出産後の子育て期間です。それぞれ自分のキャリアやプライベートの状況に応じた働き方をしており、ベビーシッターや民間サービスを最大限に利用して時間外対応も含めたほぼ全ての業務をこなすもの、一定期間仕事を制限しながらできる範囲の業務をこなすものなど、その働き方は一様ではありません。

私自身は、小学生と幼児の2児の子育て中です。フルタイムで働いていますが、夜間の呼び出しや休日の出勤、宿直は免除していただいております。また、子どもの学校行事や保護者役員会などの用事で有給を使わせていただくことや子どもの体調不良による急な早退や遅刻も配慮してもらっています。

限られた時間の中で、他のスタッフや同僚と仕事をしていく女性外科医に必要な資質は、コミュニケーション能力だと思います。できないことは周囲の理解を仰ぎつつ、自分の仕事には責任をもって柔軟に対応することが重要だと思います。

また、今では男女問わずワーク・ライフ・バランスを考えた社会へと変わりつつあります。まだ少数ですが男性医師でも育休を取得する先生もいらっしゃいます。性別にとらわれず自分の興味のある専門を選んでいただくことが1番だと思います。

少しでも外科に興味があり、外科医に憧れを抱く気持ちがあれば、是非私たちと一緒に働いてみませんか。

平成30年(2018年)卒 内田 遥

若手乳腺外科医の立場から

私は、新潟市の亀田出身で高校までは新潟市で過ごしました。山形大学に進学し、卒業後は長岡中央綜合病院にて初期研修を行いました。2019年に消化器・一般外科に入局いたしました。

山形大学で学生実習に勤しんでいた時は、実は内科志望でした。呼吸器内科や腎・膠原病内科に興味を持っており、外科の選択肢はあまり考えていませんでした。大学を卒業し新潟に戻り、研修医として外科でお世話になっていた際に、乳腺外科を今までよりも身近に感じる機会があり、興味を持ち始めました。

乳腺外科を志望した理由は、まず診療において女性の先生で良かったといわれることが多く、女性外科医であることを生かせる分野であると感じたからです。また、最初の診断から初期治療(手術、薬物治療、放射線治療)、再発治療、緩和ケアなどあらゆる分野にわたって診療に携わることで、ひとりの患者さんと長い期間向きあうことが可能です。診療だけではなく、研究に関しても興味深い分野が多いと感じています。現在も分子標的薬を中心に次々と新薬が開発・保険収載され、薬物療法は日進月歩です。腫瘍の進行・転移などにおける分子細胞生物学的な機序についての基礎研究も重要です。他にも、病理や遺伝性乳癌、検診など、乳腺診療は多岐にわたっており、その中で自分が特に興味のあることを臨床・研究の両方で究めていくことが可能です。

現在、日本女性において乳癌が罹患率第1位であり、患者数は年々増加しています。しかし、新潟県の乳腺外科に従事している医師数は、他県と比較して圧倒的に少なく、南北に長い新潟県全体をカバーするには、全く足りていません。一人でも多くの仲間を切望しています。外科といえば体育会系、体力勝負!というイメージのために、あと一歩を迷っている方がいるかもしれませんが、心配無用です。かくいう私も、外科向きの性格ではないと自負していますが、優しく楽しい先生方のおかげもあり、忙しい中でも充実した毎日を過ごしています。乳腺外科に興味がある方は、ぜひ気軽に声をかけてください。もちろん消化器外科志望の方も大歓迎です。まずは一緒に美味しいご飯を食べに行きましょう!

平成25年(2013年)卒 荒引 みちる

消化器外科医の立場から

将来の進路として一般外科・消化器外科を考えているけれど、体力や家庭との両立など不安なことが多く、悩まれている方もいるのではないでしょうか。

外科に興味を持っている女性医師、医学生の皆さんが不安に感じる点や心配されているかもしれない点について、私なりの意見をお伝えしたいと思います。

①体力について

大きな手術で長時間の立位を余儀なくされたり、夜間の呼び出し、緊急手術などが必要になったりなど体力勝負のイメージが強い外科。男性医師と比較して、体力面などに不安を感じる方もおられるのではないでしょうか。

もちろん楽な仕事とは言えませんが、外科診療はチームで行うものであり、医師同士お互いを助け合う体制が整いやすい側面もあります。さらに近年では鏡視下手術やロボット手術の普及により、外科医にかかる身体的負担もますます少なくなってきています。体力や体格による男女差は少なくなってきており、今後女性外科医の活躍の場はますます広がっていくのではないでしょうか。

②出産・育児などライフイベントとキャリア形成について

私は卒後9年目に妊娠・出産し、現在1児の母親をしています。妊娠した年に日本内視鏡外科学会(JSES)内視鏡技術認定医を取得しました。妊娠・出産という大きなライフイベントと、キャリア形成の一環としての技術認定医取得のタイミングについて悩みましたが、指導医、先輩・同期・後輩、家族の理解とサポートもあり無事合格することができました。

目指すキャリアも、ワークライフバランスも人それぞれだと思います。私の場合は子供と過ごす時間はできるだけ子供に集中し、子供がくれる幸せを享受できるよう心がけています。私にとって家族・子どもと過ごす時間は外科を続けていくための良い気分転換、休息であり、モチベーションでもあると思っています。

外科は楽しいです。育児も楽しいです。皆さんにもワークもライフも楽しんでいただきたいです。外科に興味のある女性医師の皆さん、是非一緒に働き、充実した日々を過ごしましょう。