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上部消化管班

上部消化管グループは石川准教授を筆頭に、4名のスタッフと11名の医局員で構成されております。主に食道・胃領域の悪性疾患、良性疾患を担当しております。

食道癌、胃癌の診療は手術が中心ですが、内視鏡治療、化学療法、放射線療法も重要な治療手段であり、キャンサーボードを中心に消化器内科医、腫瘍内科医、放射線治療医と詳細な症例検討を行っております。大学病院という特性上、高度進行癌や合併症を有する症例の診療を積極的に行っております。以下に当グループで治療する代表的な疾患の概略をお示しします。

食道癌

 食道癌に対する手術は右開胸を行い,リンパ節郭清とともに胸腹部食道を全摘することが必要です。そのため、頸部・胸部・腹部といった複数の領域に手術操作が及び、消化器癌の外科治療の中でも侵襲が大きく、難易度の高い治療となります。胸部食道癌では右開胸食道切除・3領域リンパ節郭清を標準術式としています。2011年からは胸部にリンパ節転移がなく食道の腫瘍も小さい、比較的早期の患者さんに対して腹臥位による胸腔鏡下食道切除術を導入し、患者さんの体への負担を軽減する取り組みを行なってきました。現在では進行癌の患者さんにも適応を拡大し、低侵襲かつ根治的な治療を行うよう努めております。頸部食道癌は下咽頭との境界領域であり、耳鼻咽喉科腫瘍班と連携して治療を行っております。このため下咽頭癌に対する咽頭喉頭摘出術の消化管再建も当グループで担当しております。

また、進行癌では術前補助化学療法の併用を標準治療としているため、化学療法も当科で担当しております。隣接した臓器への浸潤が疑われるような高度局所進行癌に対しては導入化学療法を行うことで根治切除を目指すあきらめない治療を行なっています。また、化学放射線療法後の遺残・再発に対するサルベージ手術も積極的に行っております。化学放射線療法を行う際には、化学療法や栄養状態などの全身管理を当科で担当しています。

このように食道癌治療においては様々な治療手段を組み合わせた集学的治療が重要であり、当グループはその中心的な役割を担っております。食道癌の手術はQOLが大きく損なわれることがあり、根治性とQOLとのバランスを十分に考慮することも食道外科医が担うべき重要な責務と考えております。当院は日本食道外科学会の認定を受けた食道外科専門医を育成するための施設であり、これらの高度な技術を次世代に伝えるための後進への指導も積極的に行っております(https://www.esophagus.jp/public/hospital/hokuriku.html)。

 臨床研究としては、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の参加施設として、進行食道癌に対する術前治療の開発(JCOG1109)、切除不能局所進行胸部食道扁平上皮癌に対する根治的治療の開発(JCOG1501)、切除不能または再発食道癌に対する化学療法の開発(JCOG1314)に関する臨床試験を行なっております(http://www.jcog.jp/basic/org/group/jeog.html)。また、術後合併症を予防するためのリハビリテーションや、安全な食道切除後消化管再建の術式開発、術後の嚥下機能や呼吸機能といったQOLを維持するための取り組みをテーマに研究を行っております。さらに、近年では食道癌のリンパ節転移や術前補助化学療法の治療効果に関わるメカニズムの解明や、食道癌の発生や進行に関わる遺伝子異常の解明をテーマとした基礎研究にも着手しております。

胃癌

 近年では術後の生活の質を重視した医療が注目されておりますが、胃切除後は食事摂取量の減少、食事習慣の変化、体重減少を伴うことが知られております。当科の胃癌手術では胃癌の根治を目指した手術はもとより、できる限り「胃を温存する」ことを意識し、特に早期胃癌に対しては縮小手術を積極的に導入してきました。近年では噴門領域(胃の入口)の癌が増加しており、2016年からは逆流防止機能を有す消化管吻合を行った噴門側胃切除術を導入して、良好な治療成績を上げております。また、2012年から導入した腹腔鏡下胃切除術についても、患者さんの身体への負担軽減を考慮して継続的に行っております。

一方で高度進行癌症例の紹介も多く、術前後の補助化学療法や、再発に対する治療も積極的に行っております。また、肝不全症例、透析症例、慢性呼吸不全症例などの重篤な合併症を有する症例の治療も、大学病院の責務です。難病指定の膠原病合併症例や、閉鎖病棟への入院を要する精神疾患合併症例など、医歯学総合病院のリソースを最大限に活用し、一般病院では治療困難な胃癌に対する治療も行っております。

 研究テーマとしては、早期胃癌に対する縮小手術のQOL検討、胃癌術後の栄養評価・骨格筋量変化、高度進行胃癌に対する補助化学療法による予後改善効果の研究や、癌遺伝子解析パネルを用いた遺伝子異常の解明等をテーマとして基礎的な研究にも取り組んでおります。

消化管間葉系腫瘍(GIST:ジスト)

GISTは主に胃や小腸から発生し、粘膜下腫瘍の形態を呈する腫瘍です。病因となる遺伝子が解明され、分子標的治療薬が非常に大きな治療効果を示したため、注目を集めた疾患です。

GISTは年間の発生頻度が100万あたり10-15人と稀な疾患ですが、当科では分子標的治療薬認可当時から積極的な治療を行ってきたため、豊富な診療経験があります。特に、転移・再発GISTに対する集学的治療に力を入れており、分子標的治療後の残存腫瘍や耐性腫瘍に対する外科的切除も積極的に検討を行っております。

研究テーマとしては、分子標的治療耐性腫瘍における集学的治療の効果、術前分子標的治療後の手術、分子標的治療薬血中濃度と副作用・効果との関連などがあり、稀少疾患であるためGIST研究会等での多施設共同研究を中心として研究を行っております。

良性疾患

 特発性食道破裂は重篤な縦隔炎をきたし全身状態が急速に悪化する疾患で、当グループで緊急ドレナージ手術を行います。食道憩室や食道アカラシアなどの食道良性疾患に対する手術療法も行っています。