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2025年8月~2026年7月 RSウイルス全国調査の結果<ニルセビマブ・パリビズマブ・クレスロビマブに関連するF蛋白質変異の解析>

2025年8月から2026年7月までの期間に、日本各地でのRSウイルス(RSV)の流行状況について調査を行いました。全国9道府県の外来医療機関にご協力いただき、RSウイルス感染症が疑われる患者から鼻腔拭い液や鼻汁などを採取しました。新潟大学に輸送後、RSウイルスの検出と型判定を、リアルタイムPCR法を用いて行いました。さらに、全ゲノム解析については、次世代シーケンサーを用いて実施いたしました。

 

【検体採取状況】

2025年8月から2026年7月までに、全国から137検体が採取されました。そのうち118件の初診時検体についてリアルタイムPCRを実施しました。サブタイピングの結果、A型は26件(22.0%)、B型は61件(51.7%)、サブタイプが判定できなかったRSV陽性の検体(以後、RSV陽性検体)は25件(21.2%)、陰性は6件(5.1%)でした(表1)。

【地域別RSウイルス流行型】

サブタイピング結果に基づき、地域別の流行型を示す分布図を作成しました(図1)。

2025年8月から2026年7月は、全国でB型が優勢でした。A型が優勢な地域は三重県、B型が優勢な地域は北海道、新潟県、滋賀県、山口県、沖縄県でした。愛媛県ではわずかにA型が優勢でした。

 

【疫学曲線】

国立感染症研究所の5類定点発生動向調査に基づく定点当たり報告数と、当教室で収集した検体のサブタイピング結果(A型・B型・RSV検出数)、およびサンプル数(RSV陰性を含む)を月別に集計し、疫学曲線を作成しました(図2・図3・図4)。

○全国(図2)

定点報告数は2025年9月にピークを示した後、漸減しました。当教室におけるRSウイルスの検出数は2025年9月(沖縄県以外での流行)、2026年6月(沖縄県での流行)の2回にピークを示し、いずれもB型の流行によるものでした。

 

○沖縄県(図3)

定点報告数は2026年5月から7月にかけて増加しました。当教室の検体においても2026年6月にピークを示し、7月も多くの検体が収集されました。2025年8月から12月はA型が優勢、2026年1月から7月はB型が優勢でした。また、晩夏から翌年の初夏までは低水準で推移しました。

 

○沖縄県以外(北海道~九州)(図4)

定点報告数は2025年9月にピークを示し、その後漸減しました。当教室で収集した検体においても2025年9月にピークを示し、B型が多く検出されました。夏から冬にかけてはB型が、春から初夏にかけてはA型が優勢でした。

 

【まとめ】

2025-26年シーズンでは、沖縄県では2026年6、7月に、沖縄県以外では2025年9月に定点報告数および当教室のRSV検出がピークを示しました。なお、新型コロナウイルス流行以降、RSウイルスは夏季に流行する傾向がみられており、2024-25年シーズンには、4-6月にピークがみられました。2025-26年シーズンでは、沖縄は前年度より約1ヶ月、沖縄県以外は2、3ヶ月遅くなっており、コロナ前の流行時期に近くなっていました。

今後の動向についても、定点報告数と当教室の検体の双方を用いて、継続的に監視していく予定です。

 

【患者情報】

期間中に118検体を収集しました。リアルタイムPCRによる型別判定の結果、A型は26件(22.0%)、B型は61件(51.7%)、RSV陽性検体は25件(21.2%)でした。なお、陰性は6検体(5.1%)でした(表2)。年齢の中央値は1.17歳であり、年齢の範囲は0.08~14.42歳でした。男女比については、男性が57.6%とやや多い傾向でした。主な症状である発熱、咳、鼻汁について、患者情報が欠損している症例を除外して解析した結果、発熱は102例中70例(68.6%)、咳は102例中100例(98.0%)、鼻汁は101例中99例(98.0%)に認められました。

また、調査期間中における抗RSウイルスモノクローナル抗体製剤の使用例はベイフォータス®(nirsevimab)が3例、シナジス®(palivizumab)はありませんでした。さらに、母子免疫ワクチンであるアブリスボ®の接種歴が母親にある患者は8例でした(表3)。抗体製剤またはワクチンの接種歴を有する症例の割合は、A型で3.8%、B型で9.8%、RSV陽性検体で16.0%でした。

 

【F蛋白質解析】

次世代シーケンサーで全長配列が得られたA型69件・B型56件を対象に、F蛋白質の中和エピトープに生じたアミノ酸変異を解析しました(表4)。中和エピトープは抗体製剤が結合する部位であり、変異の位置によっては製剤の感受性低下(耐性)につながる可能性があるため、注目されています。

 

注目すべき変異として、B型のSite ØにK68N変異が2件確認されました。これはニルセビマブ耐性に関与する可能性が報告されています。これらはニルセビマブの投与歴はありませんでしたが、このうち1例は母体へのRSVワクチン接種歴のみを有する症例でした。

 

その他にも、各抗体製剤が認識する中和エピトープ内に位置するアミノ酸変異は複数確認されましたが、これらの変異が抗体製剤の効きやすさ(感受性)に影響するという明確な報告は、現時点ではありません。

中和エピトープや耐性部位の確認については、以下のサイトを参考にしました。

https://virusfrenchresistance.org/virus-french-resistance-rsv/

 

 

【RSウイルスの全ゲノム解析】

次世代シーケンサーを使った遺伝子解析を実施し、A型は69件、B型は56件の全長シークエンスを得ることができました。RSウイルスのクレード分類は、Goyaら(2024)が提唱した全ゲノム配列に基づく分類法に従いました[ https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/30/8/24-0209_article ]。

A型では、A.D.1*系統(A.D.1、A.D.1.4、A.D.1.6、A.D.1.9)、A.D.3*系統(A.D.3、A.D.3.1、A.D.3.7、A.D.3.9、A.D.3.12)、A.D.5*系統(A.D.5.1、A.D.5.2)などの多様なクレードが検出され、クレードの分布に明確な季節性や地域性は見られませんでした(図5)。また、世界的な系統樹においても、複数のクレードが同時期に検出されており、単一クレードへの急速な置き換わりや明確な優占化は認められませんでした(図6)。

一方、我々が検出したB型では、すべてB.D.E.1クレードに属していました(図7)。A型では複数のクレードが並行して検出されたのに対し、B型では世界的にもB.D.E.1クレードに属する株が近年の主流となっており、国内検出株もこの系統に含まれていると考えられました(図8)。

Nextstrain 系統樹

RSV-A:https://nextstrain.org/rsv/a/genome/6y

RSV-B:https://nextstrain.org/rsv/b/genome/6y

2026-10-27 | Posted in What’s New, ブログ|Blog | Comments Closed