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第72回新潟日報文化賞(学術部門)
加齢に伴って、糖尿病や動脈硬化、高血圧などの生活習慣病の罹患率が増加し、その結果、虚血性心疾患や脳卒中の発症の原因となっています。健康寿命を短縮しているこれらの疾患は、多くの高齢者において共通に認められることから、老化の形質の一部として捉えることができます。すなわち、これらの疾患の究極的な治療のターゲットは、老化を調節する仕組みそのものであると考えられます。しかし、これまで加齢に伴って個々の病気がどのように変化するかという観点からの研究は行われてきましたが、老化・寿命という側面からみた包括的な研究は行われていませんでした。

このような現状で、老化・寿命のメカニズムの解明に関する研究は、最近20年間で飛躍的な進歩を遂げています。特に、加齢や過食などのストレスによって体内に蓄積した「老化細胞」が、様々な生活習慣病や認知症の原因となっていることが明らかになってきました。この様な考え方を「細胞老化仮説」と呼びますが、受賞者の南野教授はこの分野において高い研究業績を上げています。例えば、血管が高血圧や高コレステロール血症などによるストレスを受けると、血管の細胞の老化が進み、虚血性心疾患の発症原因となること、過食によるストレスによって内臓脂肪に老化した細胞が蓄積することで、糖尿病の発症や進展に関わっていることなどを世界で初めて明らかにしました。また、老化した細胞が心臓に蓄積することで心不全になったり、一つの臓器が老化すると他の臓器の老化が進むなど、新たな知見を発表しています。さらに南野教授は、現在、一旦蓄積した老化細胞を除去する治療法の開発や、老化した細胞から放出される悪玉分子を標的にした治療の開発などを進めています。これらの治療法の開発が実現すれば、一旦病的な老化が進んだ状態でも可逆的に改善させることが期待できることから、認知症や生活習慣病を含めた様々な加齢関連疾患の治療開発につながるとともに、社会的にも非常に大きなインパクトがあるものと思われます。

以上のような業績により、この度、受賞事由「加齢関連疾患の発症メカニズムの解明とその治療法の開発」として認められることとなりました。受賞に際して南野教授は、「今後も様々な遺伝子改変マウスモデルや老化モデル解析技術、最新のオミックス解析技術などを結集することによって、老化細胞を標的とした新たな抗老化治療の開発に挑みたい。」と述べています。