法医学

1.研究概要

 研究は法医解剖を通じて幅広い範囲にひろがっており、特に、DNAによる個人識別、交通事故損傷の客観的評価法、賠償医学、法医中毒学、医学史、生命倫理学の6つのテーマに分けられる。

 このうち、DNA多型による個人識別の研究では、国内でいちはやくDNAフィンガープリント法を、アイソトープを用いないコールド法として確立させた。次いで、PCR法による人獣鑑別、性別判定などの研究を行い、特に、女性のみが有する不活性X染色体由来のバンドを証明することによって、積極的に女性と診断する方法を開発した。また、マイクロサテライト多型(STR多型)の組合せによる個人識別法の研究では、同一染色体上の複数のSTR多型のハプロタイプ分析及び家系調査による突然変異の発生についての研究を精力的に行っている。

 交通事故損傷の客観的評価法の研究では、交通事故損傷を中心に、国際疾病分類(ICD-10)や損傷スケール(AIS-90)による分類、コード化を行っており、交通事故の状況を含め、コンピュータ上でのデータベース化を目指している。これらの成果は、日本法医学会、日本交通科学協議会などで発表している。

 賠償医学の研究では、交通事故や医療事故の実際の事例や判例について、法学研究者や損害保険の実務者などと共同研究を行い、日本賠償科学会や日本交通法学会などで発表及び検討を続けている。特に、疾病による余命の短縮(縮命度)や事故と疾病との因果関係の割合的認定(寄与度)についての医学データに基づく分析を行っている。

 法医中毒学の研究は、法医解剖時のアルコール濃度、薬毒物の分析を中心に行っているが、学内の薬剤部、救急部などのほか、新潟薬科大学や新潟県警の科学捜査研究所との連携を密にして、新潟県における救急医療等の際の薬毒物の分析システムの確立を目指している。同時に、救急医療体制全般に対する法医学の寄与の可能性についても検討している。

 法医学史を中心に、医学史の研究を行っており、日本医史学会のメンバーとの情報交換を中心に、全国の研究者と交流している。

 生命倫理学的な研究は、保健学科の宮坂道夫講師との共同研究を中心に、大学内の法学、哲学、倫理学、心理学、助産学などの研究者と新潟生命倫理研究会を毎月開催して、実際の事例検討を中心に活発な意見交換を行い、日本生命倫理学会をはじめ、国内外の学会で発表している。

 詳しい研究内容については、法医学ホームページをご覧ください。