分子生理学

1.研究概要

 分子生理学分野は、聴覚の末梢器官である内耳蝸牛を標的とした基礎研究を遂行している。その目的は、蝸牛機能の仕組みの理解と難聴の病態の解明である。電気生理学・計算科学グループおよび分子生物学グループから構成されている。2つのグループは互いに共役関係にある。
 分子から器官機能を解析するため、全ての手法を併せて行えるスタッフと設備を備えており、聴覚分野において世界でも類を見ない独自の研究を行っているのみならず、異分野の第一線の研究者との全国規模の医工連携を通じて、最先端の方法論の開発を含めた、オンリーワンの研究を手掛けている。
 詳しい研究内容については、分子生理学ホームページをご覧ください。

2.研究グループ
  • 電気生理学・計算科学グループ
  • 分子生物学グループ
3-1.電気生理学・計算科学グループ

研究テーマ:

  • 内リンパ液高電位成立機構に関する電気生理学的研究
  • 内リンパ液高電位成立機構に関する理論科学的研究
    (大阪大学大学院医学系研究科分子細胞薬理学講座および金沢大学大学院自然科学研究科数物科学専攻計算機実験学講座との共同研究)
  • 蝸牛基底板上進行波に関する研究
    (新潟大学工学部電気電子工学科光エレクトロニクス分野との共同研究)
  • 蝸牛内薬物動態に関する研究
    (慶應大学理工学部化学科無機物性化学研究室との共同研究)
3-2.分子生物学グループ

研究テーマ

  • 内耳の組織構築や内リンパ液環境維持に寄与するタンパク質の研究
    (大阪大学大学院医学系研究科薬理学講座生体システム薬理学との共同研究)
  • 内耳の組織構築や内リンパ液環境維持に寄与する糖鎖の研究
    (新潟大学理学部生物学科生化学教室との共同研究)
  • 光遺伝学を駆使した難聴の研究
    (慶應大学医学部精神・神経科学教室との共同研究)
4.研究の成果

[分野] 分子生理学(電気生理・計算科学グループ)
[研究テーマ] 内リンパ液環境の成立機構に関する電気生理・計算科学的研究

[内容]
 蝸牛は、+80 mVの高電位を示す「内リンパ液」を有する。高電位の成立機構を解明するため、当教室では国内でも稀な実験手法である「二連管ガラス管を用いた微小イオン電極法」により、内リンパ液環境の維持に必須な蝸牛血管条内の電位・K+環境の測定を行っている。また、数理モデルを駆使することで、実験結果を理論的に解釈し、生命現象の背景の理解に努めている。現在、実験・計算の双方向からのアプローチで様々な仮説の検証を行っている。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25143138
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22619324

[写真など]

[分野] 分子生理学(分子生物学グループ)
[研究テーマ] 内耳の組織構築や内リンパ液環境維持に寄与するタンパク質の研究

[内容]
 内耳蝸牛は、極めて特徴的な組織構築やイオン・電位環境が備わっているが、これらを成立・維持する機構とそれに関わるタンパク質は未だ十分に解析されていない。当教室では、大阪大学との共同研究を通じて、蝸牛血管条を構成する細胞の膜成分に着目した網羅的タンパク質解析を行っている。検出されたタンパク質のデータ解析により、難聴に関連する新たな分子やこれを制御する様々な因子の候補が、徐々に抽出されてきている。

http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/ejn.12973/abstract

[写真など]