救急医学

1.研究概要

 病院救急部・集中治療部における生体情報管理システム内に自動的に保存された生体信号データを用いて、波形データと重症度・転帰等との関連について、周波数解析、複雑解析等を用いて、検討を行っている(倫理委員会の承認済)。
新潟市消防本部と共同して、救急車搬送の効率化・適正化について、地理情報システム(GIS)を用いて、検討を行っている(個人情報保護審議会の承認済)。
 詳しい研究内容については、救急医学ホームページをご覧ください。

2.研究テーマ

(1)生体信号解析に関する研究

  • 波形データ解析に関する研究
  • 心拍変動(HRV)に関する研究
  • 圧受容体感受性(BRS)に関する研究

(2)GISを用いた研究

  • 自動体外式除細動器AED適正配置に関する研究
  • ドクターヘリに関する研究
  • 救急搬送体制に関する研究 
3.研究の成果

[分野] 生体信号解析に関する研究
[研究テーマ] 波形データ解析「1秒間の心室細動波形による除細動成否の予測」

[内容]
 心停止において、電気除細動施行前にその成否が予測可能であれば、無駄な心マッサージの中断を避けられる。除細動直前の5.12秒及び1秒前の心室細動(VF)波形から除細動の成否の予測が可能か検討した。連続wavelet変換(CWT)により、 VF波形の低域 (1-3 Hz)、中域(3-10 Hz)、高域k(10-32 Hz) バンドにおける総エネルギーを算出した。5.12秒のVF波形については、周波数解析、複雑性解析を行った。ロジスティック解析では、5.12秒のVF波形における中心周波数及び1秒間のVF波形における中域バンドの総エネルギーが有意な予測因子であった。図は上段が5.12秒間のVF波形、中段がCWT変換による周波数変換、下段が1秒間の周波数変換を示す。

J Anesth. 2011 ;25(1):34-41

[写真など]

[分野] GISを用いた研究
[研究テーマ] AED配置に関する研究「コンビニ店舗と警察施設に配置した場合のシミュレーション」

[内容]
  院外心停止(SCA)の70%は自宅で発生、当然としてPADの対象外となっている。そこで、新潟市において、24時間アクセス可能な場所として、コンビニ店舗及び警察施設(計325箇所)にAEDを配置した場合をGISによりシュミレーションした。その結果、配置数は既存の57%に留まるものの、200m及び100m圏内に、自宅発生のSCAの16.5%、5.7%、さらに自宅発生で目撃有のSCAは、それぞれ17.8%、5.1%が起こると予測され、自宅発生のSCAに対して効果的な設置場所であることが示された。図はAED配置200m圏内と自宅発生のSCAの位置を示す。
日本救急医学会雑誌 2011;15(1):1-6

[写真など]