血液・内分泌・代謝内科学

1.研究概要

 血液・内分泌・代謝内科学分野は、内分泌代謝内科学と血液内科学から成り、両分野とも、現場応用を目ざした基礎研究と診療エビデンス立脚のための臨床研究が行われている。さらに両分野が協力しあうことにより、診療、教育及び研究において、生活習慣病から悪性腫瘍に至る幅広い総合内科学の領域をカバーしている。
 詳しい研究内容については、血液・内分泌・代謝内科学ホームページをご覧ください。

2.研究グループ
  • 内分泌代謝内科学グループ
  • 血液内科学グループ
3-1.内分泌代謝内科学グループ

研究テーマ

  • 糖尿病、脂質異常症、高血圧、肥満など生活習慣病と動脈硬化性疾に関する臨床疫学研究と臨床試験
  • 健診、人間ドック、レセプトなど各種医療ビッグデータを活用した、上記疾患の予測や予防・治療への応用
  • 東アジア人における上記疾患の病態的特徴の解明や治療エビデンスの確立
  • 上記疾患の食事療法、運動療法ならびに心理面に関する研究
  • グルカゴンの日内変動や核内受容体制御に注目した新規糖尿病治療薬の開発
  • 糖尿病患者におけるAGEの測定、合併症との関連の検討
  • 糖尿病患者における歯周病治療とアディポサイトカイン動態の検討
  • 糖尿病における腎血流自動調節能の解析
3-2.血液内科学グループ

研究テーマ

  • 造血器腫瘍の病態解析に関する研究
  • 慢性骨髄性白血病の治療研究
  • 悪性リンパ腫における予後因子の解析
  • 難治性悪性リンパ腫に対する新規治療法の開発
  • 骨髄腫に対する新規薬剤を用いた適正治療法の開発
  • 造血幹細胞移植における同種免疫・抗腫瘍免疫に関する研究
  • 造血環境と造血幹細胞、造血器腫瘍の病態形成についての基礎研究
  • 難治性造血器腫瘍に対する新しい造血幹細胞移植法の開発
4.研究の成果

[分野] 内分泌代謝内科学
[研究テーマ] 糖尿病、脂質異常症、肥満などの生活習慣病の臨床疫学研究

[内容]
日本を含む先進諸国では近年、糖尿病・高脂血症・高血圧・痛風・肥満ややせすぎ・メタボリックシンドローム・骨粗鬆症などの代謝内分泌疾患が蔓延し、人々の健康と生命を脅かしています。これらの代謝内分泌疾患や生活習慣病を克服するためには、科学的根拠に基づくデータ、特に大人数の臨床データ(検診などを含む)を解析した研究結果(臨床エビデンス、大規模疫学データ)に基づく予防、診断、治療が求められます。この課題では、臨床研究、疫学研究、臨床データ解析を通じて、代謝内分泌疾患、生活習慣病の予防と治療に役立つエビデンスを確立し、 世界の人々の健康長寿に貢献することを目標としています。特に、食事、運動などの生活習慣とその指導を最も重視し、そのためには、医学や内科学単独ではなく、医科学一般(栄養学、身体運動学、スポーツ医学、健康科学、統計学など)との学際的融合も重要だと考えています。すでに海外有名医学誌に掲載された多数のエビデンスを確立し、臨床現場やガイドライン作成に役立っています。

[分野] 血液内科学
[研究テーマ] びまん性大細胞型リンパ腫の予後因子に関する研究

[内容]
 びまん性大細胞型リンパ腫(DLBCL)はR-CHOP療法が標準的治療法とされていますが、治療抵抗性で予後不良な群が存在することが知られています。私たちはFISH解析を用いてDLBCLの約1割にMYC遺伝子領域の転座例があり、極めて予後不良であることを見いだしました(右図)。東海大学、筑波大学との共同研究により、100例という多数例で同様の結果を報告いたしました(Leuk Lymphoma. 2013;54:2149)。この群に対する有効な治療法を検討中です。

[写真など]

[分野] 血液内科学
[研究テーマ] 慢性骨髄性白血病のチロシンキナーゼ阻害薬による治療研究

[内容]
 慢性骨髄性白血病の治療はチロシンキナーゼ阻害薬により大きく変貌し、悪性腫瘍に対する分子標的治療の先駆けとなりました。分子標的薬は従来の抗がん剤とは異なる作用機序を持つため、臨床的にも特有の副作用管理や有効性評価が必要です。我々は関連病院との共同研究により慢性骨髄性白血病に対するimatinibの臨床効果を解析しています。
その結果、治療開始後18ヶ月の早期3-log以上のmass reductionが定量PCRおよびFISH法で確認された症例で有意に予後のよいことを報告しました(Int J Hematol. 2011;93:336)。また秋田大学との共同研究によりimatinibの血中濃度が3-log reductionに関与することを見いだしました(Clin Pharmacol Ther. 2010 88:809)。さらに長期臨床経過観察によりimatinib血中濃度は長期治療のtolerabilityにも影響を及ぼすことを報告しました(ASH meeting. 2012. Dec)。さらに治療効果に及ぼす細胞生物学的な因子につき検討を進めています。

[分野] 内分泌代謝内科学
[研究テーマ] 新規糖尿病治療薬候補BDNFによる抗糖尿病作用機構の解明

[内容]
 世界的に糖尿病患者が著増する中、生活習慣改善指導や既存の薬物療法で良好な血糖コントロールが得られない患者が少なからず存在し、新たな作用機序を持つ新規糖尿病薬が求められています。我々は脳由来神経栄養因子Brain-derived neurotrophic factor (BDNF)について、食欲抑制作用に加えて、膵α細胞からのグルカゴン分泌抑制作用を持つことを報告してきました。BDNFは基礎代謝亢進作用を持つことも報告されており、将来の夢の糖尿病治療薬として期待されます。

[写真など]

[マウス膵α細胞におけるBDNF受容体TrkBの発現]