腎構造病理学

1.研究概要

 構造病理学分野は、よりin vivoに近い形質を示す培養条件の確立、細胞骨格∙細胞間接着分子の同定を通じて、腎糸球体の構造維持機構を明らかにし、慢性腎不全の原因となる糸球体荒廃の機序解明と阻止を目指している。
 詳しい研究内容については、腎構造病理学ホームページをご覧ください。

2.研究テーマ
  • 糸球体上皮細胞の培養系の確立
  • 細胞間接着装置からの糸球体維持機構の解析
  • 細胞骨格からの糸球体維持機構の解析
3.研究の成果

[分野] 構造病理学分野
[研究テーマ] 糸球体上皮細胞の培養系の確立

[内容]
 糸球体上皮細胞(足細胞)は糸球体の機能∙構造維持に重要な役割を果たしている。その性質を明らかにすることは、糸球体の構造維持の機序を知るうえで重要である。その解析の手段として足細胞の初代培養系を確立は必須である。また同時に、生体で隣接するボウマン嚢上皮細胞を培養し両細胞を比較することにより、培養において足細胞の特性を明確にすることができる。足細胞の培養の確立によって、細胞密度、細胞外基質、heparin、ATRAなどが、足細胞の形質に影響を与えることが分かった。

[写真など]

糸球体上皮細胞(足細胞)の初代培養の確立。
(左図)単離糸球体から足細胞が生え出しているところを示した位相差像。
(右図)初代足細胞が足細胞のマーカーであるpodocalyxin(緑)とストレスマーカーであるdesmin(赤)を発現していることを示した蛍光抗体法写真。

[分野] 構造病理学分野
[研究テーマ] 糸球体上皮細胞の細胞間接着装置の解析

[内容]
 糸球体上皮細胞の細胞間結合装置は形態学的に2つに識別される。ひとつはスリット膜であり、もうひとつは密着結合(tight junction)を中心とした細胞間結合複合体である。 両者はダイナミックに移行し合い、生理的状態では前者が、発生・病的状態では後者が主な細胞間結合装置となる。 糸球体上皮細胞の機能を理解するためには、両者の細胞間結合装置の構成成分とその相互作用を解明する必要がある。これまでに、後者の細胞間結合複合体の構成成分として、CAR、Cx43、FAT1、claudin-5(右図参照)を見出し報告してきた。

[写真など]