PMMA透析膜によるタンパク質の吸着特性を解明 − 透析で除去しにくい物質への新たな治療戦略に期待 −
【本研究成果のポイント】
・血液透析患者を対象に、PMMA膜(注1)とポリスルホン(PS)膜(注2)の除去特性を無作為化クロスオーバー試験で比較しました。
・PMMA膜は、β₂-ミクログロブリン(注3)とα₁-ミクログロブリン(注4)をポリスルホン膜より多く吸着しました。
・とくにα₁-ミクログロブリンの総除去量が増加し、拡散・ろ過だけでは除去しにくい物質への新たな治療戦略となる可能性が示されました。
概要
血液透析患者では、生命予後が悪く、様々な全身疾患を合併します。その原因の一つに中・高分子量の尿毒素が透析療法で十分除去されず、体内に残ることが挙げられます。新潟大学医歯学総合病院医療技術部の宮内大輔臨床工学技士、同大学大学院医歯保健学研究科附属腎研究センター腎・膠原病内科学分野の山本卓教授、同大学医歯学総合病院臨床研究推進センタースタッフらは、末期腎不全の血液透析患者を対象に、吸着性をもつポリメチルメタクリレート(PMMA)膜と一般的なポリスルホン(PS)膜のタンパク質の吸着効果を無作為化クロスオーバー法(注5)で比較しました。その結果、PMMA膜はβ₂-ミクログロブリンおよびα₁-ミクログロブリンをPS膜より多く吸着しました。これにより、PMMA膜は通常の血液透析による拡散・ろ過のみでは除去しにくい物質を吸着で取り除くことが示されました。今後は、多施設・大規模研究により、症状や合併症、生命予後への効果を検証する必要があります。
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末期腎不全に対する血液透析では、膜を介した拡散やろ過により尿毒素を除去します。技術の進歩により小分子や一部の中分子は効率よく除去できるようになりましたが、分子量の大きい物質の除去はなお不十分です。これらの蓄積は、透析患者の生命予後、感染症、身体機能低下、透析アミロイドーシスなどとの関連が報告されています。
PMMA膜は、膜内部から外部まで比較的均一な構造と大きな孔をもつ合成高分子膜です。中・高分子量物質を膜表面や膜孔内に吸着して除去できる可能性がありますが、血液透析中の吸着量や時間経過は十分に明らかではありませんでした。そこで本研究では、PMMA膜とPS膜を比較し、β₂-ミクログロブリン(β₂-MG)とα₁-ミクログロブリン(α₁-MG)の吸着と総除去量を詳しく調べました。
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維持血液透析を受ける末期腎不全患者10人を対象とし、各参加者がPMMA膜とPS膜の両方を使用する無作為化クロスオーバー非盲検比較試験を行いました。透析中の血液側クリアランス、吸着クリアランス、15〜240分の累積吸着量および総除去量を評価しました。
β₂-MGの累積吸着量は、PS膜よりPMMA膜で多い結果でした。一方、吸着と拡散・ろ過を合わせたβ₂-MG総除去量は両膜で差がなかったことから、PMMA膜はβ₂-MGを主として吸着で除去することが示されました。α₁-MGの累積吸着量は、PS膜よりPMMA膜で多い結果でした。総除去量もPMMA膜で多くなりました。以上からPMMA膜はβ₂-MGとα₁-MGを吸着により除去していることが示されました。
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本研究により、PMMA膜は拡散やろ過では除去しにくい中・高分子量物質を吸着によって除去できることが、患者を対象とした比較試験で定量的に示されました。今後は、多施設・大規模研究で、生命予後や合併症などの患者にとって重要な指標を改善するか検証します。
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本研究成果は、2026年9月16日、科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。
【論文タイトル】Adsorption of α₁- and β₂-microglobulin by PMMA filters in hemodialysis patients in a randomized crossover open-label comparative study
【著者】Daisuke Miyauchi, Takahiro Tanaka, Takeshi Saito, Susumu Hasegawa, Ryohei Terashima, Nobutaka Kitamura, Masahiro Ishizawa, Mototsugu Tanaka, Suguru Yamamoto
【doi】10.1038/s41598-026-72144-3
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本研究は、東レ・メディカル株式会社から新潟大学への委託研究として実施されました。著者らは、その他に開示すべき潜在的な金銭的利益相反はないことを表明します。
【用語解説】
(注1)PMMA膜:ポリメチルメタクリレート製の透析膜です。膜の孔や表面に物質を吸着させる性質が本研究で改めて示されました。
(注2)PS膜:ポリスルホン製の透析膜です。血液透析で広く使用されています。
(注3)β₂-ミクログロブリン:分子量約11,800のたんぱく質です。体内への蓄積は透析アミロイドーシスなどと関連します。
(注4)α₁-ミクログロブリン:分子量約33,000のたんぱく質です。通常の透析膜では除去が難しい物質の一つです。
(注5)クロスオーバー法:同じ参加者が複数の治療を順番に受け、治療間の差を比較する研究方法です。
本件に関するお問い合わせ先
【研究に関すること】
新潟大学医歯保健学研究科
附属腎研究センター腎・膠原病内科学分野
教授 山本 卓(やまもと すぐる)
E-mail:yamamots@med.niigata-u.ac.jp
【広報担当者】
新潟大学医歯学系総務課
E-mail:shomu@med.niigata-u.ac.jp







