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2020/11/13 研究成果
日本初の人工ペプチド「レダセムチド(S-005151)」を用いた慢性肝疾患に対する線維化改善、再生促進を目指した医師主導治験の開始

新潟大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の寺井崇二教授と土屋淳紀講師の研究グループは、このたび、新潟大学医歯学総合病院(冨田善彦病院長)にて、株式会社ステムリム(本社:大阪府茨木市、代表取締役社長:岡島正恒、以下「ステムリム社」 )から塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木功、以下「塩野義製薬」)へ導出済みの再生誘導医薬開発候補品、レダセムチド(HMGB1注1)の部分人工ペプチド注2)、開発コード:S-005151)を用いたB型肝炎、C型肝炎、脂肪肝、アルコールによる慢性肝疾患・肝硬変(肝臓が線維化して固くなり、機能を喪失する病態)患者に対する医師主導治験(第響蟷邯)を今年度より開始します。本治験は株式会社ステムリム社、塩野義製薬と共同で進めるものです。レダセムチドを用いた基礎研究では、肝硬変モデルマウスに対して高い抗炎症、線維化改善効果を認めています。また、本製剤は既に安全性を確認する目的の第I相試験や栄養障害型表皮水疱症患者を対象とした第響蟷邯海完了しています。今回の治験に用いる製剤は、これまで治療法のなかった線維化を伴う慢性肝疾患・肝硬変の患者に対し新たな治療の選択肢になり得る可能性があります。
 
【本治験のポイント】
・慢性肝疾患に対する線維化改善、再生促進を目指した治療は現在認可されているものではありません。そのため新たな製剤開発が世界的に期待されています。
・「レダセムチド」は動物実験にて高い肝臓の線維化改善効果を持ち、今回線維化を来す慢性肝疾患患者を対象に医師主導治験を行うことになりました。
 
Ⅰ.背景
慢性肝疾患は、B型肝炎、C型肝炎、脂肪肝、アルコール等が原因で長期に肝臓が障害を受け、徐々に障害部に線維化(肝臓が硬くなること)が起こるとともに肝機能が低下する病気で、進行すると肝硬変といわれる状態になります。肝硬変は進行すると黄疸、腹水、肝性脳症、凝固障害などをきたす致死的な疾患で、日本には40万人程度の患者がいると推定されています。本研究グループは、間葉系幹細胞(MSC)注3)が体内のマクロファージ注4)に影響をおよぼすことを利用して、進行した肝硬変に対する新規治療開発に取り組んできました(Terai S, et al. Stem Cells 2006, Watanabe Y, Tsuchiya A, Terai S, et al. Stem Cells Transl Med. 2019)。一方で、内在の間葉系幹細胞を誘導剤として用いた基礎研究を行ってきました。
このたび大阪大学大学院医学系研究科の玉井克人教授の研究グループ、ステムリム社と共同研究を進め、肝硬変モデルマウス注5)にてレダセムチドの高い治療効果が確認されたため、ステムリム社、塩野義製薬と共同で新潟大学医歯学総合病院にて本年度より医師主導治験を開始することになりました。
 
Ⅱ.治験の概要
B型肝炎、C型肝炎、脂肪肝、アルコール等が原因の慢性肝疾患患者が対象で、MRIの測定にて一定以上の肝硬度がある患者で肝機能が一定の基準以下(Child-Pugh スコア注6)7点まで)が対象になります。(おおよそ肝硬変の初期から中期にかけての患者が対象になります。)合計10例の患者さんに1ヶ月間の間に4〜7回投与を行い、6ヶ月間追跡調査を行い、安全性と肝線維化・肝機能の改善効果があるかを確認します。12月より患者登録を開始し、本年度中に製剤の投与が開始される予定です。
 
Ⅲ.治験から期待されるもの・今後の展開
本治験は現在治療薬のない肝線維症に対する効果を期待するもので、線維化を伴う慢性肝炎・肝硬変に対し有効性が確認されれば新たな治療の選択肢になり得るものです。新潟大学発の新たな治療法として期待されています。

用語解説
注1 HMGB1(High Mobility Group Box 1)
細胞の核内タンパク質で、体内の間葉系幹細胞を誘導します。
 
注2 ペプチド
アミノ酸が50個以上結合したものをたんぱく質というが、50個未満2個以上のものはペプチドと呼ばれています。また、近年ペプチドの生理活性作用が注目されています。
 
注3:間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells:MSC)
骨髄・臍帯・体脂肪内などに存在する幹細胞です。線維改善、炎症の抑制、抗酸化作用など様々な機能をもつ多機能な細胞と報告されています。肝臓の分野だけでなく多くの治療に応用されることを期待されています。
 
注4:マクロファージ
全身のあらゆる臓器に存在する血液細胞です。異物除去や炎症の抑制など様々な機能を持つ細胞です。間葉系幹細胞と同じく、多くの治療に応用されることを期待されています。
 
注5:肝硬変モデルマウス
四塩化炭素をマウスの腹腔内に投与して作成した肝硬変を模倣したモデルマウスです。
 
注6:Child-Pughスコア
肝硬変患者の肝機能を、血液のビリルビン、アルブミン、凝固因子のデータや肝性脳症や腹水の程度などを用いてスコア化したものです。
 
 
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
消化器内科学分野
寺井崇二 教授 / 土屋淳紀 講師
E-mail:terais@med.niigata-u.ac.jp
    atsunori@med.niigata-u.ac.jp

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