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2023/03/29 研究成果
MRIによる糖尿病性腎臓病診断への新たな道筋 −糖尿病の革新的マーカーとしての可能性を探る、ナトリウムを可視化する²³Na MRIを用いた研究−

新潟大学大学院医歯学総合研究科腎研究センター腎・膠原病内科学分野の忰田亮平助教、成田一衛教授、筑波大学数理物質系の寺田康彦准教授、国際医療福祉大学成田保健医療学部の拝師智之教授、新潟大学大学院自然科学研究科の佐々木進准教授、株式会社エム・アール・テクノロジー(所在地:茨城県つくば市)らの研究グループは、²³Na MRI(※)装置を用いて、糖尿病モデルマウスでの糖尿病発症の早期段階における、腎臓内のナトリウムの代謝の変化をより鮮明に可視化しました。
これまで実施されてきたような、すでに病状が進んでしまった腎傷害を反映した血中・尿中マーカーをみる検査と異なり、ナトリウムの代謝の変化を、糖尿病の検査でよく用いられている尿中アルブミンの測定と併せて実施することで、糖尿病性腎臓病での尿細管の異常を早い段階で診断して、治療につなげられる可能性があります。
 
(※)²³Na MRI: 生体中の水や脂質の水素原子核には非常に弱いながら磁石の性質があり、こうした原子核種の磁化を超電導磁石の強力な磁場の中で増大させて、原子核に固有な波長の電磁波を加えると、原子核が共鳴して微弱な高周波磁場が生じます。この高周波磁場を捉えて、画像化するのが磁気共鳴画像化(MRI)装置です。人間の体内では、約3分の2は水であり、病院で使われる臨床応用されたMRIは水に含まれる水素の原子核(¹H核)を可視化したものです。ナトリウムの原子核(²³Na核)を画像化したものが²³Na MRIになります。
 
【本研究成果のポイント】
・²³Na MRIを用いて、糖尿病モデルマウスの早期において腎臓内のナトリウムの代謝変化を可視化しました。今までの腎傷害を反映した検査とは異なり、ナトリウム代謝の変化をみることで、糖尿病性腎臓病を早期診断できることが考えられます。
・今までわからなかった腎臓内のナトリウムの変化を明らかにすることで、腎臓のより詳細な病態把握ができるようになります。
・²³Na MRIの臨床応用に新たな道が開かれる可能性があります。

Ⅰ.研究の背景
²³Naを画像化した²³Na MRIの研究報告は、これまでも行われていますが、生体内のナトリウムの量が水素と比べて大変少なく、得られる信号値が非常に小さいため、生理食塩水程度のナトリウム濃度をとらえて、MRIで明瞭な可視化をすることは困難でした。本研究グループは、このたび作製した²³Na MRIで、実験マウスのごく小さな腎臓を撮影できるように最適化し、より詳細かつ明瞭に撮影することを可能にしました。
腎臓は、ナトリウムの排泄や再吸収に関わっています。腎臓内には、水の効率的な再吸収が可能となる対向流増幅系といった機構が備わっており、腎臓の皮質から髄質にかけてナトリウムイオンによる浸透圧勾配が形成されています。これまで、腎臓内のナトリウムの代謝に関わるチャネルやトランスポーターについては、多くの研究がされてきましたが、腎臓内全体のナトリウム量や分布の変化については、未だ不明な点が多く残されています。今回開発した²³Na MRIでは、非侵襲的に腎臓全体のナトリウムの分布を評価することができ、腎臓内の、主に対向流増幅系の変化を評価することができます。
 
Ⅱ.研究の概要
腎臓の組織の傷害がみられない段階の早期にあたる6週齢の糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)を用いて、本研究グループらが作成最適化した9.4テスラの縦型磁石を用いてMRI装置にて腎臓を撮影しました。対照のマウスと比較して、腎臓内の対向流増幅系の形成が弱くなっていることが²³Naを可視化した画像により明らかになりました。MRI装置を本研究グループらが自作・改良していること、撮像方法に独自の工夫を施したことが、今回の成果に繋がりました。
 
Ⅲ.研究の成果
²³Na MRIでは、腎傷害を反映した血中・尿中マーカーをみる検査とは異なり、ナトリウムの代謝機能の変化をみることで、糖尿病性腎臓病を早期診断できる可能性があります。臨床でもよく用いられている尿中アルブミンの測定とともに、糖尿病性腎臓病での尿細管の異常を早い段階で診断して、治療につなげられる可能性があります。
 
Ⅳ.今後の展開
²³Na MRIでは、今までわからなかった腎臓内のナトリウムの代謝変化を明らかにでき、糖尿病性腎臓病にとどまらず、他のナトリウム代謝に関わる脱水や一部の高血圧のより詳細な病態の把握できる可能性があります。今後、これらの他の病気の診断に役立つか明らかにしていきたいと考えています。また、マウスのごく小さな腎臓の詳細な可視化成功から、対象臓器拡大の可能性も考えられます。これらの知見の積み重ねにより、²³Na MRIの臨床応用に新たな道が開かれる可能性があります。
 
Ⅴ.研究成果の公表
本研究成果は、2023年3月23日、米国腎臓学会の科学誌「Kidney360」に掲載されました。
論文タイトル:Sodium magnetic resonance imaging shows impairment of the counter-current multiplication system in diabetic mice kidney
著者:Yusuke Nakagawa, Ryohei Kaseda, Yuya Suzuki, Hirofumi Watanabe, Tadashi Otsuka, Suguru Yamamoto, Yoshikatsu Kaneko, Shin Goto, Yasuhiko Terada, Tomoyuki Haishi, Susumu Sasaki, and Ichiei Narita
doi: 10.34067/KID.0000000000000072
 
Ⅵ.謝辞
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発(AMED)の研究プロジェクト(プロジェクト番号JP20hm0102062)と科学研究費助成事業 基盤研究(C)(プロジェクト番号JP20K08586)の支援を受けて実施しました。
 
 
本件に関するお問い合わせ先
【研究に関すること】
新潟大学腎研究センター腎・膠原病内科
助教 忰田 亮平(かせだ りょうへい)
E-mail:ryoheik@med.niigata-u.ac.jp
 
筑波大学数理物質系物理工学域
准教授 寺田 康彦(てらだ やすひこ)
E-mail:terada.yasuhiko.fu@u.tsukuba.ac.jp
 
国際医療福祉大学成田保健医療学部放射線・情報科学科
教授 拝師 智之(はいし ともゆき)
E-mail:tomoyuki.haishi@iuhw.ac.jp
 
【報道に関すること】
新潟大学広報室
E-mail:pr-office@adm.niigata-u.ac.jp
 
筑波大学広報局
E-mail:kohositu@un.tsukuba.ac.jp
 
国際医療福祉大学広報部
E-mail:press@iuhw.ac.jp

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