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2016/12/01 研究成果
ミトコンドリアオートファジーの真の姿を発見! オートファジーは大きなミトコンドリアに直接かぶりつく

新潟大学大学院医歯学総合研究科機能制御学分野の山下俊一助教、神吉智丈教授らは、オートファジーが大きなミトコンドリアの一部分を直接引きちぎりながら分解していることを発見しました。これまで、大きなパンを一旦小さくちぎってから口に運ぶように、大きなミトコンドリアも小さく分裂してからオートファジーで分解されていると信じられていました。本研究は、オートファジーがミトコンドリアを分解する既存のモデルをくつがえすだけでなく、オートファジーが大きな物体を分解するときの新たなモデルを提唱することになります。
 
【本研究成果のポイント】
・ミトコンドリアオートファジー時に、どのようにしてミトコンドリアがオートファゴソームによって包み込まれるかは不明であった。
・大きなミトコンドリアが小さく分裂するために必須な因子である Dynamin-related protein 1 はミトコンドリアオートファジーには不要であった。
・ミトコンドリアオートファジー時には、大きなミトコンドリアの一部位が直接隔離膜によって認識され、その部分だけがオートファゴソームに包み込まれながら分裂することが明らかとなった。
・このミトコンドリアの形態的特徴はオートファゴソーム形成因子に依存することから、オートファゴソームが直接ミトコンドリアをちぎっている可能性がある。
 
Ⅰ.研究の背景
ミトコンドリアは、細胞が必要とするエネルギーの大半を産生する細胞内小器官で、生命活動を行う上で非常に重要な役割を果たしています。細胞内には様々な大きさのミトコンドリアがあり、ミトコンドリアが分裂すれば小さく、融合すれば大きくなります。オートファジーがミトコンドリアを分解する場合、これまでは、分裂により生じた小さなミトコンドリアが分解されていると考えられていました。しかしながら、このミトコンドリア分解過程を経時的に観察した報告はほとんどありませんでした。
 
Ⅱ.研究の概要
本研究では、まずミトコンドリア分裂に必須なDynamin-related protein 1(Drp1)がミトコンドリアオートファジーに必要かどうか検討し、ミトコンドリア分裂が起こらないDrp1欠損細胞でもミトコンドリアオートファジーが効率よく起こっていることを明らかにしました。次に、どのようにしてミトコンドリアがオートファジーによって分解されているかを知るために、経時的にミトコンドリアオートファジーを追跡する実験系を樹立しました。この解析の結果、ミトコンドリアオートファジーでは、大きなミトコンドリアの一部分が、オートファジーによって直接ちぎり取られて、分解されていることを明らかにしました。
 
Ⅲ.研究の成果
我々は、ミトコンドリアがどのようにしてオートファジーによって分解されているのかを知るために、経時的にミトコンドリアの分解過程を追跡する実験系の樹立し解析しました。従来のモデルでは、一旦大きなミトコンドリアが小さく分裂してから、分解へ向かうと信じられてきました。しかし、ミトコンドリア分裂に必須な因子Drp1を欠損した細胞でもミトコンドリア分解が見られることなどから、多くの矛盾が生じました。そこで、我々はミトコンドリアオートファジーの過程を生きた細胞の中で追跡し、何が起きているのかを詳細に解析しました。その結果、ミトコンドリアオートファジーの過程では、大きなミトコンドリアの一部分が隔離膜によってちぎり取られ、分解されることを世界で初めて明らかにしました(参考図1)。これにより、従来のモデルとは異なる、新しいミトコンドリアオートファジーのモデルを提唱しました(参考図2)。さらにこの現象は、ミトコンドリアの分裂必須因子には依存せず、隔離膜の形成因子に依存することから、隔離膜が閉じる力がミトコンドリアの分裂に寄与している可能性を示すことができました。このことは、オートファジーがオートファゴソームより大きな物体を分解するときの一般化できる新しいモデルとなる可能性があります。
 
Ⅳ.今後の展開
今後は、今回提唱したオートファジーによるミトコンドリア隔離・分解過程について、その分子メカニズムの全貌解明を目指します。また、ミトコンドリアオートファジーがパーキンソン病などの神経変性疾患と関わりがあることが近年明らかになってきており、こうした疾患の病態解明に結びつくように、分子レベルでの解明を進めていきます。
 
Ⅴ.研究成果の公表
これらの研究成果は、九州大学大学院医学研究院の三原勝芳名誉教授と大寺秀典助教、京都大学大学院農学研究科の阪井康能教授、大阪大学大学院医学系研究科の吉森保教授と浜崎万穂准教授らとの共同研究で得られたもので、平成28年11月30日(水)午後11時(米国東部時間平成28年11月30日(水)午前9時)の Journal of Cell Biology 誌(IMPACT FACTOR 8.717, 5 YEAR IMPACT FACTOR 9.886)に掲載されます。
 
論文タイトル:Mitochondrial division occurs concurrently with autophagosome formation but independently of Drp1 during mitophagy
著者:Shun-ichi Yamashita¹, Xiulian Jin¹, Kentaro Furukawa¹, Maho Hamasaki², Akiko Nezu², Hidenori Otera³, Tetsu Saigusa¹, Tamotsu Yoshimori², Yasuyoshi Sakai⁴, Katsuyoshi Mihara³, Tomotake Kanki¹*
doi: 10.1083/jcb.201605093
 
専門用語の説明
オートファジー、隔離膜、オートファゴソーム:
細胞内のタンパク質やミトコンドリアなどを隔離膜と呼ばれる二重膜で包み込み、種々の分解酵素を多く含むリソソームと融合することで、包み込んだ成分を分解する機構。隔離膜が伸長し、細胞内の成分を完全に包み込んだ状態になるとオートファゴソームと呼ばれるようになる。
 

Dynamin-related protein 1 (Drp1):
ミトコンドリアの分裂に必須なタンパク質で、分裂時にミトコンドリア外膜に集まり、その部分での分裂を引き起こす。Drp1 を欠損した細胞では、ミトコンドリアの分裂ができなくなり、長くつながった大きなミトコンドリアが細胞内に見られるようになる。
 

 
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学大学院医歯学総合研究科
教授 神吉智丈(かんきともたけ)
e-mail:kanki@med.niigata-u.ac.jp

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