緑内障は失明原因最上位の疾患であるにも関わらず、多くの未解明な謎が残されています。緑内障にとって高眼圧は最大の危険因子ですが、他にも循環障害、遺伝、神経脆弱性、近視、人種差など多因子が関与するとされます。しかし、その詳細なメカニズムについては未知のままであり、病態を明らかにすることで治療や予防に繋げることを目標に研究を行っています。また、緑内障で失った視機能は取り戻すことができないため、早期発見、早期治療がとても重要であり、早期治療が必要な患者さんをいかに早く同定するかも重要なテーマの一つです。

光干渉断層計(OCT)を用いることで、以前に比べて緑内障の早期診断が可能になってきました。さらにOCTによる構造評価から視機能障害をある程度予測することができることもわかってきました（図1）。しかし、緑内障による視野障害の進行とOCTによる構造障害の進行には大きな乖離があることが知られています。最近登場したOCTアンギオグラフィー（OCTA）を用いると、非侵襲的に短時間で網膜や脈絡膜の血流を描出することができます。緑内障眼では視神経乳頭周囲や視神経乳頭内部、黄斑部まで血流が減少しており、視機能障害と高い相関関係があることも分かってきました（図２）。これは主に網膜神経節細胞死に伴う二次的な変化と思われますが、一部の循環障害は緑内障進行に先行することも明らかにされつつあり新たな治療ターゲットとして注目しています。また、OCTやOCTAを前眼部に適用することで房水流出路を可視化することにも世界に先駆けて成功しており、治療効果判定や予後予測に応用すべく研究を進めています（図３）。将来の患者さんの診断・治療に結びつくような研究に取り組んでいきます。

（文責：赤木忠道）

研究業績

Igarashi R, Ochiai S, Togano T, Sakaue Y, Suetake A, Iikawa R, Honma Y, Miyamoto D, Fukuchi T: Foveal Avascular Zone Measurement Via Optical Coherence Tomography Angiography and its Relationship With the Visual Field in Eyes With Open-angle Glaucoma. J Glaucoma. 2020;29(6):492-497.

Iikawa R, Togano T, Sakaue Y, Suetake A, Igarashi R, Miyamoto D, Yaoeda K, Seki M, Fukuchi T: Estimation of the central 10-degree visual field using en-face images obtained by optical coherence tomography. PLoS One. 2020;15(3):e0229867.

Akagi T, Okamoto Y, Kameda T, Suda K, Nakanishi H, Miyake M, Ikeda HO, Yamada T, Kadomoto S, Uji A, Tsujikawa A: Short-Term Effects of Different Types of Anti-Glaucoma Eyedrop on the Sclero-Conjunctival Vasculature Assessed Using Anterior Segment OCTA in Normal Human Eyes: A Pilot Study. J Clin Med. 2020;9(12):4016.

Akagi T, Uji A, Okamoto Y, Suda K, Kameda T, Nakanishi H, Ikeda HO, Miyake M, Nakano E, Motozawa N, Tsujikawa A: Anterior Segment Optical Coherence Tomography Angiography Imaging of Conjunctiva and Intrasclera in Treated Primary Open-Angle Glaucoma. Am J Ophthalmol. 2019;208:313-322.

Igarashi R, Ochiai S, Sakaue Y, Suetake A, Iikawa R, Togano T, Miyamoto F, Miyamoto D, Fukuchi T: Optical coherence tomography angiography of the peripapillary capillaries in primary open-angle and normal-tension glaucoma. PLoS One. 2017;12(9):e0184301.

図１．OCT en face画像を用いた緑内障性視野障害部位の推定（Iikawa et al. PLoS One 2020）

 

図２．OCTとOCTAによる緑内障評価(Igarashi et al. PLoS One 2017)

 

図３．前眼部OCTAを用いた緑内障眼の強結膜血流画像(Akagi et al. Am J Ophthalmol 2018)