網膜硝子体チームでは、主に黄斑疾患と視機能について研究しております。黄斑前膜（ERM）に対する内境界膜剥離併用硝子体手術の術前後におけるハンフリー視野10-2の変化を調べたところ、ERMの一部の症例では特に術後耳側のGanglion cell complexの菲薄化や中心鼻側の視野感度低下が認められました 1)（図１）。特に強度近視眼や緑内障眼ではよりハイリスク群です。また術後の視機能において術前ERMの内層形態の関与が強く、術前から網膜内層破壊に至っている進行したERMでは、より術後に微小暗点の形成や視野欠損が発生しやすくなる2)ことが分かりました 2)（図２）。またERMの術後の視力の改善度は、OCTangiographyでのFAZの変化率と相関を認めました。FAZの収縮が強い方が、術後に視力の改善度が高く、FAZは術後視機能の予測因子となる可能性が示唆されました 3)（図３）。

また、網膜静脈分枝閉塞症（BRVO）における黄斑虚血の評価として、OCTangiographyで認められたnon-perfusion areaの面積とハンフリー視野10-2の視野感度に高い相関を認めました 4)（図４）。このことより、非侵襲的に黄斑虚血を推測するツールとしてハンフリー視野検査の有用性を報告致しました。

図1 黄斑上膜に対する内境界膜剥離術併用硝子体手術前後のGCCと視野変化

1) Terashima, H et al. “Vitrectomy for epiretinal membranes: ganglion cell features correlate with visual function outcomes”
Ophthalmology Retina 2018.

図２　術前ERMの網膜内層形態による分類

2) Terashima, H et al.　”Evaluation of postoperative visual function based on the preoperative inner layer structure in the epiretinal membrane” Graefe’s Archive for Clinical and Experimental, 2021.

図３　ERM術前後におけるFAZ変化と視機能との関係

3) Yoshida, H et al. “Relationship between morphological changes in the fovea avascular zone in the epiretinal membrane and postoperative visual function” BMJ open ophthalmology, 2020.

図４　BRVOに対する非侵襲的黄斑虚血の評価：OCT angiography所見とハンフリー10-2視野感度との相関

4) Terashima, H et al. “Optical coherence tomography angiography and Humphrey field analyser for macular capillary non-perfusion evaluation in branch retinal vein occlusion.” Scientific reports 2021.

（文責：寺島浩子）