発酵乳製品の摂取が多いほど変形性膝関節症のリスクは低い −発酵食品による疾病予防の可能性を示す新たな知見−
【本研究成果のポイント】
・発酵乳製品(チーズ、ヨーグルト)の摂取量が多いほど膝関節症のリスクは低かった
・この関連は男女ともに認められ、比較的強固であった
・チーズおよびヨーグルトの摂取量はそれぞれ独立して膝関節症低リスクと関連していた
概要
新潟大学大学院医歯保健学研究科環境予防医学分野の中村和利教授らの研究グループは、新潟県村上地区在住の40〜74歳の地域住民10,411人を約11年間追跡し、乳製品の摂取と変形性膝関節症(膝関節症)の発症との関係を調べました。その結果、乳製品全体の摂取量が多い人ほど、膝関節症を発症するリスクが低い傾向がみられました。特に、チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品を多く摂る人ではリスクが低く、この関連は男女ともに認められました。一方、牛乳では明らかな関連はみられませんでした。本研究から、乳製品の中でも特に発酵乳製品の摂取が、膝関節症の発症リスク低下と関連する可能性が示されました。
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乳製品には、ペプチド、脂肪酸、その他の多量栄養素および微量栄養素など、さまざまな生理活性成分が含まれており、さらに、発酵乳製品の場合にはプロバイオティクス微生物も含まれています。これらの成分は複数の生物学的経路を介して関節の健康や変形性膝関節症(膝関節症)のリスクに関連している可能性があります。しかしながら、先行する欧米での疫学研究(主に横断研究)の結果は一致せず、さらにアジア人における研究はありませんでした。そこで、本研究グループは、中高年者における乳製品の総摂取量および乳製品の種類別摂取量とその後の膝関節症の発症を縦断的に調べました。
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村上コホート研究(注1)参加者(14,364人, 40〜74歳)のうち、初回調査ですでに膝関節症や膝の痛みを持っていた人などを除いた10,411人を解析対象としました。
食物およびエネルギーの摂取量は、妥当性の確認された自記式質問票の食事項目から算出しました。11年間の追跡における膝関節症の新規発症情報は関連病院から網羅的に収集しました。残差法(注2)によりエネルギー調整した乳製品摂取量を4グループに分け、摂取量最小のグループを基準として他の群のリスクを相対値(ハザード比(注3), HR)として算出しました。HRは、性、年齢、婚姻状況、教育歴、職業、身体活動量、喫煙・飲酒、病歴で統計学的に調整しました。
乳製品の総摂取量が多いほど膝関節症のリスクは低く(傾向性P値=0.0174)、最低摂取量群(最小四分位)と比べて、最高摂取群(最大四分位)のリスクは21%低下していました。
牛乳摂取量と膝関節症リスクに明確な関連は見られませんでした(図1)。一方、発酵乳製品摂取量が多いほど膝関節症リスクは低く、摂取なし群と比べて、摂取者の最大三分位群のリスクは28%低下していました(図2)。発酵乳製品摂取量と膝関節症の関連は男女別に解析しても同様の関連が見られました。
チーズ、ヨーグルトのどちらが膝関節症のリスク低下に寄与しているかを調べるため、それぞれの摂取頻度と膝関節症のリスクについて解析しました。
その結果、チーズおよびヨーグルトの摂取頻度は、それぞれ独立に膝関節症のリスク低下と関連していました。
本研究の結果は、いくつかの生物学的メカニズムによって説明できるかもしれません。チーズやヨーグルトなどの発酵乳製品は、微生物による発酵過程によって栄養組成が変化し、生理活性ペプチドや短鎖脂肪酸など、特定の栄養成分の利用が高まる可能性があります。チーズには、多機能性糖タンパク質であるラクトフェリンなどの良質なタンパク質が含まれており、ラクトフェリンには抗炎症作用を含むさまざまな生理機能があります。また、ヨーグルトや非加工のナチュラルチーズには生きた微生物が含まれており、これらは関節の健康に関連する代謝経路や炎症経路によい影響を及ぼす可能性があります。近年、軽度の慢性炎症が膝関節症の発症および進行に重要な役割を果たすことがわかってきていることから、炎症反応を調節する食事因子は膝関節症の発症リスクに関連する可能性があります。
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乳製品の摂取量が比較的少ないと考えられる日本人中高年者において、発酵乳製品の摂取量が多いほど膝関節症のリスクが低いことが示されました。今後、その背景にある生物学的メカニズムを明らかにする研究が必要と思われます。本研究は、発酵食品による疾病予防の可能性を示す貴重なエビデンスを提供するものであり、他の発酵食品についても健康への好ましい影響が期待されます。
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本研究成果は、2026年8月6日に科学誌「Clinical Nutrition」にオンライン掲載されました。
【論文タイトル】Fermented dairy intake and symptomatic radiographic knee osteoarthritis risk in middle-aged and older adults: an 11-year cohort study
【著者】Bulycheva I, Watanabe Y, Kitamura K, Kabasawa K, Saito T, Takahashi A, Kobayashi R, Oshiki R, Yamazaki O, Watanabe K, Takachi R, Tsugane S, Nakamura K
【doi】10.1016/j.clnu.2026.106756.
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データ収集にあたり多大なご協力をいただいた、村上保健所、村上市、関川村、粟島浦村の皆様に深く感謝申し上げます。
【用語解説】
(注1)コホート研究:ある集団(コホート)を一定期間追跡し、生活習慣などの要因とその後の病気の発症との関係を調べるタイプの疫学研究
(注2)残差法:エネルギー調整を行う標準的な方法
(注3)ハザード比:Cox比例ハザードモデルで算出される相対リスクの推定値
本件に関するお問い合わせ先
【研究に関すること】
新潟大学医歯保健学研究科
教授 中村和利(なかむら かずとし)
E-mail:kazun@med.niigata-u.ac.jp
【広報担当者】
新潟大学医歯学系総務課
E-mail:shomu@med.niigata-u.ac.jp








