新潟大学大学院医歯保健学研究科細菌学分野の松本壮吉教授が Global Health Innovative Technology Fund(GHIT Fund)に採択されました 抗酸菌の休眠を標的とした、薬剤耐性結核の治療および治療期間短縮に資する抗結核薬リードの創出
結核は、これまで人類の歴史の中で最も多くの命を奪ってきた感染症です。現在でも、AIDSや新型コロナウイルス感染症を上回る死者を出しており、結核のパンデミックが続いているといってもよい程で、2026年WHOの統計でも2024年に世界で123万人が結核で死亡したと報告されています。
結核菌の大きな特徴は、増殖スピードが非常に遅く、さらに頻繁に「休眠=dormancy」と呼ばれる、眠ったような状態に入ることです。この状態では、薬が効きにくくなってしまいます。そのため、結核の治療は、標準療法で本邦でも少なくとも6か月という長い期間が必要です。長期の治療は負担が大きく、しかし治療を途中でやめてしまうと耐性菌が出現しやすくなり、さらに大きな問題に進展します。また休眠した結核菌は体の中に長く潜み続け、時間がたってから再び増殖することがあります。この「再燃=reactivation」が実は、成人の結核患者の多くの原因になっています。
このような状況から、結核菌の休眠を抑えて、治療期間の短縮や結核の根本的な克服につながる治療薬の開発が大きなニーズになっていますが、複雑な休眠現象をターゲット(標的)とした結核薬は、これまで開発できていない現状がありました。
【研究プロジェクトのポイント】
●これまでの結核薬は、増殖や代謝が活発で、主に薬が効きやすい増殖している結核菌を標的としており、休眠状態の菌には十分に作用していませんでした。本研究開発では、結核菌が休眠に入る際に重要な役割を果たすと考えられるタンパク質の発見に基づき、それに結合して休眠作用を抑制する新しいアプローチを採ります。このプロジェクトはまた既存薬と異なる結核菌の生存必須タンパク質を標的とするため、薬剤耐性結核に対しても有効である可能性があります。増殖菌と休眠菌の両方に作用することで、治療期間の短縮や、再発防止、さらには無症候感染(潜在性結核LTBIとも言う)という結核の発生母体の排除につながる点が、本プロジェクトの大きな革新性です。
●新潟大学は本プロジェクト全体のマネジメントを担当するとともに、試験に用いる化合物の生産および精製を行い、研究に必要な化合物を各機関へ供給します。またThe Global Alliance for TB Drug Development, Inc(TBアライアンス)Natalya Serbina部長等と共同で、ADME試験や薬物動態(PK)解析など、各種前臨床評価を実施します。Weill Cornell Medicine(コーネル大学)Sabine Ehrt教授等は、結核菌に対する化合物の作用を試験管内で評価し、抗結核活性および作用特性の解析を行います。Colorado State University(コロラド州立大学)Mercedes Gonzalez-Juarrero教授等は、結核感染動物モデルを用いた有効性試験を実施し、体内における治療効果を検証します。
●試験する標的タンパク質に作用する化合物はAMED の課題管理番号 JP16nk0101351(創薬ブースター事業)および23gm1610009h(AMED-CREST事業)の支援を受け、発見されてきました。
【研究プロジェクトについて】
■課題名:Lead development of a novel anti-tuberculosis agent with activity against drug-resistant TB and potential to shorten treatment by targeting mycobacterial dormancy
(結核菌の休眠を標的とした、薬剤耐性結核の治療および治療期間短縮に資する抗結核薬リードの創出)
■参画機関
・新潟大学
・The Global Alliance for TB Drug Development, Inc
・Weill Cornell Medicine
・Colorado State University
■プロジェクトの内容:
本プロジェクトでは、候補化合物の創薬ポテンシャルを評価するため、以下の試験を段階的に実施します。まず放線菌から産生される対象化合物を精製し、またその誘導体を合成します。化合物の物性評価として、生理的条件下における溶解性および脂溶性の評価を行います。あわせて、細胞膜透過性および排出の有無について検討します。次に、薬物動態特性の評価として、血漿タンパク結合率の測定を行い、非結合型分画を確認します。さらに、肝ミクロソームおよび肝細胞を用いた代謝安定性試験を実施し、体内動態の基礎特性を評価します。安全性評価として、主要なオフターゲット阻害作用の有無を検討するとともに、心毒性評価としてhERG阻害試験を実施します。加えて、遺伝毒性評価としてAMESs試験およびin vitro小核試験を行います。これらの基礎評価を踏まえ、有望な化合物についてマウス結核感染モデルを用いた有効性試験を実施し、体内における抗結核効果を検証します。
※参照:GHITファンドからのプレスリリースをご覧ください。
https://www.ghitfund.org/investment/portfoliodetail/detail/278/jp
https://www.ghitfund.org/investment/portfoliodetail/detail/278/en
【研究代表者について】
松本 壮吉(まつもと そうきち)
新潟大学大学院医歯学保健学研究科細菌学分野・教授
【グラントについて】
グローバルヘルス技術振興基金・GHITファンドは、マラリア、結核、顧みられない熱帯病のための、 治療薬、ワクチン、診断薬の開発を推進する日本発の国際的な官民ファンドです。詳細はWebサイト(https://www.ghitfund.org/jp)をご覧ください。
本件に関するお問い合わせ先
新潟大学広報事務室
E-mail:pr-office@adm.niigata-u.ac.jp








